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闇王日記 〜闇の神様、人間の幼児になって無双する〜  作者: S
初まり

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16/17

旅立ち

「光の世界へ向かう」と聞いていたのに、気がつけば再びリダ王国へ戻ってきていた。


闇王には理解できなかった。


「すぐに光の世界へ行くと思っていたのだがな」


そもそも、どうやって行くのかも聞いていない。


現在、闇王は城の一室にいた。


部屋の中央には大きな机が置かれ、その上には書類の山が積み上がっている。


アルミスは羽ペンを走らせながら、黙々と書類仕事をこなしていた。


リダ王国は円形の煉瓦の城壁に囲まれた大きな王国だ。


城壁の内側には数え切れないほどの民家や商店、冒険者ギルドが並び、その最奥には壮麗な王城がそびえ立っている。


そして今、王都は異様な熱気に包まれていた。


「聖者様がお戻りになった!」


「お使え様も一緒だぞ!」


そんな噂が街中へ広まり、人々は酒を片手に大騒ぎしている。


まるで祭りのような賑わいだった。


「アルミス、外が騒がしいぞ」


闇王が言うと、アルはバルコニーへ続く窓へ近づいた。


カーテンの隙間から外を覗く。


すると――


「お使え様ー!」


「お使え様ー!」


「こちらを見てくださいー!」


無数の歓声が城の下から響いていた。


アルミスは満足そうに微笑む。


アルはその横顔を見ながら言った。


「街中に噂を流したのはお前だろう」


「ええ、そうですが?」


アルミスは悪びれる様子もなく、不敵な笑みを浮かべた。


「何か問題でも?」


「そんなに騒ぐようなことか?」


闇王は首を傾げる。


そして机の上に積まれていた焼き菓子を次々と口へ放り込んだ。


まるで食べることをやめたら死んでしまうかのような勢いだ。


「それより、いつ光の世界へ行くのだ?」


モグモグと菓子を頬張りながら尋ねる。


「アル、お前も食べるか? 美味いぞ、これ」


「いいえ、結構です」


アルは即答した。


「光の世界へは行きますよ。でも、その前に闇王様へ来客があるんです」


「来客?」


「ええ。たぶん、そろそろ――」


その時だった。


シャオォォォーン!!


聞き覚えのある雄叫びが王都の上空に響き渡った。


闇王とアルミスは顔を見合わせる。


「今の声は!」


三人は急いで部屋を飛び出し、城の屋上へと駆け上がった。


そして空を見上げた瞬間、闇王は目を見開いた。


「バレッドドラゴン!?」


青空を背景に、巨大な白銀の竜が翼を広げて旋回していた。


雪のように白い鱗。


まさしくヴァロック山脈で出会ったあのバレッドドラゴンだった。


「どうしてここにいるのだ!?」


するとアルミスは嬉しそうに手を振った。


「スノー! 来てくれたんですね!」


ドラゴンは大きく旋回すると、城の屋上へゆっくりと降り立った。


ドォォン――!


巨体が着地すると風が巻き起こる。


アルミスが近づき、その大きな頭を優しく撫でた。


するとスノーは目を細め、


「シャオーン♪」


嬉しそうな声を上げながら、アルミスの顔をべろべろと舐め回した。


「ははっ、くすぐったいですよ」


「スノー? 一体どういうことだ?」


闇王は訳が分からず尋ねた。


アルミスはスノーの首筋を撫でながら答える。


「この子はスノーといって、私が飼っているドラゴンなんです」


「飼っている?」


「ええ。冬の間はヴァロック山脈の守りのために向かわせていますが、それ以外の季節は自由に過ごさせているんですよ」


「なるほど」


闇王は感心しながらスノーへ近づいた。


そして巨大な頭をポンポンと撫でる。


するとスノーはすぐに反応した。


「シャオォーン!」


まるで再会を喜ぶ犬のように尻尾を振り、嬉しそうに鳴く。


その姿を見て、普段顔に出さない闇王だったが、少し口角が上がった。


「相変わらず人懐こい奴だな」


スノーはさらに頭を押し付けてきた。


その大きな体とは裏腹に、甘えん坊な性格は少しも変わっていなかった。


数日が過ぎたある日のことだった。


「闇王様にお願いがあります」


アルミスのその一言から、すべては始まった。


気が付けば闇王はアルミスと共に城の大きなバルコニーへ立ち、眼下に集まった大勢の民衆へ向かって手を振っていた。


「なぜこんなことになったのだ……」


闇王は心の底からそう思った。


広場を埋め尽くすほどの人々が、熱狂したように歓声を上げている。


「きゃあー! 王様よー!」


「あの黒髪の方がお使い様かしら!」


「素敵ー!」


「可愛いー!」


歓声は次々と押し寄せ、まるで波のように広場を揺らした。


そんな中、アルミスが一歩前へ出る。


「皆さん、聞いてください!」


透き通るような声が広場中へ響き渡る。


「これから私たちは光の世界へ旅立ちます!」


その言葉に広場が静まり返った。


「この旅が成功すれば、魔獣の脅威は完全になくなるでしょう!」


一瞬の静寂の後――


「おおおおおおおっ!!」


歓喜の声が爆発した。


人々は手を掲げ、喜びを叫び、二人の旅立ちを祝福する。


その光景を眺めながら、闇王はただ黙って立っていた。


やがて挨拶を終えた二人は部屋へ戻り、そのまま城の発着場へ向かった。


巨大な飛行船へ乗り込むと、アルミスが微笑む。


「それでは、そろそろ行きますか」


「遅いのだ」


闇王は腕を組みながら答えた。


「それで、どうやって光の世界へ行くのだ?」


アルミスは真剣な表情になる。


「それには闇王様のオーラが必要になります」


「ほう」


「まず、この船全体をオーラで包み込んでください」


闇王は言われた通りに力を解放した。


漆黒のオーラが船を覆い尽くし、まるで巨大な闇の繭のようになる。


「次に、大きな扉をイメージしてください。そして、その扉を開くのです」


闇王は目を閉じた。


果てしなく巨大な扉を思い描く。


そして――開く。


その瞬間。


空が割れた。


天空に巨大な黒い扉が出現したのだ。


ゆっくりと開かれたその先には、光すら存在しない深い闇が広がっていた。


飛行船は迷うことなく、その闇へ突入する。


船体は暗黒に飲み込まれ、周囲の景色は完全に消え去った。


そこには上下も左右も存在しない。


ただ永遠に続く闇だけがあった。


闇王は静かに目を閉じる。


そして、自らの本体である「闇の樹」と意識を繋げた。



「あっちだな」


闇王が前方を指差した。


「光の世界はあちらにある」


アルミスは目を見開く。


「ええ……私にも感じます」


「あちらから、私と同じ光の塊から生まれた存在の気配を感じます」


飛行船は進む。


闇の海を突き進む。


どれほど進んだだろうか。


やがて遠くに小さな光が見えた。


その光は次第に大きくなり、眩い輝きとなる。


暗黒だった世界が、一面の光で満たされていった。


そして闇の世界を抜けた瞬間――


そこには無数の星々が輝く宇宙が広がっていた。


その中に、青い星を見つけた。


アルミスはその星を指差した。


「あの惑星です」


アルミスの声には確信があった。


「あそこから感じます」


闇王もまた、その星から放たれる強大な光を感じ取っていた。


光の世界。


二人の新たな旅の舞台が、ついに目の前へ姿を現したのである。







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― 新着の感想 ―
さらに面白い展開になってきましたね。サーシャの活躍が楽しみですね。
2026/07/15 20:03 ミツちゅー
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