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闇王日記 〜闇の神様、人間の幼児になって無双する〜  作者: S


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14/15

リダ王国

これは全て私の妄想話しです

エイダ村からリダ王国へ向かうには、この広大な森を抜けなければならない。


闇のオーラを吸収したことで、闇王の身体能力は大きく向上していた。


軽く地面を蹴っただけで、その身体は木々の頂を遥かに超える高さまで跳び上がる。空中から見下ろせば、果てしなく続く森の全景が一望できた。


「すごいな……」


闇王は自分でも驚いていた。


ジャンプ力だけではない。


走る速度は風のように速くなり、筋力も以前とは比べものにならないほど強くなっている。


握った拳に力を込めるだけで、自分の中に膨大な力が宿っていることが分かった。


「これなら巨人が現れても、一刀両断だな」


今の自分なら誰にも負ける気がしなかった。


エイダ村の村人たちは、リダ王国まで一週間ほどかかると言っていた。しかし今の脚力なら二日もかからず到着できそうだった。


森の中には多くの動物たちが暮らしていた。


木々の間を走るリス。


草むらで草を食む鹿。


そして時折、縄張りに入った闇王へ牙を剥く狼や巨大なクマ。


だが、彼らは今の闇王にとって脅威ではなかった。


ヴァロック山脈で戦った雪男や巨人、そして攻撃すら通じなかった魔獣たちと比べれば、あまりにも弱かったからだ。


しかしクマの姿を見るたびに、闇王の脳裏には一頭のクマが浮かんだ。


あのピンク色のクマだった。


瀕死だった自分を助け、水を飲ませてくれた不思議なクマ。


「あいつ、今頃どうしてるんだろうな……」


闇王は小さく呟く。


森の仲間たちと仲良く暮らしているのだろうか。


元気に走り回っているだろうか。


そんなことを考えていると、少しだけ懐かしい気持ちになった。


クマを見るたびに思い出してしまうため、闇王は地面を走るのをやめた。


大きく跳躍し、木の幹から木の幹へと飛び移りながら進む。


まるで森を駆ける風そのものだった。


いくら速く進めるとはいえ、この森は広大だった。


見渡す限り木々が続き、その奥にはさらに深い森が広がっている。


リスや鹿、小鳥たちの姿が時折見えるものの、人の気配はまったくない。


森の奥は薄暗く、昼間だというのに夜のような静けさに包まれていた。


闇王は休むことなく進み続けた。


そして、どれほどの時間が経っただろうか。


ふと前方に変化が現れた。


暗かった森の先に、かすかな明るさが見えたのだ。


木々の隙間から光が差し込んでいる。


一歩進むごとに、その光は大きくなっていく。


「出口か?」


闇王は速度を上げた。


木々の間を駆け抜け、最後の一本を飛び越える。


すると――。


目の前に広がっていたのは、眩しいほどの陽光に照らされた開けた大地だった。


長く続いた森は終わりを迎え、その先には新たな世界が広がっている。


闇王は足を止め、ゆっくりと前方を見据えた。


「ようやく抜けたか」



森を抜けると、広大な平原が広がっていた。


はるか先には、煉瓦で築かれた巨大な城壁が見える。


「あそこがリダ王国だろう」


闇のオーラを吸収した今の闇王にとって、この広い平原でさえ庭のようなものだった。


平原には人々が行き交う街道が続いている。旅人や商人らしき人々が、まばらに歩いていた。


闇王はその後ろを、凄まじい速度で駆け抜ける。


おそらく彼らには姿すら見えていないだろう。感じたとしても、突然強い風が吹いた程度にしか思わないはずだ。


あっという間にリダ王国が近づいてくる。


やがて巨大な門が見え、その前には兵士たちが立っていた。


「この速度では怪しまれるな」


そう考えた闇王は、途中から普通の人間と同じ速度で歩き始めた。


門の前まで来ると、兵士の一人が声をかける。


「どこから来た?」


「ドレーク村からだ。アガツマ様より、アルミス様に仕えるよう命じられて来た。アガツマ様からの手紙も届いているはずだが」


兵士は目を見開いた。


「お前が例の……」


そう呟くと、すぐに態度を改めた。


「通ってよし!」


重厚な門がゆっくりと開かれる。


門の向こうには、これまで見たこともない光景が広がっていた。


煉瓦造りの建物が立ち並び、美しく整備された石畳の道が続いている。


洗濯物を干す女性たち。


料理の支度をする人々。


元気よく走り回る子供たち。


遠くには壮麗な王城がそびえ立っていた。


「ここは平和だな」


闇王は静かに呟く。


民家の並ぶ区域を抜けると、大きな冒険者ギルドが見えてきた。


その周囲には武器屋、防具屋、道具屋、本屋、鍛冶屋が並び、多くの冒険者たちで賑わっている。


その中に、今まで見たことのない店があった。


『魔法ショップ』


興味を引かれた闇王は中へ入る。


店内の壁一面には本が積み上げられていた。


一冊手に取り開いてみる。


「……白紙?」


何ページめくっても何も書かれていない。


別の本を開く。


それも白紙。


さらに別の本も白紙だった。


何十冊確認しても同じである。


困惑していると、店主らしき老人が笑った。


「ここにある本は、魔法の才能がある者にしか読めないんだよ」


「なんだと?」


「才能のない者には白紙にしか見えん」


闇王には魔法の才能がなかった。


少し肩を落としながら店を後にする。


そして王城へ向かった。


城へ続く最後の坂を登ると、巨大な城門が見えてきた。


重そうな扉はすでに開かれている。


その前には、一人の少年が立っていた。


闇王とほとんど同じ背丈だ。


少年は柔らかく微笑む。


「待っていましたよ」


「お前には用がない。私は王様に会いに来たのだ」


そう言うと、少年は少し困ったように笑った。


「私がアルミスです」


闇王は目を見開いた。


「……何?」


信じられなかった。


アルミスは千年以上生きている存在だと聞いていた。


闇王は白髪の老人を想像していたのである。


その驚きを察したのか、アルミスは苦笑した。


「本当ならここにも兵士たちが立っているんですよ。今日は人払いをしてあります」


そう言って闇王の身体を見つめる。


「闇に閉じ込められたと聞いた時は、私も焦りました。しかし、まさか闇のオーラをまとって帰ってくるとは思いませんでした」


闇王は眉をひそめた。


「見えるのか?」


「はい」


アルミスは微笑みながら頷いた。


「では、中へどうぞ」


案内されて城内へ入る。


そこには色とりどりの薔薇が咲き誇る美しい庭園が広がっていた。


赤。


青。


黄色。


紫。


ピンク。


様々な色の花々が風に揺れている。


その道を歩きながら、闇王は前から気になっていたことを尋ねた。


「お前、いったい何歳なのだ?」


アルミスは何でもないことのように答えた。


「13000と1歳ですよ」


闇王は思わず立ち止まりそうになった。


「一万三千……」


その後もしばらく驚きの雑談が続く。


やがて庭園を抜けると、広大な広場へ出た。


そしてその中央に――


巨大な船が停泊していた。


海でもない場所に船がある。


異様な光景だった。


アルミスはその船を指差す。


「これをお見せしたかったのです。今のあなたには必要になると思いますから」


「この船は何なのだ?」


「ドレーク村でしか採れない特殊な木で造られた魔道船です」


「ドレーク村の木だと?」


闇王は驚いた。


故郷で毎日のように切っていた木である。


まさかそんな用途に使われているとは思わなかった。


アルミスは続ける。


「魔法を蓄えられる木は、あの村にしかありません。非常に貴重な資源です」


「そんなに価値があるのか?」


「一本で金貨200ラダは下りません」


その金額を聞いて、闇王は目を丸くした。


自分が売っていた頃は高くても銀貨260リタ程度だったからだ。


そのことを話すと、アルミスの表情が険しくなる。


「それは安すぎますね。その木場の者は調べる必要がありそうです」


闇王は船を見上げた。


「この船はどこへ行くのだ?」


「深い闇を渡るための船です」


「今の私には必要ないな」


するとアルミスは即座に言った。


「料理人が乗っていますよ」


闇王の耳がぴくりと動く。


「料理も絶品です」


「いるのか!?」


思わず身を乗り出す闇王。


アルミスは小さく笑った。


「もちろんです」


そして真剣な表情になる。


「闇へ行って何をするつもりなのだ? 魔獣退治か?」


「普通の武器では通用しない」


「知っています」


その時だった。


アルミスが突然片膝をつき、深く頭を下げた。


闇王は驚く。


「な、何をしている!?」


アルミスは敬意のこもった声で言った。


「今の闇王様にお会いできて光栄です」


「闇王? それは誰のことだ?」


「あなたですよ」


闇王には意味が分からなかった。


「ひざまずかれては困るのだ!」


慌てる闇王を見て、アルミスは立ち上がる。


「あなたはあの闇を生み出し、魔獣たちに恐れられている存在です。ゆえに闇の王――闇王なのです」


「なぜそんなことを知っている?」


アルミスは静かに答えた。


「私は光の神から最初に生まれた巨大な光の塊です」


闇王は黙って話を聞く。


「私と同じように、光から生まれた存在たちが光の世界にいます。あなたにはそこへ行き、その者たちと会ってほしいのです」


「光の世界……」


「そして共に光の神のもとへ向かい、この世界へさらなる光を与えていただきたい。闇が再び世界を覆わぬように」


そう言うとアルミスは船へ視線を向けた。


「では、乗船してください」


船には階段が掛けられていた。


そこから乗れるようだ。


闇王は船へ向かう。


しかしその時、アルミスが思い出したように声をかけた。


「ああ、その前に――」


闇王が振り返る。


アルミスは船の側面にある扉を開いた。


「まず、行かなければならない場所があります」


そう言って船の内部へ入っていく。


闇王も後を追い、その扉の向こうへと足を踏み入れた。





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