312話 動物感覚
アルパイトはまず人間の両足のアキレス腱を片手剣で斬り、出来る限り苦痛を与えていた。
「イデッェェエアアア!!」
「瑞希、まだ拘束は解くな。だがこいつの出血は止めれるか?」
「出来るけど……どうするの?」
「まずは苦痛を増幅させる、そこからだ」
(いつもののアルパイトと違う……黙って従っておこうか……)
私はアルパイトに言われた通り、回復魔法で血を止めるだけでアキレス腱を再生させるまではしなかった。
「この……家畜と魔女め……」
「魔女……まぁそうだよ……ね!?!?」
「何が家畜だ?おい」
アルパイトは足のアキレス腱を斬ったのにもかかわらず、両腕の腱も斬って四肢の自由を奪った。
「グアァァァ!!」
「家畜と言ったのは何故だ?同胞がなんだ!!」
アルパイトは勢いそのまま人間の首を斬り落とそうとしたが、あと一歩のところで踏みとどまった。
「……一度聞く。お前らの国は童らエンルージュの事をどう思っている」
「どうか?そりゃ柔らかい肉と質のいい羽根を纏った家畜だろう!!」
アルパイトの圧に負けず、人間はエンルージュをどう見ているのかを臆せずに言い切った。その結果、アルパイトは民を傷つけ、食い物にされた事に対する怒りで頭が支配されていた。
「……生かしていることがバカバカしい。死ね」
「待ってアルパイト!」
私は我を失っているアルパイトに待ったをかけた。
「アルパイトが怒ることは分かる、自身の王国の民が犠牲になってるのに怒らない人は居ない。だけど怒りに任せて裁くのは単なる憂さ晴らしだ」
「……憂さ晴らしか、そうだな。だがこの怒りの行き場はどうしたらよいのだ?」
「死なない程度にその人間を殴ったら?私はそいつが死にそうになったら回復魔法で治すだけだけど」
「分かった、簡単にボロボロにならないでくれ」
アルパイトは片手剣を手に届かない場所に立てかけ、人間に向かって拳を振るい始めた。
「ふんっ、ふんっ」
一発一発拳を固め、ストレートに放ち、確実に体力を削っていった。
「ごぼっ……ごばっ」
(何だか拳がねじ込まれるたびに溺れたような感じになってる……)
人間は嗚咽と共に呻き声を出し始め、止めてくれと言いたげの顔をしていた。だがアルパイトは情け無用の言葉を吐いた。
「お前らは同胞を家畜と言った。なら童らもお前らの事を家畜と呼ぼう」
「後ろにいるのは一体なんだ!!」
「ああ、瑞希は人間だ。お前らと違って童にない物を持っている。瑞希、杖を」
「……止めようとは思わないけどさ、ほどほどにしてあげなよ?」
「分かっている、だがこいつが今味わっている痛みは同胞が受けた痛みにまだ達していない。だからな」
私はアルパイトにエーテルロジックスタッフを渡し、アルパイトはエーテルロジックスタッフの重さに少しよろめいた。
「死ぬ一歩手前まで苦しんでもらおうじゃないか」
アルパイトはエーテルロジックスタッフを思いっきり突き、人間の胸を思いっきり陥没させた。
「ガフッ」
「まだ気絶するな、同胞が受けた痛みはこれほどではない」
「カヒュ……コヒュ……」
「まだだ、まだ足りん」
アルパイトは明らかに人間の痛みを考えるのを忘れたかのように人間に打撃を加えていた。そして気が住むまで数分かかり、その間に人間は明らかに力が無く、ぶらんとぶら下がっていた。
「……瑞希、こいつ生きてると思うか……?」
「ぱっと見死んでると思う……でも念のため確認するよ」
私は恐る恐る人間に近づき、首元に指をあてた。
(脈はある、だけどボコボコにされすぎて気絶している……容赦ないなぁ)
「どうだ?」
「死んではないかな。でもすぐに手当てしないと危なさそう」
「魔法でどうにかならないのか?」
「回復魔法で何とかなる、けどその後が地獄かも」
「回復するならやってくれ。その後は考える」
私はアルパイトに言われた通りに人間に回復魔法をかけた。
「それでこいつはどうするの?」
「どうするも何も牢屋に入れる。それで戦闘部隊の傷を癒してからこいつの王国に攻める」
「つまり戦争って事なの?」
「ああ、同胞を家畜と言ったからな……吐いた唾を飲み込ませない」
こうしてエンルージュは人間の王国と戦争になることになり、私はこの世界の人間を見限り、同じ人間なのに友好的に接してくれるエンルージュに肩入れするのだった。
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