300話 知らない者共
私たちは一通りの事を終え、一旦世界樹の根の穴からエンルージュの世界に戻ることにした。
「ここから童らが住まう世界に行けるのか?」
「行けるよ~」
「この先は世界樹と繋がっていますので落下する心配はないです」
「そうなの?なら飛び込む!」
「少しお待ちを!あーもう!!」
妹のエンルージュは最初に世界樹の根の穴に飛び込み、それに続いてルーピンが急いで飛び込んだ。
「……すまないな」
「いいや、別に向こうに行って合流したらいいだけだからね~」
「そうか、なら童らも行こうか」
遅れて私たちも世界樹の根の穴に入り、エンルージュの世界に入っていった。
「少し奇妙な感覚だな」
「まぁあなたはこうやってこの世界に入るのは初めてだもんね。でも先に入った二人は何処に行ったんだろう?」
「確かに見当たりませんね……既に城に戻ったのでしょうか?」
周りを見てもあの二人の姿が無く、城にいち早く帰ったのだろうと私たちは考えた。
「とりあえず城に戻ろう、二人は城に戻っているだろう」
「分かった、それからどうするの?」
「この外を探索する先鋒隊を選考する、そこからだ」
私たちは白に向かって歩き出し、これからの事を話していた。だが明らかに静かすぎる城の周りに黒い鎧のエンルージュが訝しんでいた。
「……?」
「どうかしましたか?」
「いや、なんだか周りが静かすぎるんだ……なんだ?」
「確かに静かですね。普通なら城の周りを飛び回るエンルージュが居るのですが……」
「飛び回る……まさか!」
黒い鎧のエンルージュは何かを察知したようで翼をはばたかせて一気に城の中に入っていった。
「うわっ!?」
「とても速いですね……ドッグファイトでは無敵かもしれないですね……」
「……凄い速さだね」
(水のロンギヌスを飛んでるエンルージュに向かって撃っても全く当たらなさそう……)
速さの面を見た私とロンは少しだけ委縮してしまった。そして黒い鎧のエンルージュの後を追って走って城の中に入っていった。
(どこに行ったんだ……ってこれは羽根か……!?)
「これって、もしかしてエンルージュの羽根か!?」
「そうだと思いますね……何か変なことが起きてますね。そしてこれは血です……」
「内部闘争かなぁ……」
その時、後ろから男の人の声が聞こえてきた。
「おっ、人間と……誰か、良かった。こっちに来てくれるか?」
(人の声……見慣れた人の形だけどここは天空だ……どうやって来たんだ!?)
「あなたたちはいったいどこから来たんですか?」
「それは後だ、いいから来い!」
私は男を目にしていたが本能が明らかに危険信号を出していた。
「瑞希さん」
「分かってる」
私とロンはこっそり後ろに下がり始めた、男はずんずんとこっちに近寄ってきていて何かを狙っているような気がしていた。
「ほら、こっちに来い!」
「瑞希さん、少し下がった方が」
「そうだね」
私とロンは大きく男との距離を取った。その事に気が付いた男はいきなり走ってきた。
「この……!!」
「今です!発射!!」
ロンはいきなり廊下に木霊するほどの声量で言うと背後から白い羽根が雨のように飛んできた。それと同時にロンは私の頭をした方向に押さえつけ、体勢を低くさせた。
「うわっ!?」
「やっぱり、一度喰らってみた経験はこうして活かせるんですよ」
「これって……!!」
私は後ろを振り向いた。すると暗闇に包まれるように立っていたのは黒い鎧のエンルージュだった。
「やはりこうなっていたとはな」
「この……舐め腐りやがって!」
男は羽根で傷を負ったにもかかわらず、私たちの方に向かって走ってきていた。だがそれよりも早く黒い鎧のエンルージュは簡素な片手剣を手にしており、懐に飛んでいった。
「何者かは知らない、だが死んでもらうぞ!」
「もう懐に」
男の言葉が言い終わるよりも先に黒い鎧のエンルージュは男の体の中心に片手剣を突き刺し、一気に外側に断ち切った。
「ガハッ……」
バタッと倒れるた男を気にせず、飛び散った血を見ていた黒い鎧のエンルージュは私とロンの方向を見て、片手剣に付いた血を振って落とした。
「怪我はないか?」
「別にないけど……この人は一体何者だったんだろう……?」
「分からない、だがそなたと同じ人間という事は見たら分かるな」
(人間がどうしてここに……もしかしてここから遠くの場所に人間が住んでいるのか?)
私たちはこの世界にエンルージュ以外の生物がいる可能性が増したことにどこか期待感と不安感が出てきた。そして事が収まり次第、エンルージュだけの先鋒隊を結成するのだった。
最後まで見てくれてありがとうございます。
少しでも続きが気になる、それか面白ければブックマーク・評価・いいね・感想・レビューをお願いします!




