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螺旋世界のアルフィリア  作者: 神無月二夜
19/20

19、フィリアのその後

 3人の朝霧才佐は、それぞれの時代へ帰って行った。

 覚悟はしていたのに、急にさびしさが込み上げてくる。


 私がその場で立ちつくしていると、ユーサナギアが座っていた場所の後方から、人影が現れた。私と同じ真っ白い長い髪をした女性だ。腹部にかなりの深手を負っているようで、すぐにでも治療をしなければ危険な状態なのが一目見てわかった。

 マーテル・マキリスの時間停止によって生きながらえていたのかもしれないが、ユーサナギアが討たれたことによって、その効果が解けてしまったのだろう。

 その女性は私の存在を確認すると、こちらへ近づいて来ようとするが、足がもつれて転びそうになっている。私はとっさに自分の身体をすべり込ませて彼女を支える。


「動かないでください! 傷口が開いてしまいます」

「……あなた……もしかして、フィリアなの?」


 会ったこともない目の前の女性が、声をつまらせながらも確かに私の名前を呼んだ。


「はい、そうですが……あなたは?」

「あなたに……渡さなければいけないものがあるの」


 こちらの問いかけには答えず、その女性は私の手にあるものを握らせた。


「これはマキリス!? なぜ、これをあなたが?」


 動力が補充されている証拠を示すように、水晶は強い光を帯びていた。


「ごめんなさい……説明している時間はないの。だから、よく聞いて……」


 素直に耳を傾けてしまうような、不思議な声だった。


「1人の人間が何度、時間を繰り返したとしても……結局同じ結末を迎えてしまう……」

「……私は最後の最後まで……思い出すことができなかった……」

「けれどあなたが……何年後でも、何十年後でも、いい……」

「……悲しい出来事が起こる前に……思い出すことができたなら……」

「2人でならきっと……救える……はず」


 言葉が途切れ途切れな上に脈絡がないため、言っている内容はよくわからない。しかし、この人が、これから私がしようとしていることを理解し、その後押しをしてくれたことだけは理解した。


「……私にできるのでしょうか?」

「今の自分に……できることを……してみましょう」

「はい、ありがとうございます!」

「……1つだけ、お願いがあるの……私を彼の元へ……朝霧才佐のそばへ連れて行って」


 彼女の言う朝霧才佐というのは、先ほどまで戦っていたユーサナギアのことだろう。


「で、でも……彼は、もうすでに……」

「大丈夫……わかっているから……」


 私はその女性を、ユーサナギアのそばへと運んだ。


「……ここで、いいわ……ありがとう……もう行って」


 女性は座り込んで、ユーサナギアの頭を愛おしそうに抱きしめた。


「あなたの……そばで眠るのは久しぶり……おやすみなさい、才佐くん」


 天井からパラパラと金属片のようなものが舞い落ちてきて、あちこちからギシギシと金属のきしむ音が聞こえて来た。おそらくこの建物が崩れ始めているのだろう。


「フィリア! 3人は元の時代に帰ったかい? キミも急いで外に出るんだ!! これ以上そこにいると、崩落に巻き込まれてしまう!」


 入り口のほうから、キサラギ博士の声が聞こえてきた。


「博士! 申し訳ありません!! 私は過去に行って才佐くんを助けます!」

「助けるって……どういうことだ?」

「彼が世界を滅ぼすことになる原因を取り除きます」

「いくら過去を変えても、我々の世界はこれ以上よくはならないよ……」

「わかっています。この世界は才佐くんに救ってもらいました。だから私は彼の世界を救いたい!」

「何を言っているんだ! キミのマキリスには時間転移の力が残ってないだろう!?」

「あったんですよ、もう1つ!」

「……そうだとしても、こんな不安定な状態での転移なんて危険すぎる! キミの身体にどんな負担が掛かるかわからないんだぞ!! 考え直すんだ」

「イヤです!」

「なっ……こんな時に駄々をこねるな。朝霧くんの最後の言葉を覚えているだろう?」

「フィリアには幸せに笑ってほしい……」

「そうだろう……だったら!」

「私は才佐くんの幸せな姿を見るまで、心から笑える気がしません……!」


 キサラギ博士は押し黙ってしまった。


「……わかったよ。好きにしたまえ。朝霧くんによろしくな!」

「ありがとうございます! この世界はお任せします!!」

「ああ、達者で。身体には気をつけるように」

「はい、いってきます!」


「リディル・イン・ポステルム!」


 マキリスが強い光を放ち、私の身体を包み込んでいった――。

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