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俺は今、嘗てない程の慎重さを求められている。下手に魔力を込めれば一気に加速し曲がる所か交わす事も出来ずに何処かに、何かにぶつかってしまうだろう。何が『二つより一つの方が効率が良い』だ!お陰で魔力操作がよりシビアになってんじゃねぇか!!街中じゃ危険だから降りてバッグに仕舞って歩いた方が良いかもしれないけど、なんだか負けた気がするから意地でも乗って帰る事にしたが周囲を眺める暇もない程に集中しないといけないとは・・・・・ああ、マリーに危ないから乗らないように言っておかないと。バイクは練習して乗れるようになったけど、これは無理そうだし、事故ったら怪我じゃすまないかもしれない。
「まぁそんな訳でさ、俺でも操作が難しくなっちゃったからマリーは乗らない方が良いと思う」
「あらあら、私は元々乗れた方が便利かな?って位でしたし、乗れなくても構いませんよ」
「でも、ジン兄さんでも難しいって相当だよね?アルバートさん何考えてるんだか・・・・・」
「あたしは今の方がかっこいいと思うわ。あたしも乗ってみたいわ~、ジンより似合うと思うのよね」
「あ~確かに。ベルの方がガタイが良いから似合いそうだよな」
「でしょ?早く誰にでも乗れる時代が来ないかしら。歳とってお爺ちゃんになってからじゃ遅いのよ」
「誰にでもか~・・・そんな日が来たら皆で海にでも遊びに行くのも良いな」
「だね~」
アルバートさんの目標である『魔導車』が完成した暁には家族全員でクランゼル領へ遊びに行くのも良いな。その為には戦争を終わらせなくちゃだけど。
* * *
ロードルデルフ王国王都バクストロフ王城国王執務室
「陛下。兵器開発局長が明日出立されるそうです」
「そうか、下がって良いぞ・・・さて、アルバートが上手くやっておればあれの出番は無い訳だが、我が国の技術力を見せ付けておけば抵抗する気も失せるであろうし、無駄足にはならんか」
「私はアルバート如きの策で如何にか出来る相手とは思っておりません。魔王があれを打倒す事が出来るのであれば、奴はこの国に・・・いや、王都へと向かって来るのではないかと」
「ふむ、確かに奴は宣言通りに此処へ、我と王家の血を引く者を亡き者にしようとするのであろうな。だが、其方が居る。我には其方に勝てる者が居るとは思えんのだ」
「陛下の信頼と御恩に報いるためにも全力で当たります・・・ですが勝てるかどうかは別の話です・・・・・実際、私は強者と言う者に遇った事が無いのですから」
「それは其方が強過ぎるからであろう。並び立つ者が存在しない、真の強者とはそう言うものなのだ」
「そう言うものですか・・・・・」
「ああ・・・なんなら局長と共に行っても良いぞ。ここに居ても退屈であろう?」
「・・・いえ、止めておきます。行き違いになって、陛下の身を危険に晒す訳にはいきませんので」
「まぁ好きにするがよい。大司教の予言通りであれば、我が大陸の覇者となる事は決まっておるのだから」
正教会大聖堂大司教執務室
「なに?!予知が出来なくなっただと!一体如何言う事だ?!敵からの攻撃か?!貴様事前に何も言わなかったではないか!!」
《大きな声を出すな、誰かに聞かれたらどうする》
《あ・・・ああ、済まない・・・・・だが、如何するのだ?このままでは・・・・・》
《なに、心配はいらんよ。一度確定した未来を変える事は容易ではない。奴の見ていた未来と私の見ていた未来は別のモノであろうが、望む未来を先に確定させてしまえば良いだけの事よ。其方は其方のやるべき事をやれば良いだけだ》
《ほ、本当だな?魔力操作の修練を積むだけで私が教皇に成れるのだな?》
《ああ、勿論だ。我が魔力を十全に扱えるようになれば教皇所かこの世界の全てを手に入れる事も可能であろうよ。全ての民が其方を神と崇める事になるのだ。その為には・・・・・》
《解った!やる!やるぞ!!一日も早く其方の‶力〟を扱えるようになってみせるぞ!!》
漸く―――漸く時が来る
長き時を耐え、全てを手にするその時が―――
* * *
「そんな訳だからさ、明日から十日程出掛けて来るよ」
「解ったけどさ、無茶だけはしないでよ。ジン兄さんに限ってそんな事は無いんだろうけどさ」
「あはははは・・・ジンが無茶とか有り得ないわよ。あたし達には無茶に見えてもこいつにとっては大した事じゃないんだから」
「そうなんだろうけど・・・俺には想像も付かない世界だからさ、如何しても心配になっちゃうんだよ」
「心配すんなって。今まで俺が帰って来なかった事なんて無かったろ?今回も、その先も、必ず帰って来るって約束するよ。だからお前は今まで通りここを守ってくれ。俺の帰る場所が無くならないようにさ」
「うん・・・でも、ここはカルヴァドス様が居るから大丈夫なんじゃない?」
「いやいや、あいつはお前の飯が旨いからここに居るだけなんだぞ。大陸北東の山にドラゴンが居るから会いに行ってみるか?って聞いたら『その間の飯は如何するのだ!』なんて言ってたしな」
「あはははは・・・なにそれ!カルヴァドスったら可愛い所あるじゃない!」
「だろ?あんな見た目して完全に餌付けされてんだよ。笑っちゃうよな!ははははは・・・・・」
幸せだ、唯何気ない会話が、笑い合える家族の居る当たり前の日常が愛おしい。だからこの平穏な日常を永遠の物にする為に戦い守り抜く。
未来が見えなくなったとカグツチは不安と困惑を露わにしていたけど、俺にとって未来なんて初めから見えなかったし、見えない、解らないのが当たり前だ。 自分にとって最善を尽くし掴み取る。
何をしてくるのか解らないのはお互い様だから相手の予想の上を行く。後手に回って数で攻め続けられれば負ける可能性もあるから打って出る。
先ずはオクタヴィス領。そしてハイデガルドからロードルデルフ軍を追い出し、ロードルデルフ王国内を暴れ回って兵を減らしつつ王都を目指そう。
俺はこの日まで‶戦争〟と言う物を理解していなかったんだ。俺一人が戦い、ロードルデルフを制圧すればそれで終わりだなんて楽観視し、大きな勘違いをしていたんだ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




