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ヘルメットを脇に抱えたアルバートさんと研究所?内の休憩室で話をした。
「さて、この間も言ったが、試して貰いたい事が有るんだけど良いかね?」
「構いませんけど、それって俺じゃなくちゃいけない事なんですか?」
「まさか、特定の人間でなくちゃいけない物なんて商品としては不完全じゃないか。勿論私も含めて職人達でも試したよ」
「それなら俺がやる必要ないんじゃないですか?」
「あ~・・・ちょっと扱いに困る物が偶然出来てしまってね、君が扱えそうなら、と言う訳さ」
アルバートさんはそう言うと部屋の奥にある鍵付きの金属製の箱の中から30cm四方の銀色の箱を取り出してテーブルの上に置いた。
「よっと・・・フゥ・・・この箱の中に入っているんだが・・・まぁ、開けて貰えば解るか」
「おおっ、見た目より随分重いですねこれ。手触りからして魔力石合金でしょ?それなのにこの重さって・・・・・」
箱の表面を軽く叩いてみたが、その感触はかなりの厚みの有るモノだった。こんな厳重にしなきゃいけない物ってなんだよと、軽い気持ちで箱を開けたんだけど、
「おわあああぁぁぁ!!・・・ぁっ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・あ、アルバートさん!あんた、何てモンを創り出してんだ!!まさかこいつを量産しようってんじゃねぇだろうな!!」
箱の中には直径3cm程のくすんだ銀色の鉱石?が入っていたんだが、箱を開けた瞬間に体表面の魔力を吸われて慌てて箱を閉めた。
「・・・ふむ・・・君程の魔力の持ち主でも扱いきれない・・・か・・・ああ、勿論量産なんて考えてない、と言うか出来ないんだ。魔力石合金の配合試験中に偶然出来た物なんだが、完成と同時に周囲の魔力を吸い取り始め、炉は五日も使用不可能になるし、素手で触れば魔力欠乏を起こして三日は寝込む羽目になる。保管するにしても最低でもそれと同じ箱が必要になるからね。どう考えても割に合わないし、用途が思いつかないんだ」
「そうですか・・・じゃ、じゃぁこいつは如何するんです?」
「廃棄したい所だけど、魔力炉に入れる事も出来ないし異様に硬くて破壊も出来ない。それでだ、君に持っていて欲しいんだ。ここに置いておいて、万が一にも盗まれて悪用されたらと思うとね・・・うちの者を信用していない訳じゃないんだが・・・・・その点君ならそのバッグから出しさえしなければ盗まれる事も無いだろう?」
「えぇ~・・・ま、まぁ、確かに俺の手元に置いといた方が良いとは思うけど・・・・・」
「いやぁ有難う!お礼にバイクの修理はタダにしとくよ!あ、そうそう、乗り易いように改造もしておいたけど遠慮せずに持って帰ってくれたまえ!!」
今気が付いたんだけど、これって完全に嵌められたよな?バイクの修理はとっくに終わってたけど、俺がここに来るように仕向けてこれを持って帰らせるためにうちに届けなかったと。まぁバッグに入れときゃ俺以外には取り出す事さえ出来ないから問題無いけどさ。バッグの中で蓋が開いたりしないよね?
「解りました。確かに俺が持ってるのが一番安全ですし。それでですね、ちょっと作って欲しい物が有るんですけど・・・・・」
箱をバッグに仕舞って代わりにある物と一緒にメモを取り出してアルバートさんの前に置き、簡単な説明をした。
「ふむ・・・・・概要は解った・・・が、君がこれを使用する、使用しないといけない状況なんてあるのかい?私には思いつかないんだが?」
「俺的にも使わないに越した事は無いんですけど、まぁ保険ですよ保険」
「・・・・・まぁ、これなら十日も掛からないだろう・・・ああ、一つ君に謝っておかないといけない事が有る。この五年間で君とエデン商会について調べさせて貰った。理由は君の持つ知識が余りに私達の知識や常識と掛け離れていたものでね。済まないと思っているよ」
「あ~確かに。俺がアルバートさんの立場なら、先ず信用してなかったと思いますし、お陰で色々助かりましたから気にしないで下さい」
「そう言って貰えると助かるよ。それでだ、君やエデン商会の一部の会員が別の世界から来たと聞いて納得したんだ。君の居た世界では当たり前の事だったんだろうなと」
「ええ、まぁ、そんな所です」
「魔力や魔法、魔物も居ない世界と言うのは本当なのかい?」
「ええ、本当ですよ。魔法とか魔物なんて物語や娯楽なんかの創作物の中だけの物でした」
「・・・だとすると・・・やはり・・・・・これから話す事は私の私見・・・と言うか推測なのだけれども聞いてくれるかい?」
「ん?何です?何か気になる事でも有るんですか?」
「もしかしたら、君の居た世界でも昔は魔力や魔法が有ったんじゃないかと思ってね」
「は?・・・・・いやいや、それは無いですよ『優れた技術は魔法と見分けがつかない』なんて言葉はありましたけど、魔法のように優れた技術でも起こった現象の説明は付きましたから。それに、何故無くなったんです?有ったと言う証拠も、無くなったと言う証明も無かったんですよ」
「無くなったのではないかと言う説明なら出来るよ。今君に渡した物を含めた魔力石合金が原因なんじゃないか?世界中で、当たり前のように使われているんだろう?生み出される魔力量を遥かに超える量の魔力を吸い取り、完全に枯渇したと私は見ているんだが・・・例えばだ、何故滅んだのか解らない国・・・とか、無かったかい?」
「そ、それは・・・・・」
「有るんだね?・・・魔導を極めんと探求し続けた結果、制御仕切れないモノを生み出した。と、そう考えれば辻褄が合うとは思わないかい?そして、そいつが今でも何処かに埋まっていて魔力を吸い続けているとしたら?そして生命体は長い年月を掛けて魔力が無くても問題の無い身体に進化を遂げ、魔導に代わる技術を身に付けた・・・・・まぁ、あくまで推測だし、確かめようにも行く事すら出来ないがね・・・ははははは」
この人の言う事は強ち間違いでないのかもしれない。失われた大陸なんて話が残っている以上、今でも何処かに埋もれたままになっているロストテクノロジーが有っても不思議では無いのだから。
で、話を終えてバイクを持って帰ろうと保管している倉庫に行ったら、
「・・・・・何で三輪になってんですか?これじゃ改造ってレベルじゃなくて全くの別物になってるじゃないですか!!これバイクじゃなくてバギーですよ!バギー!!元の部品なんてフロントフーォクとメインフレーム位じゃないですか!!」
「いや、タダにしてあげたんだから良いじゃないか。やはり二輪だと安定した走行が出来ないと思ってね。それにほら、魔導ジェットも二つだと同調が取りにくいから大型の物一つに替えたんだよ。理論上はこちらの方が効率も良いんだ。さぁ、乗ってみて感想を聞かせてくれ!」
まったくこの人はと、嘆息しつつもハンドルを握りシートに跨った。うわ、スイングするよこれ。旋回性確保のためか?
「じゃ、じゃぁ帰りますけど、感想は少し待って下さいね」
「ああ、急がないからじっくり試してくれたまえ。その方が色々改善点が見つかるだろうしね。それじゃ」
ハンドルに魔力を流してバイク改めバギーを進ませ家へと向かった。走り出した俺の背後から『良かった』とアルバートさんの呟きが聞こえ、心の中で『何にだよ!』と突っ込んだ。なんかやばい物創らないようにハルに言ってここの人達を監視させた方が良いんじゃないか?
ここまで読んで頂き有難う御座います。




