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「ぅ・・・っあ!・・・ゆ、夢か・・・・・」
深夜にうなされて飛び起きた。夢の内容はよく覚えていないが、多分あれは最後に師匠と戦った時の記憶だと思う。今だに何故勝てたのかが解らない。当時の俺は身長も体重も師匠よりなかったし、何より朧を習得したばかりで今程使い熟していなかった。いや、今でも勝てる気がしない。それ程までに師匠の朧は完璧だった。
『お前の求めた‶力〟は、この先に有ると知れ!』
師匠が残した最後の言葉が頭を過った。
「・・・・・あの領域に到達しなきゃいけないのかね・・・・・」
「む~・・・・・」
ぼそりと溢すと隣に寝ている鈴華が眉根を寄せて寝返りをうった。俺は鈴華の頭を撫でてから布団に潜り込んだ。
「しかし・・・良くこれだけの魔物を狩ったものだ・・・・・」
翌日、ハルとその部下がやって来たので、俺のバッグからハルが持ってきたバッグに大量の獲物を移し替えて行った。
「ま、まぁ五年分だし?基本金に困って無かったから、珍しくて金になる魔物以外は殆ど売らなかったしなぁ・・・・・」
「だが、そのお陰で助かった。この量なら切り詰めれば三ヶ月は持つかもしれん。聖下も感謝していたぞ、近い内に直接礼を言いたいと仰っていた」
ハルの持ってきたバッグは全部で十個。何れも時間停止だが、容量は無限では無い。それでもこの数を揃えるのに相当時間と金が掛かったんだろうな。
「ああ、そうだ。もう直ぐ新しい家が完成するからさ、良かったら皇家全員で遊びに来ないか?勿論お前も含めてだ」
「そう・・・だな。聖下にお伝えしておこう。今はロベルト殿下の教育や政務で忙しいが、来月には時間も取れるだろうしな」
「アンジェリカは如何してる?立場的に色々重圧感じてるだろうから、お前が出来るだけ傍に居てやれよ」
「殿下は生誕祭に備えて奉納舞の練習をしているな・・・あ~・・・実はだな・・・正直どう接して良いのか解らないのだ」
「そんなもん唯話を聞いてやるだけでも良いんだよ。ってか、お前もしかして女性と付き合った事無いのか?まぁ俺も人の事は言えんけど」
「ああ、殿下の専属を外れてからは剣の腕を磨く事以外に興味は無かったと言うのも有って、縁談は全て断っていたのだ。そして漸く一人前の騎士に慣れたと、人に誇れる強さを手に入れたと思った時に貴様が現れてだな・・・聖下方が襲われたり、貴様だけでなくアキラにも負けたりと・・・まぁそう言う訳だ・・・・・」
「ま、まぁ、そのお陰で名実共にこの国じゃ一番に慣れたんだし結果的には良かっただろ?」
「ああ、貴様にもアキラにも感謝している・・・・・最初はな、この話も断るつもりだったのだが・・・殿下に『恋人には成れなくても家族には成れると思うのです』と言われてだな・・・何と言うか・・・私もそう感じたのだ・・・・・」
「なんだよ、もう答え出てるじゃん。普通に、何時もの自分で居たらそれで良いんだよ。今は二人の時間を可能な限り作って話をする。そうすりゃ上手く行くと思うぞ」
「そ、そう言うものか」
「ああ、そんなもんだ。変に意識したり肩肘張っても続かねぇからな」
ハルにアドバイスをして肉の代金を受け取って別れた。しかし、ハルに交際歴が無いのは意外だったな。てっきり女遊びしまくってたんだと思ってたわ・・・マジでゴメン。
「午後からはアルバートさんの所に行って来るけど、何か欲しい物とか有るか?」
「ん~・・・特に無いかな。調理器具も半年前に替えたばかりだし」
「そうか。マリーと鈴華は?付いて来るか?」
「お仕事の話でしょう?私達が居たらあなた気を使って早く切り上げるじゃない。偶にはゆっくりして来て良いのよ」
「あ~・・・すまん。じゃぁ、一人で行って来るよ」
確かにそうなんだけど、気付かれてたか。それ以外にもちょっと聞かれたくない物も頼みたいから有難いなと、昼食を終えてアルバート商会へ向かった。そう言やバイクも修理から上がって来てないけど思ったよりヤバかったのかな?
アルバート商会に入ると何も言ってないのに「ようこそいらっしゃいました。此方へどうぞ」と言われて奥に通された。名前の確認もされてないし、俺この人と話した事も無いけど大丈夫なのか?まぁ俺の偽物とか聞いた事無いけど。
あれ?なんか奥と言うか裏口?え?なんか倉庫みたいな所に連れて行かれたんだけど・・・なんで?
「こちらで代表がお待ちです。どうぞお入り下さい」
「は、はぁ・・・・・」
ここって新商品の開発室とか研究所みたいな所じゃないの?俺が入っても良いのかね?入れって言われたし行くしかないかと、扉を開けて中に入ると5m程の通路が伸びていて、1m先の壁と天井から魔力が発せられているのを感じた。
「あ?何だこりゃ?トラップ?いや、攻撃性は感じないけど、近付くと何かの魔法が発動するのか?」
戻る訳にも行かないし、通路の先に見える扉まで行くしかないかと慎重に前に進むと、壁と天井から風が吹き出してきた。
「あ~あれだ。精密機械とか食品工場の入り口にあるエアカーテンとか言う奴だ」
なんかもうここだけ別世界だなと、苦笑いしつつ先に進み扉を開けると白い防護服みたいなツナギを着てヘルメットを被った人達が一斉にこちらを向いた。マジで別世界だったわ。いや、こえーし、なんなのここ?そんな格好しなきゃいけない所に外部の人間普通に通すなよ!
「やぁ、ジン君良い所に来てくれたね・・・いや、そんな嫌そうな顔しないでくれ・・・ああ、この格好かい?少々純度や精度の高い物を作る作業が多々有るのでね。埃や髪を落とさないためにしているだけだから気にしないでくれ」
「そ、そうですか・・・なんか人体に悪影響の有るヤバい実験でもしてるのかと思いましたよ。って言うか、平気なら先ずその頭に被ってる奴取って下さい」
「ははははは・・・やだなぁ、うちは健全な商会だよ。悪の秘密結社みたいに言わないでくれ。まぁ・・・悪用しようと思えば幾らでも出来るがね・・・クックックッ・・・ハァーハッハッハッ!!」
「いや、ノリ良過ぎでしょ。そんな事するなら俺がこの辺一帯更地にしちゃいますよ」
「ははははは・・・そいつは困るな。ほら、これで良いだろう?」
漸くヘルメットを取って顔を見せてくれたアルバートさんに、まったくこの人はと嘆息した。しかし、この商会は一体何処に向かっているのだろう・・・何か知らないうちに悪事に加担してたとか・・・無いよね?
ここまで読んで頂き有難う御座います。




