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何時もの様に日の出と共に目が覚める。隣に眠るマリーと鈴華の寝顔に幸せを感じ、部屋を出て裏庭へと向かった。
「よう、ここを護ってくれたのは有り難いけど、鈴華に余計な事教えんなよ。あいつはまだ子供だ、大人でも難しい事が出来る訳ないんだからな」
「ん?何だ、朝からそんな事を言いに来たのか?何の事かは解らんが、我はスズカに何かを強要するような事は言っておらんぞ」
「ああ・・・確かに言っただけなんだろうよ。だが、お前の言った事に影響されて鈴華に何か有った場合は、俺はお前を許さない。それだけは覚えとけ」
「ふむ・・・それは困るな。ここでの生活は気に入っておるし、気を付けるとしよう」
やはりカルヴァドスには注意した方が良いだろう。言葉は通じてもドラゴンと人間では常識や価値観が違うのだから。
朝食を摂り鈴華の稽古を眺めていると、珍しくカグツチから俺に話し掛けて来た。
《主よ、拙い事になった。予知が・・・未来を感じる事が出来なくなったのだ》
《あ?何だそりゃ?・・・あれか、奴が仕掛けてきて妨害されてるとかか?》
《いや、違う。何か行動を起こせば事前に予知に掛かる。お互いが未来を感じる事が出来る以上、妨害は不可能なのだ》
《何か良く解らんけど、何が有ったんだ?》
《解らん・・・何が有ったのか、何が起こっているのか、何が起ころうとしているのか、全てが感じられないのだ・・・・・この様な事は初めてで如何したら良いのかもだ》
《あれ?・・・って事は、相手も相当焦ってる可能性が有るって事か?・・・・・拙いな、焦って直ぐにでも乗り込んで来るかもしれねぇって事かよ》
《解らん。本当に何も解らんのだ。だから直ぐにでもこの地を離れた方が良い。あの乗り物も使わずに徒歩で、しかも可能な限り人との接触を避けて身を隠しつつ移動するのだ。それ以上の策も思いつかん》
「ふざけんな!!っと、ごめん鈴華。鈴華に言った訳じゃないからな」
「・・・・・とうさま・・・だいじょうぶですか?何だかあせっているみたいですけど・・・・・」
「ああ、大丈夫だ。鈴華が心配する事なんて何も無いから。そら、稽古を続けな」
「はい・・・・・」
不安気に俯く鈴華の頭を撫でてやり、再開した稽古を見守りながらカグツチと会話を再開した。
《おい、悪いがその提案には乗れない。俺を信じてくれているこの街の住人を裏切れないし、何より兄弟達を見捨てるような真似なんて出来る訳が無いからだ》
《だが今のままでは奴には勝てんのだ。時が来るまで逃げる以外に生きる道は無いのだ》
《それだ、お前は知らない方が良いと重要な事は何も話さない。それで信用なんて出来ると思うか?尤も、それを抜きにしても今回は従うつもりは無い。お互い何が起こるのかが解らないなら好都合だ、引っ掻き回して引っ繰り返してやる!!》
《待て!運命の強制力を甘く見るな!!何が起こるか解らない以上、慎重に事を運ばねば取り返しのつかない事になるぞ!!》
《どの道やるかやられるかだ。だったら主導権を握った方が良いに決まってる。先ずはオクタヴィス領、その次はハイデガルド、更にロードルデルフが制圧した格国にも攻め込んでロードルデルフの戦力を分散させた上でロードルデルフに攻め込んで貴族と言う貴族を片っ端から蹴散らしてやる!!これならお前の言ってた時間も稼げるだろ。まぁ、時間を稼いでも如何なるか解らなくなってんだろうけど、何か変化を感じたら知らせてくれればそれでいい》
納得したのかカグツチはそれ以上何も言ってはこなかった。結局二年後に何が起こるのかも言ってくれなかったな。
新居の方は内装に取り掛かっていて、あと半月もしないうちに引っ越せそうだなと、見回っているとハルが来たとハインツが呼びに来た。
「よう、もう直ぐ昼だし、飯でも食いながら話そうぜ。他に聞かれちゃ拙い話もあるだろうし、応接室なら問題無いだろ」
「・・・ああ、それなら問題無い」
ハルを連れて応接室で昼食を摂りながら話をした。
「先ず最初に謝らねばならん。ここが襲われた件は聞いているな?首謀者はリヒテルに追従した貴族二家で、取り潰しが決定していて捕縛済みだ。残りの家も監視を強化して対策済み。実行犯は西地区の犯罪者集団で、お前・・・と言うか、ミリーとエレナ、ミゲル達に因縁の有る連中と言えば解るか」
「ん?・・・ああ、ミゲルが騙されたおばはんの」
「ああ、その残党が戦で仕事を失った者を取り込み、五十名程の規模でここを襲ったのだ。カルヴァドスとベルフォードが殲滅したのだが・・・済まない、私の落ち度だ。前線に兵を取られていた等と言い訳にもならん。普段から厳重に街中の警戒をしていればこんな事にはならなかった」
「いやいや、ああ言ったならず者は隠れるのが上手いし、居無くなる事はねぇよ。誰も怪我しなかったんだし良いって。で、そいつらは如何してんだ?」
「全員処分した。お前の帰りを待つ間の食費も馬鹿にならんからな」
「そりゃまた思い切ったな。解らないでも無いけど」
「今のこの国には色々な意味で余裕が無いからな。それでだ、支援物資の買取についてなのだが・・・分割で、と言う訳にはいかないだろうか?」
「ああ、構わないぞ。アーヴァインが踏み倒すとは思えないしな」
「済まない・・・お前に頼ってばかりなのが心苦しいと聖下も仰っていて・・・これも言っておいた方が良いか・・・この戦が終わり次第聖下が退位なされる。五年前の事も含めて責任を取ると・・・後、ヴェルテール家も父上の代で取り潰しになる事が決まった」
「はぁ?何だそれ?アーヴァインが退位するってのは解るけど、何でお前ん家まで無くなんだよ?!」
「あ~・・・父上は聖下が退位後は即位されるロベルト殿下の相談役になり、私は・・・その・・・アンジェリカ殿下と結婚して皇家に入る事になってだな・・・・・ま、まぁそう言う事だ」
「・・・・・・・・・え・・・お前婿入りすんの?アンジェリカの所に?へ、へ~・・・おめでとう?で良いのか?」
「ま、まだ誰にも言うなよ!正式な発表は二か月後の生誕祭の後になるから、それまでは絶対に誰にも言うんじゃないぞ!」
その後は照れるハルを揶揄いつつ、アンジェリカとの馴れ初め的な子供の頃の話なんかを聞いたりして盛り上がり、明日の午前中には支援物資の引き取りに来ると言ってハルは帰って行った。兄妹同然に育った幼馴染との結婚とかテンプレだけど良い話だよな。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




