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聖都の外壁が見えて来た。東門へと進路を変えて更に進み、門の手前に降りると門が開いた。
「お帰りなさいませジン様!!今回の活躍の知らせを受け、聖都の全ての民がジン様のご帰還をお待ちです!!どうぞお通り下さい!!」
「・・・・・え・・・もしかして、なんか大袈裟な事になってる・・・とか?」
「いえいえ、ジン様が派手な事は苦手だと言う事も周知しておりますので、特に出迎え等も御座いませんので御安心を」
そう言われてほっと胸を撫で下ろして門を潜って街へと入った。確かに通りに人が並んでるとかも無かったのでそのまま家へと向かった・・・んだけど、会う人会う人にお礼を言われたり労われたりして、その度に「気にすんな」とか言ったり、手を振ったりしてめんどくさかった。これが戦争が終わっても暫く続くんだろうなと思うとげんなりした。
家の近くまで来ると門の前に居たハルの部下が駆け寄って来た。
「お帰りなさいませジン様。大変申し訳ないのですが、その、襲撃事件が起こりまして・・・あ、誰かが怪我をしたとかは無いのですが・・・・・今日明日中に団長がお見えになりますので詳しい事等はその時に」
「え?・・・襲撃ってここが?ハァ・・・解ったよ、後でハルが来るならその時に聞くわ。あ、ハルに詰まらねぇ遠慮してないで晩飯食べに来いって言っといて」
「ハッ!直ぐに伝えて参ります!!」
あ、別に走って行かんでも良いのに。走り去るハルの部下を見送り振り返ると門の所から声を掛けられた。
「とうさま!お帰りなさいませ!!」
「おっと、ただいま鈴華。良い子にしてたか?」
駆け寄り飛び付いて来た鈴華を抱き留めて門を潜るとマリーとベルが出迎えてくれた。
「お帰りなさい、あなた」
「お帰り、ジン。早かったわね」
「おう、ただいま。ま、大した策も無しに大人数で攻めて来ただけだったからな、直ぐに終わったよ」
庭を進んで行くとお客達も俺に声を掛け労ってくれ、店の中からミリーとエレナにライエルも「お帰り」と言って手を振ってくれたので手を振り返しながら返事をした。
家の中に入るとハインツが出迎えてくれて、その後ろにハヤトを抱きながら畳んだ洗濯物を運ぶ晶が居て・・・何度見ても家事をする晶に違和感しか覚えないな。こっちに来て色んな物を見て来たけど、これが一番驚かされたとか言わないでおこう。
マリーと鈴華の三人で風呂に入った。身体や頭を洗ってあげたり洗われたりしてのんびり浸かって、鈴華がのぼせる前にあがった。
マリー達が夕食の準備をしている間は鈴華の相手をした。俺が居ない間もちゃんと型の稽古をしたとか、カルヴァドスとベルが大勢の人を投げたり吹き飛ばしたりして凄かったとか、晶も参加しようとしてライエルに止められてたとか聞いた。
「その大勢の奴等ってどんな奴だった?服装とか覚えてるか?」
「けんとかやりを持ってたけど、ふつうのかっこうでした。かわのよろいをきてるぼうけんしゃ?みたいな人もいました」
「ふぅ~ん・・・まぁ、誰も怪我とか無くてよかったよ。カルヴァドスには後で礼を言っとかなくちゃな」
「あっ!そうだ、カルヴァドスさまに言われたんですけど『見えないものを見る』ってどうしたらいいんですか?」
「なぬ?見えない物を見る?・・・あ~解った。それは正確には『見る』んじゃなくて『感じる』んだ」
「かんじる・・・ですか・・・・・」
「例えば風は見えないけど感じる事が出来るだろ?目で見る以外に耳で聞いたり肌で感じたり鼻で臭いを嗅いだり舌で味を感じる。どれも見えないけど確かにそこに『有る』だろ?」
「お~なるほど」
「でも何でそんな事を?鈴華にゃまだ早いぞ」
「アキラ姉さまがベルさまにけいこを付けてたんですけど、ベルさまがかんたんにはじきとばされてて『アキラ姉さまかっこいい』ってあたしが言ったら、カルヴァドスさまが・・・・・」
「見えない物が見えるようになれば晶みたいになれると?」
「はい」
「間違っちゃいないが、今直ぐ見えるようになっても晶のようには成れないぞ。鈴華はまだ小さいんだから」
「む~・・・あたしも早く大きくなりたいです・・・・・」
膨れる鈴華の頭を撫でやると、にへらと笑顔で見上げて来たので笑顔で返した。何時までこうして頭を撫でられるのだろう。何時まで一緒に風呂に入ってくれるのだろう。女の子は成長が早いって聞くし、風呂は良いとこ十歳までかなぁ。
皆で夕食を摂る。俺と晶は麦飯と大根の味噌汁に鯵っぽい魚の塩焼きと白菜の浅漬けだ。他の皆はパンと焼き肉と卵スープとサラダ。同じ物でも良かったんだけど、俺が魚の方が好きだからと別に作ってくれて、晶がそれに乗っかった形だ。因みに麦飯は俺と晶以外は食べない。臭いがダメなんだそうだ。
「・・・ハルの野郎晩飯食いに来いって言っといたのに・・・詰まらねぇ遠慮しやがって」
「一応ラインハルト様の分は取っといてるから、来たら食べるか聞いてみようよ。仕事が忙しくて来られないだけかもしれないし、部下の騎士様も今日明日中って言ってたんでしょ?」
「まぁ、そうなんだけどな・・・・・」
* * *
その頃、当のラインハルトは宮殿で夕食を摂っていた。アンジェリカと二人で。
「・・・・・済みませんラインハルト様・・・お父様が勝手な真似を・・・・・」
「いえ、殿下が謝る事は有りません・・・・・寧ろ私の方が謝るべきなのかもしれません・・・私がこの歳まで縁談を断り続けたせいで殿下を巻き込む形になってしまい申し訳ありませんでした」
お互いが軽く頭を下げ、元に戻り目が合うとクスリと笑みが零れた。
「・・・こうして二人きりで食事を摂るのは久し振りですね。子供の頃はお父様もお母さまも忙しくて、二人きりの事が多かった気がします」
「殿下が成人してからは二人きりと言うのは無くなりました。世間体と言いますか、『家』の事情ですが。私が専属の護衛から外れる事になった理由も今ならご理解頂けるのでは?」
「・・・・・あの時始めてお父様に我儘を言いました。『ラインハルト兄様を返して』と。その後何日もかけて説得されてしまいました。今ならと言うか、当時も理解はしていたのです」
「ははは・・・私も似たようなものです。父上に『殿下方を御守りする事の何が悪いのですか』と食って掛かりましたから。ですが『守りたいと言うなら国ごと守れる力を身に付けてみせろ』と言われ、一つの『家』が力を持ち過ぎる事の危うさを説かれましたから」
二人が顔を見合わせ笑い合い、子供の頃の思い出話で盛り上がり、和やかな雰囲気のまま時が過ぎて行った。
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