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「えっ?私とラインハルト様がですか?」


「ええ、ラインハルトにも話してありますし、ガルバデスからも了承は貰いましたから、後は貴方達次第なのです。お互い考えた事も無かったでしょうけれど、これを機に話し合ってみてはどうですか?今は大変な時期ですが、だからこそ暗い話ばかりでなく、明るい話題も民には必要でしょう」


「はい・・・・・考えておきます」


「何も今直ぐ結婚しろと言っている訳では有りませんよ。婚約だけしておいて戦争が終わってから結婚すればよいだけの話ですし、何よりお互いの同意有っての事ですから。近い内に場を設けますから良く話し合って下さい」


 困惑するアンジェリカに先ずは話し合いをと念を押して教皇はアンジェリカの部屋を出て自室へと向かった。


「・・・二人とも真面目過ぎるのですよね・・・・・放っておいたらどちらも一生独り身で過ごしそうですし、私達周囲の者が世話を焼かないと・・・本人達には大きなお世話かもしれませんが・・・・・」




     *     *     *




 翌日、早めの朝食を摂り捕虜達のテントに向かった。と言っても、テントとは名ばかりで、檻の上に布が掛けて有るだけで周囲から丸見えの簡素な物だ。捕虜は全部で六名。アルフレッドだったっけ?あいつが伯爵で司教の最上位。他は子爵と男爵が一人ずつで残りは騎士爵だそうだ。


「おはようさん。見張りご苦労だったな、暫くは俺がこいつらの相手するから、あんた等は休んでいいぜ」


「ハッ!指揮官より聞いております。お言葉に甘えて休ませて貰いますが、御用の際は何なりとお申し付け下さい」


 去って行く見張りの兵士達を見送ると、捕虜の居る檻を屈んで覗き込んだ。


「よう、一晩小突かれ続けた気分は如何だ?お貴族様には得難い経験だったろ?クックックッ・・・・・」


「貴様の指示か・・・流石は魔王だな、やる事が汚い・・・・・それで、次は拷問か?我等はそう簡単には口を割らんぞ」


「いやいや、人質を取って他人に人殺しを強要する連中に汚いとか魔王だとか言われたくねぇよ。つーか、この間は炎の神の使いとか言ってたじゃん。その変わり様は何でよ?まぁ、どうせ神託を受けた奴がそう言ったんだろうけど、そいつが言った事が真実だと言う根拠は?そいつにしか聞こえないなら好き勝手に言いたい放題だろ?違うとは言わせねぇぞ」


「大司教様に限って嘘など付く物か!!」


「ほぅ、嘘じゃないと。じゃぁ、それが本当に神だと言う根拠は?この国にも神託を受けた奴が居るけど神だと言う証拠は無いし、俺も似たような経験が有るけど神じゃないと断言出来るぜ。まぁ俺の言う事なんか信じないんだろうけど」


「似たような?・・・貴様が神託を受けたなどと信じられる物か!」


「だから神託・・・いや、神じゃないんだよ。人間からしたら神としか思えない存在なだけだ。なんて言うか・・・精神生命体?自我の有る魔力の方がしっくりくるかな?まぁ兎に角、魔力の波長って言うか似た魔力を持ってる人間に取り付くって言うか住み着いて、宿主の願いとか叶えるために話し掛けて来るんだよ。俺の場合は親和性が高くてそいつと会話も出来るし、力を借りる事も出来るんだ。巨大化したの見たろ?あれはそいつの力の一部だ」


「なっ!・・・・・到底信じられる話では無いが・・・それが真実だと言うなら大司教様は・・・・・」


「おそらくそいつに操られてるんだろうな。何を吹き込まれたのかは凡そ見当は付く。そいつの狙いはこの国でも聖地でもない。俺の嫁・・・マリーベルの中に居る存在だ。そいつはマリーベルを手に入れるために俺と俺の中に居る存在が邪魔なのさ。一人の女を手に入れるためだけに国は動かない。だから俺を魔王に仕立ててお前等に退治させて、この国ごと手に入れようって魂胆なんだろ」


 アルフ達は苦虫を噛み潰したような表情で俯いた。否定したいが否定出来ないし否定する材料も無いと言った所だろう。疲労と寝不足の頭に俺の言葉が染み込んで行く。洗脳の手口の一つだが嘘は付いていないから問題無いだろ。


「アルフレッド、お前は司教、神に仕える身だろ?神ってのは人間を、自分の作りだした存在、言わば自分の子供達に殺し合いをさせるような奴なのか?俺が魔王だと言うなら何故俺は一人で戦っている?何故軍勢を率いて世界を滅ぼそうとしない?答えてくれアフルレッド」


 俺の問い賭けに俯いていたアルフレッドが顔を上げ暫しの沈黙の後その口を開いた。


「・・・・・わ・・・私をここから出してくれ・・・大司教様と話がしたい。そして私がこの地に戻るまでの間は一切の戦闘行為はさせないように旧オクタヴィス領を任せている者にも言い含めておく」


「おいおい、それが出来ない相談だって解ってんだろ?」


「勿論交換条件が有る。こちらが捕虜として捕らえている者との交換で如何だ」


「違う!そう言う事言ってんじゃねぇよ!・・・・・ふぅ・・・お前・・・殺されるんだぞ!解ってんのか!!」


「捕虜として捕らえられた時点で死んだも同然だ。三万もの兵を失ったのだ陛下も御許しにはならん。だが責任を取る者も必要だ。捕虜を引き渡す代わりにこの者達の保護を其方に頼みたい」


「アルフレッド様!何を仰っているのです!!責任を取ると言うなら私が参ります!!」


「ならん!!此度の戦闘で生き残ったのは私一人・・・そなた等は亡くなった事にする。家族と会う事は叶わなくなるが・・・死ぬよりはマシであろう。魔王、いや、ジン殿どうかこの命一つで彼らの事をお願いしたい」


「嫌だね。大司教とやらと話がしたいってんなら尚更ここに居ろ。俺の言った事が真実ならば奴は必ずここに、俺の前に現れる。だからそれまで大人しく捕虜をやってろ。つーかお前等は死んだ事にするから交換も無しだ」


「クッ!・・・・・すまん・・・私にはもう何が真実なのか解らないのだ。大司教様も、陛下も、そして其方の事も・・・誰を信じ、従って良いのかさえも解らないのだ・・・・・」


「別にいいじゃねぇか、今はそれで。そんな簡単に答えを出す必要は無いと思うぜ。さっきも言ったろ?奴は必ず俺の前に現れるってな。その時まで大人しくしてな」


 捕虜達の檻の前から移動してガルバデスの下へと向かった。こいつらはもうほっといても暴れる事は無いだろうが見張りは必要だなと、途中に居た兵士に見張りを頼んだ。他の連中の事も気になるし、聖下や旧オクタヴィス領の出方も気になるが、取り敢えず伝令が帰って来てないか確認しに行きますかね。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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