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 ロードルデルフとの初戦は危なげ無い所か二万以上の味方が出来て楽勝だった訳だが、魔王認定されたりロードルデルフのクズっぷりに頭に血が上ったりしてカグツチに『時間を稼げ』と言われてたのをすっかり忘れていた事を思い出したのはガルバデスに捕虜を引き渡してテントに戻って昼食を作り始めた時だった。


「ま、まぁやっちまったもんは仕方ねぇか。そもそも理由を言わないあいつも悪いしな」


 スープの鍋を掻き混ぜながら独り言ちていると草原の方が何やら騒がしい。如何やら解放した連中が揉めているようだ。


 まぁ所属している国も違うし、兵士と一般人が同じ位混ざってんだから揉めない方がおかしいわな。家族や生活基盤が有るならば帰りたいだろうし、帰った所でバレれば捕えられちまう。だからと言ってこのまま解放軍として戦い続けるのも嫌だと。理想を言えば家族と共にロードルデルフの手が届かない所で平穏に暮らしたい。でもそんな場所に宛ては無いし家族を連れだす事も叶わない。殆どの人は母国を含めた自分達の状況を理解していても『誰か助けてくれ』なんて他人を当てにしたり神に祈るだけで自分から踏み出す事はないんだ。


 徒に時間だけが過ぎ、手遅れになって後悔する事になって尚だ。


 答えの出ない言い争いなんかしてないで、倒した兵士の装備を剥いだり陣地からテントや食糧とかの物資を運びだした方が良いんじゃないですかね?何時旧オクタヴィス領からロードルデルフ軍の伝令とかが来るか解らないってのに。




     *     *     *




 その頃聖都では襲撃犯の尋問を終えたラインハルトが教皇に報告をしていた。


「そうですか・・・残念ですが、その二家は取り潰します。一人残らず反逆罪で捕らえて来て下さい」


「既に手配済みです。使用人を含め、一人残らず捕らえるようにと指示を出してありますのでご安心を」


「ハイデガルドの者達の方は如何です?」


「現在訓練所で収容所の設営を進んで手伝っております。戦う気は無かったと言うのも強ち嘘では無いのかもしれません。勿論監視は怠らないように言いつけておりますが」


「結構。後はジン様が戻り次第と言う事ですか・・・・・戦況は如何なっているのでしょうか・・・彼が負ける事は無いと信じていますが・・・何とももどかしい物ですね」


「既に終わっていても不思議では有りませんが、直ぐにでも父上からの報告が上がるでしょう。ジンとの交渉は私が引き受けますのでご安心を」


「・・・・・そうですね。私が頭を下げるのを彼は嫌いますし、その方が良いでしょう。宜しく頼みましたよ・・・・・ラインハルト・・・私は全てが終わり次第退位するつもりです。息子はまだ若く経験は足りませんが、ガルバデスを相談役として付けるつもりです。それと・・・貴方には一つ頼みがあるのですが聞いて貰えますか?」


「聖下の頼みと有れば何なりと」


「教皇と言う立場からでは無く、個人的な頼み事なので断って頂いて構いません。貴方さえよければアンジェリカをお願いしたいのです」


「そ、それは・・・・・」


「勿論無理にとは言いません。幼い頃より兄妹の様に接してきた貴方なら任せられますし、皇家に入る事で息子の片腕として国政に口を出す事も可能でしょう。ガルバデスからも了承は貰っています、後は貴方達次第なのです。ですから一度、二人で話し合ってみて下さい」


「は、はい・・・解りました・・・・・」


 ラインハルトはアンジェリカが三歳になった時から護衛兼従者として使えて来たが、その関係は主従と言うより兄妹のそれに近い。その為お互いに恋愛感情は無く、現在はお互いの立場を理解して馴れ馴れしい態度を取らないようにしているが、兄弟の居ないラインハルトにとってアンジェリカは今でも可愛い妹なのだ。


 教皇の下を辞したラインハルトは大きな溜息を付き、如何した物かと頭を抱えるのだった。




     *     *     *




「何で俺がお前等の面倒見なきゃならねぇんだよ。自分達の好きにしたら良いじゃねぇか」


「そう言われましても、私達だけではロードルデルフを相手にするだけの力も物資も足りないのです。各国を回って支援を頼むにしても賛同してくれる者がいるかどうか・・・・・」


 解放した各国の代表者二十人程がやって来て、俺に力を貸して欲しいとか抜かして来たが知ったこっちゃない。


「俺は俺の家族を護るために戦ってんだ。正直他の国所か皇国だって如何なっても構わないってのが本音だ。まぁ、俺の忠告を無視したロードルデルフにはきっちり落とし前付けさせて貰うから、全てが終わるまで逃げ続けてたら良いんじゃねぇか?」


「我々もその戦いに参加させて頂けないかと言う話なのですが・・・・・」


「馬鹿言ってんじゃねぇ。あんた等なんか足手まといでしかねぇんだよ」


 仲間が増えればそいつ等の事を気に掛けなきゃならない。命を懸けた真剣勝負でそんな面倒は真っ平御免だ。


「で、では、せめて皇国軍に保護して頂けるように口利きを―――」


「あ?お前等全員養うのにどれだけ金が掛かると思ってんだ?!一度に万単位の、しかも仕事が出来るかどうかも解らない奴等を養ってくれなんて言える訳ねぇだろ!!俺にも、皇国にも、お前達を保護してどんな得が有るってんだよ!!交渉すんのは勝手だが自分達だけでやれ!!」


「クッ!・・・解った、邪魔したな」


 戦い続ける事を諦めて屈した兵士に一体価値は有るのだろうか。初めから最後の一人まで戦う気概が有れば結果は違っていたかもしれないと言うのに上司や国王に言われたからと言い訳をして自分達は負けたのだと戦う事から逃げたんだ。そんな奴等を連れて戦う事なんて俺には出来ないし、保護してくれなんて言える訳が無い。


 兵士達は俺を睨みながら皇国軍の陣地へと入って行った。とんだ逆恨みだ。ほんの数時間前に俺に助けられたって言うのにこれだよ。あ~ほんと腹立つわ。自分達の事位自分達で決めろっての。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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