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家の建築の様子を眺めたり、ライエル達と料理をしたりと平穏な日々が続き、ガルバデスからの知らせが届いたのが聖都に帰ってから二十日後の事だった。
「一月は掛かると思ってたんだけど、予想より早かったな」
「ガルバデス様の見立てでは早ければ明日。遅くとも二日後には侵攻して来るかと」
「まぁ、そう心配すんなって。何時でも出られる準備は出来てるし、今日中にはガルバデスの所に顔を出すからさ」
「は、はぁ・・・では、私は帰還いたしますので宜しくお願い致します」
訝しげな顔をして帰って行く伝令を見送り部屋に戻り、マリーとハインツに留守を頼むと裏庭に出て鈴華に良い子にしてるんだよと言いながら頭を撫でた後、カルヴァドスに転がされているベルにも留守を頼んだ。
「それじゃ行ってくる。まぁ適当にあしらって帰って来るつもりだけど、相手の出方によってはどうなるか解らないから一週間位見といてくれ。それ以上掛かるようなら伝令出すからさ」
「ジン兄ちゃん、気を付けてね」
「行ってらっしゃい、ジン兄さん」
中庭でライエル達にも声を掛けて炎を纏いふわりと宙に浮かび「心配すんな」と言って北東へと向かった。
「いいなぁ・・・あたしもとうさまみたいに大きくなったりお空をとべるようになりたいな・・・・・」
「其方ならば何れ可能になるであろうよ。だが、今は身体を作る時だ、父の教えを護り型の練習に精を出すがよい」
「はい、カルヴァドスさま」
上空から裏庭で手を振る鈴華に手を振り返した。さて、どんな策を練って来たのか楽しみだな。
東門を超えて少し行った所で二十人程の気配を感知した。遺跡の東側か・・・ん~、まぁ放っといても良いだろ。カルヴァドスにハルもいるし。でも、ロードルデルフ軍にははっきり言っといた方が良いな。忠告を無視したって事はこっちが侵攻しても文句は言わねぇよなって。
飛び続ける事三十分、皇国軍の陣地上空に到着。ガルバデスが何やら指揮を執ってるのが見えた。
「そんな慌てんでも大丈夫だっての。まぁ気持ちは解らんでもないけど。お~い!ガルバデ~ス!来たぞ~!」
ガルバデスに声を掛けながら高度を落とす。頭上から聞こえた声に驚きながら顔を上げるガルバデス達皇国軍。ははは・・・どいつもこいつも間抜けな顔しやがって。
「よう、向こうさんはどんな感じよ」
「ジン殿、良く来て下さった!現状敵軍は前回と同じ場所に陣を構え集結中との事です。数は既に前回を超え、二万五千から三万に届くのではとの報告を受けております」
「ははははは・・・・・馬っ鹿だなぁ。数で如何にかなると思ってるなら、相手の~・・・何つったっけ?あ~・・・アルフとか言う奴は相当な間抜けだな」
「ジン殿・・・こちらの兵力はラインハルトの報告により海岸沿いの警戒に回したため現在六千程です。どう考えても太刀打ち出来るとは思えないのが普通かと」
「いやいや、空飛んで来て巨大化してんだぜ俺は。あんだけ解り易く力の差を見せつけられて数増やすだけとか考え無しにも程が有るだろ。まぁいいや、もしかしたら他に策が有るのかもしれないし、進軍して来るのを待ちますかね」
どうせ兵士の殆どはハイデガルドでの徴兵だろうし、適当に転がしてロードルデルフの奴だけ甚振ってやろう。忠告無視した罰も兼ねてな。
* * *
「クックックッ・・・面白い事になってきおったな・・・・・ジンの奴め面倒臭がりおって。しかし、如何した物か・・・我はここを離れる訳にいかんし」
「?・・・どうしたのです?カルヴァドスさま」
「ん?・・・まぁ戴した事では無いのだが・・・・・スズカ、直ぐ其処の門の所に居る兵士を呼んで来てくれるか?」
「はい!」
カルヴァドスは駆けて行く鈴華を横目で見守りつつ、自らの尾を引く男に声を掛けた。
「其方は確かベルフォードと言ったな?遊びの時間は終わりだ。スズカが戻り次第屋敷に居る者全てを店の中に集めるのだ」
「ぬおおおぉぉぉぉ・・・・・へ?なに?なんだってのよ?」
「敵襲だ。この家の者・・・おそらくマリーベルが狙われている。急げ、スズカを連れて行くのを忘れるでないぞ」
「あら、うちを襲うなんて馬鹿な奴らねぇ。解ったわ任せて頂戴。お客様にもお帰り願わないと」
「カルヴァドスさま!おつれしました!」
「うむ。スズカ、其方はベルフォードと共に行け。で、其方はラインハルトの部下だな?」
「はっ!」
「奴に伝えろ。東の遺跡に敵が二十・・・いや、三十以上集結しているとな」
「なっ?!そ、それは本当でありますか?!」
「我がそのような詰まらん冗談を言うと思うか?衛兵を百名程連れて周囲を囲み、一人も逃がすなと伝えよ。良いな?」
「は、はい!直ちに!!」
「さて・・・面倒だが我も動くとするか。何時までもタダ飯を食らっている訳にもいかんからな。グハハハハハ!!」
カルヴァドスは背中の翼を広げると、ふわりと浮かび上がり中庭へと飛んで行った。
一方、カルヴァドスからの知らせを受けたラインハルトは聖都の警備強化のためにガルバデスから送られてきた兵を率いて遺跡に向けて出立。万全を期すために二百名で遺跡を包囲するように移動し敵軍を難なく制圧。と、言っても戦闘は無くあっさり降伏したので捕縛しただけだが。その中にロードルデルフの者は居らず、全てハイデガルドの者で中には農民や商人等の一般市民も居た。部隊を纏めていた隊長役の者は「自分達は陽動の為に聖都で暴れてこいと言われただけで、奴らの言いなりになって死ぬ位なら降伏する。私が知ってる事なら何でも話すから他の者達を保護してくれ」と言い、端から戦う気は無かったのだった。
「ふむ・・・だが、はいそうですかと信じる訳にも行かない事は解っていると思う。当面は捕虜として過ごして貰う」
「はい、そこは皆理解しています。不当な扱いさえされなければそれで構いません。その・・・我々ハイデガルド王国としてもこの戦は不本意なのです」
ラインハルト達が捕虜を連れて聖都へと向かい始めた時、聖都からの伝令が駆け込んできた。
「団長!緊急事態です!エデン商会が何者かに襲撃を受けております!!」
「なっ、なんだと?!この一番大事な時に何処の馬鹿者だ?!この国を亡ぼすつもりか!!クッ・・・私は事態の収拾のため先に帰る!お前達は周囲の警戒をしつつ帰投。その後は訓練所に収容所の設営だ!」
「「「「「はっ!」」」」」
ジンが戻る前に全てを終わらせなければ国が亡びると、ラインハルトは身体強化を掛けて全力で掛けだした。
「くそっ!・・・カルヴァドスの実力を疑う訳では無いが・・・如何か誰一人として怪我などしないでくれよ・・・・・」
聖都に戻ったラインハルトが見た物は、エデン商会を取り囲む衛兵達と、中庭で嬉々として暴れ回るカルヴァドスとベルフォードだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




