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屋敷と裏庭の壁の解体が終わり、屋敷の基礎工事が始まった日の昼過ぎ、ミゲル達が帰って来た。裏庭の門を開けて入って来たミゲル達はその場に立ち尽くし驚きの表情を浮かべたまま暫くの間固まっていた。
「・・・・・・・・・な・・・何じゃこりゃあああぁぁぁ・・・!!」
「あっ!ミゲルさまたちですね?はじめまして、スズカ・マキシマともうします。おしごとごくろうさまでした」
叫び声を上げたミゲルに気が付いた鈴華がトコトコと歩いて近寄り挨拶をするとミゲル達は首を傾げた。
「え・・・・・だれ?・・・いや、今、マキシマっつったな?って事は・・・ジンさんの娘?!いやいや、ジンさん帰って来てんのか?!」
「え?マジ?ミリー辺りの悪戯とかで言わされてるんじゃなくて?」
「ハハハ・・・そ、そうだよな・・・幾ら何でもタイミング良過ぎだしな!で、何で壁無くなってんの?」
「なあっ!お、おい、見て見ろ!あいつ何もんだ?!カルヴァドスさんの尻尾引っ張ってやがんぞ!死にてぇのか?!」
「あ、あの方は、あたしたちかぞくのともだちで、ベルフォードさまって言います。あれはラインハルトさまにかつためのくんれんをしているんですよ」
「なぬ?ラインハルト様に勝つ?・・・・・いやいや、ねーだろ。あれだな、ライエル達が俺達を驚かそうと企んだんだろ?カルヴァドスさんはライエルの言う事なら聞くしな」
「そ、そうだよな。あいつ等驚かしやがって、如何してくれようか」
「うそじゃないですよ?とうさまとかあさまは今立てているお家のことで大工さんたちとお話しに行ってるんです。あたしにはむずかしいし、おしごとのおじゃましたらわるいからカルヴァドスさまとお話ししてました」
「え・・・マジ?マジでジンさん帰って来てんのか?」
「な、なぁ、俺にはこの子が嘘ついてるようには見えないんだけど・・・・・」
「お嬢様、お茶の用意が整いましたのでリヴィングへお越し下さい。ミゲル様方ですね?初めまして、エデン商会にて経理を担当する事になりましたハインツと申します。聞きたい事も有るでしょうが立ち話もなんですし、皆様の分のお茶も用意致しましたのでどうぞこちらへ」
「へっ?・・・は、はい・・・解りまし・・・た?・・・・・」
次から次へと起こる事態に付いて行けずに首を傾げながらハインツに付いて行くミゲル達。そして席に着き、お茶を飲みながらハインツから説明を受けるとミゲルは立ち上がった。
「よっしゃああぁぁぁ!!おい!お前等出掛けるぞ!馬車を出せ!!」
「は?何でだよ?帰って来たばかりだってのにどこ行くってんだ?」
「馬鹿野郎!酒だ!酒を買いに行くに決まってんじゃねぇか!!お茶なんか飲んでる場合じゃねぇだろ!!宴会だ!久し振りに潰れるまで呑むぞ!!」
「「「「「「お・・・おおおぉぉぉ・・・・・!!」」」」」」
呆気にとられ呆然とするハインツ達を残し、歓声を上げて部屋を飛び出して行くミゲル達。
「・・・・・お嬢様。あのような大人になってはいけませんよ」
「?・・・よくわからないけど、楽しそうでいいじゃないですか」
鈴華はミゲル達にあまり近付けないようにしようと誓うハインツだった。
* * *
その頃ロードルデルフ王国の王都バクストロフでは前線からの急報を受け、国王執務室で会談が行われていた。
「・・・・・ほう・・・炎の巨人が現れたか・・・其方の予言通りだな、大司教」
「はい、陛下。オクタヴィスの魔女を娶りし魔王に相違無いかと。これでメルクリウス皇国・・・いえ、教皇アーヴァイン・ハラルドルが魔王に魂を売り渡した事は明白。我らが主の望み通り、早急に魔王を退けハラルドル皇家を聖地より追い落として陛下が聖地を治めるべきかと」
「我はあのような僻地に興味は無いが、ウォーズン様の御望みは叶えねばならん。局長、例の物の準備が整い次第旧オクタヴィス領に送れ」
「はっ!畏まりました」
局長と呼ばれた男が執務室を出て行くと大司教と呼ばれた男が一礼をしてその後に続いて出て行った。
「これをアルフレッドに送れ。我は執務に戻る故、其方等も戻って良いぞ」
「はっ!失礼致します!」
国王からの書簡を持ち伝令が部屋を出ると、国王と数人の衛兵を残して全ての者が一礼して執務室を出て行った。
「そなたは如何思う?バクスター」
「陛下が何に対して問われているのか解りませんが、あの男は信用は出来かねます」
「クックックッ・・・そうか、我もそう思う。くだらん、実にくだらんが、大陸制覇の為に彼の国を討つ大義名分が必要であるからな。皇国を落とした後はあ奴に褒美として任せておけばよかろう。何を考えておるのかは知らんがそれで満足するであろう」
「陛下、私はそれ以上に気になる事が御座います。魔王の忠告を破った時。奴は公言通りにこちらに攻めてくるのでしょうか」
「さて、如何であろうな・・・だが、その時は其方が参れ。そなたも戦ってみたいのであろう?」
「如何でしょう・・・今まで死合って来た者達は、どれも名ばかりでしたから」
「クックックッ・・・其方の好きにして良いぞ。何時でも行くが良い」
「・・・・・では、局長の新兵器が通用しなかった時は、と言う事にしましょう」
ロードルデルフ王国軍最高責任者バクスター・オズワルド。彼は国王によって長年秘密裏に育てられた純粋な戦闘狂だ。だが、未だ数度しか戦っていないためにその名と強さは世に広まっていない。
「なに、奴の予言とやらが真実ならば、其方も楽しめるであろうよ」
「だと良いですが」
アルフレッドからの『炎の巨人』と言う知らせを聞いても全く動揺を見せなかったのは、信じていないのか、はたまた真実であっても問題無いだけの自信が有っての事か。何れにしても自軍の将として兵士達には心強いだろうと、机に向かい書類仕事を再開する国王だった。
* * *
「あ、お帰りなさい、とうさまかあさま」
「おう、ただいま。ん?誰か来てたのか?随分大人数だったみたいだけど」
打ち合わせを終えて家に帰るとリビングのテーブルに空のカップが幾つか置いてあった。
「ミゲル様方がお帰りになられましたので、ジン様の帰還を含めた説明をしておりました」
「おお、あいつ等帰って来てたのか・・・それにしては馬車が無かったけど、何処行ったんだ?」
「おさけをかいに行きました。えんかいだ~って、たのしそうに走って行きました」
「あ~・・・あいつ等酒好きだもんなぁ」
「ジン様、あの者達はお嬢様の教育に少々悪影響が有るかと思いますが」
「まぁ、偶の事だし大目に見てやってくれよ。あれで結構良い奴なんだぜ」
「はあ・・・ジン様がそう仰るのでしたら・・・・・」
ハインツは何だか納得してない表情をしていたけど、貴族じゃないんだし厳しすぎるのはちょっとね。帰って来たら残ってくれた礼を言わないとな。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




