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教皇との会談の翌日。アルバートさんがバイクの引き取りに来たので、新居の設備を頼んだ。
「では、組合の方で他の職人方の来る日を聞いておきます。まぁ、今の感じですと明日にでも来そうですが」
「ですよね。まぁ、早いに越した事は無いんだけど」
で、予想通り翌日には大工やら庭師やらと一緒にアルバートさんもやって来て打ち合わせを行い、更に翌日には屋敷の解体作業が始まった。
「とうさま!どんなお家になるのかたのしみです!すずかのおへやも有るんですよね?!」
「おう。出来てからのお楽しみだけど、ちゃんと鈴華の部屋も有るぞ~」
「わ~い!あ、そうだ!うらにわのかべにとびらを付けるんじゃなくて、かべをなくしちゃいましょう!そうしたら広くなるし、カルヴァドスさまもうごき回れます!」
なんかとんでもない事言いだしたけど、ライエル達もその方が気軽に行き来出来ると言ったので裏庭の部分の壁を取り払う事になった。ミゲル達が帰って来たら、俺が居る事以上に驚くだろうな・・・・・
* * *
その頃、当のミゲル達は聖都から三日程の場所に居た。
「ミゲル、今日は如何する?次の村まで行くか、手前で野営するか」
「そうだな・・・予定より少し早めだし、せっかくだから村まで行こうか」
先頭を行くバーツが馬車を操るミゲルの所まで下がり、今日の予定を相談するとミゲルがそれに答えた。
「おお、良いな。俺も早く帰って旨い飯と酒が飲みてぇし」
「いや・・・それもだが、何か胸騒ぎがすんだよ・・・早く帰らなきゃいけないような?」
「何だそりゃ?帰ったら国が変わってたとかか?」
「おいおい、滅多な事言うんじゃねぇよ。冗談でも言って良い事と悪い事があんぞ」
ミゲルの隣に座るベルガーの軽口を嗜めるミゲル。
「いや、すまん。でもよう・・・俺等はロードルデルフ王国に行った事が有るから知ってんだよ・・・・・王都もだけど国土なんかこの国の何倍も有る。って事はよ、それだけ人が・・・兵士が多いって事だ。お前も冒険者やってたんだから解るだろ?数的有利ってのは絶対じゃないが、無視出来ないってよ」
「・・・・・解ってる。解ってるが・・・ウォーズン様が俺達を、長年この地を護り続けた教皇聖下方を見捨てるような事は絶対にねぇ」
「俺が・・・俺達がこの世界の者じゃねぇ事は話したよな?俺はよぅ・・・前の世界じゃ神を信じてたんだ・・・だが、一度たりとも救われた事なんて無かった。だから俺は神なんて信じねぇ」
「フッ・・・そりゃ前の世界の話だろ?こっちじゃ違う。俺は・・・俺達は何度も命を救われた。冒険者クビになって仲間も離れて追い詰められた時、お前達に出会えてジンさんに拾って貰って今の生活が有る。全てが神のお導きだとそう思ってる」
「ハッ!信じる者は救われるってか?只の偶然じゃねぇか」
「偶然ね・・・だが俺達は選ばれた。お前達がこっちに来たのも、ジンさんと出会えたのも含めて運命だと思わないか?」
「運命ね・・・ま、禄でもない人生だったが、お前達に会えた事だけは幸運だと思ってるよ」
「クックックッ・・・だろ?」
「ククククク・・・ああ、そうだな・・・ハハハハハ!」
顔を見合わせ笑い合う二人につられ、皆の笑い声が街道に響いた。
* * *
裏庭で解体作業を見守っていると、俺に客が来たと晶に呼ばれて応接室に向かった。
「え~っと・・・あんたは確かレスターさんとこの執事だよな?」
で、何か見た事の有る人が居た訳だ。
「ご無沙汰しておりますジン様。オクタヴィス家の執事頭を務めておりましたハインツです」
「務めていた?って事は辞めたのか?レスターさんの事は聞いてるけど、奥さんと娘さんは実家に居るんだろ?」
「その奥様にも送り出して頂きましたが、御館様から頂いた最後の命を果たすべく訪問させて頂きました。これより我が身は貴方様を主とし、この命尽きるまで忠誠を誓わせて頂きます」
「は?・・・・・・・・・いや、うちに執事とかいらないし、忠誠とか言われても困るんだよ。貴族でもないのに家臣とか必要ないって」
「そう仰るであろう事は予想しておりました。ですが、宜しいので?これから先の事を考えれば必ず必要になるかと思いますが」
「ん?これから先?なんでよ?」
「ジン様はこの国の救世主たるお方です。おそらくは各貴族家から次から次へと同じ様な申し出が殺到するかと」
「え~・・・・・」
「その者達との仲介や選別をする者が必要では御座いませんか?あなた様がいらっしゃる時でしたら御断りも出来るでしょうが、強かな者達は留守を狙って来るものです。その時、奥様や他の者達が断れるかと言えば『否』と私は思いますが如何でしょうか?」
確かに地球人の俺や晶達なら断れるが、晶はライエルの妻と言う立場から、ベルガー達は商会員と言う立場から貴族に逆らう事は出来ないと思う。俺が戻り次第連絡するとか言ってもごり押しされる可能性が高い。俺が苦情を言って追い返した時に一度雇った人が元の貴族家に帰ったらどう扱われるかを考えると・・・ちょっとなぁ。確かにハインツならマリーとも顔見知りだし、オクタヴィス家が後ろ盾になるようなもんだから利点も多い・・・か。
「・・・・・まぁ、あんたの言いたい事は解ったよ。但し雇うのは俺じゃなくてエデン商会だ。普段は代表のライエルの指示に従って貰って、あいつらの苦手な所、経理を含めた雑務全般をして貰う。それが出来ないってんなら奥様の所に帰るなり野垂れ死ぬなり好きにしろ」
「・・・・・解りました。ではこれよりエデン商会員として励まさせて頂きます」
と言う訳でエデン商会に新しいメンバーが増える事になった。不満はあるだろうけど、正直信用出来るかと言えば否としか言えない。なにしろオクタヴィス家の家臣で、こいつもマリーを使う側の人間だったのだ。レスターが亡くなったのは俺のせいだと思っていても不思議じゃない。
その後全員にハインツを紹介し、寮へと案内してから商業組合へ会員証を作りに行った。
そしてその日の夜。ライエルとアキラにハインツの行動に注意するように言っておいた。ライエルは信じられないと言った顔をしていたが、晶は神妙な面持ちで「それと無く警戒しておく」と言ってくれた。こう言う時の晶は信用出来るので任せても大丈夫だろう。後は・・・ミゲル達驚くだろうなぁ・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




