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 日の出と共に目が覚める。二人を起こさないように部屋を出て調理場へ向かう。朝食を作るミリーとエレナにちょっとしたコツなんかを教えているライエルに「おはよう」と声を掛け、三人の様子を眺めながらお茶を啜る。


 幸せだ。唯々、何もない平穏で穏やかな時間が愛おしく、俺の心を満たしてくれた。


 この日常を護るためにも先ずは今日、この国での市民権を勝ち取る。その代償として最低でも二年は戦い続ける事になるが、今までの十二年・・・逃げ続けてきた十二年間を思えば戴した事じゃない。


 あと少し、あと少しで望み続けた全てが手に入る。だから焦るな。その時が来るまで逸る気持ちを抑え、慎重に前へ進むんだ。


「あ、そうそう、今日の会談が上手く行ったら引っ越すから」


「は?え?なんで?せっかく一緒に住めるようになるんじゃん。引っ越す必要なんてないでしょ」


 朝食時に引っ越す事を皆に告げると、案の定ライエル達から不満が出た。


「まぁ、ケジメって奴だな。ここはもう俺の物じゃないってのも有るけど、お前達が自分達で考えて前に進んだように、俺も動かないとって思ってさ。ま、引っ越すって言っても隣だし、改築が済むまではここに居るから」


「え~・・・・・」


「あっ!とうさま、おとなりにおひっこしするなら、かべにとびらを付けましょう。そうすればあたしも気がるにあそびにこれます!」


 俺達が引っ越す事に不満を漏らすライエル達に、納得して貰うための説明をしていると鈴華が折衷案を出してきたが悪くない。


「そりゃ悪くない提案だな。お前達もそれで納得してくれよ」


「う、うん・・・・・」


 流石に小さな子供に言われて駄々を捏ねる訳にも行かないと一応の納得を得られた。


「とうさまはえらいお方とお話があるのですよね?かたのれんしゅうがおわったら、カルヴァドスさまと遊んでもいいですか?」


「ん~・・・そうだな、きちんと出来たら良いけど、迷惑は掛けないように。それと、家の敷地から勝手に出ない事。いいな?」


「はい!だいじょうぶです!」


「ベルも裏庭に行くんだろ?マリーも付いてるとは思うけど、それと無く気に掛けといてくれ」


「あら、お嬢様の騎士役なんて光栄ね。任せて頂戴」


 食後はハルが迎えに来るまで鈴華の練習を見てやり、軽くアドバイスをした。始めて三ヶ月程だが特に問題が無いのはかなりセンスが有ると思う。男の子だったら真羅流を教えても良かったかもな。


 実は真羅流の継承者を育てるか、それとも俺の代で終わらせるか迷っている。この世界なら強いに越した事は無いけど、権力者等に目を付けられて面倒な事になれば俺の様に逃亡生活をする事にもなりかねないからだ。


「むむむむむ・・・んぎいいぃぃぃ・・・・・!!グハッ!こんのおおおぉぉぉぉ・・・・・!!」


 すぐ横でカルヴァドスの尻尾を引っ張ったり振り飛ばされて転がってるベルが居る訳だが・・・まぁ大丈夫か。


「何をやっとるんだあ奴は・・・・・」


「おう、来たか。鈴華、出掛けて来るけど、言い付けは守るんだぞ」


「はい。とうさま、いってらっしゃいませ」


 ハルが迎えに来たので宮殿へと向かった。つーか、随分豪華な箱馬車で来たな。あ、サス付いてるじゃん。中には空調とか冷蔵の魔道具まで・・・あれ?これって、ひょっとして皇族とか高位貴族が使う奴なんじゃないのか?


「なぁ、ハル・・・何なのこの待遇?かえって怖いんだけど・・・・・」


「この国にとっての英雄であり、救世主となる方の送迎だぞ。これでも足りない位だ」


「英雄ってなんだよ。俺そんな風に担がれるような覚え無いんだけど?」


「何を言ってる、五年前に聖下と殿下の御命を救ったでは無いか」


「え?・・・・・もしかして、生誕祭の時のアレか?それこそ身体を張って助けたのはガルバデスとお前じゃねぇか」


「父上もあの時言っていただろう?お前の助言が無ければ助けられなかったと。自覚を持て、お前は聖下と殿下を救い、ドラゴンを下して聖都の守護に置いたのだ。英雄以外の何者でもない。それ所か一部とは言えこの国の貴族に追い立てられたと言うのに、その国の危機を救いに戻って来てくれたのだ。国賓としての待遇は勿論の事、可能な限りの望みを叶えるのが当然で、お前にはその権利があるのだ。尤も、その辺りの調整が今回の会談の内容になるがな」


 なんだそれ?なんか豪い事になってんなと、当惑している内に城門へと付いた訳だが・・・・・


「何でこいつら一列に並んでんだよ・・・・・」


「救国の英雄に対する礼だ。気にするな」


 開いた城門から宮殿までの道の両側に剣の刃を胸の高さで捧げ持つ衛士達が並んでいた。


 馬車が止まりハルが先に降りたので後に続いて降りようとしたら


「聖下、ジン・マキシマ殿をお連れしました」


「ご苦労様です」


 と、ハルと教皇の会話が聞こえた・・・えっ?!俺が来るの外で待ってたの?!いくらなんでも国のトップがそりゃ拙いだろ。せめて宮殿の中にしとけよ!あ~気まずい・・・馬車から降りたくねぇ~。


 覚悟を決めて馬車から降りると教皇以外の皇族も居て、更に大勢の貴族達も並んでてだな・・・・・


「救国の英雄ジン・マキシマ様に敬礼!!」


 と、ハルの号令で両脇に並んだ兵士達が一斉に剣を掲げ


「本日はお呼び立てして申し訳ありません、ジン様。五年前は私が至らないばかりに大変ご迷惑をお掛けした事を深くお詫びいたします。もし許されるならば如何かこの国をお救い下さい」


 と、教皇が頭を下げて謝罪して貴族達がそれに続いた。


「・・・・・・・・・・や・・・止めろおおおぉぉぉ・・・!!おい、ハル!俺が目立つの嫌いなの知ってんだろ?!何だこれは!嫌がらせか?!それともお前等全員俺の事揶揄ってんのか?!良い度胸だ!お望みと有れば、今直ぐ全員ぶちのめしてやんよ!!」


「ま、待て、ジン!違う!誓ってその様な事は無いぞ!!良く目立つのが嫌いだとか言っているが、実際戦場のど真ん中に空を飛んで来たり、炎の巨人となったりしているでは無いか!だから私はてっきり日常以外では派手にやった方が良いと思ったのだ!!」


 よくよく考えてみればハルの言う通りで、カルヴァドスを連れて来た時も訓練場の真ん中に飛んで来たりと結構目立つ事してたわ。


「あ・・・ああ、悪かったな。勘違いして怒鳴ったりして」


 我に返って周囲を見渡すと、腰を抜かして這い蹲ったりしてる人とか結構いて大惨事だった。マジで切れて殺気放っちゃってゴメン。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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