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商業組合に入ると中に居た商人達が一斉にこちらを向き、俺の顔を見て小声で囁き合っていた。まぁ五年前とは言え、ウォータードラゴンの一件で商人達の中では顔が売れちまったから仕方ないか。
「ジン様、ようこそ御出で下さいました。只今組合長に取り次ぎますので少々お待ち下さい」
カウンターに向かうまでも無くフロアに居た職員に声を掛けられて、そのまま応接室に案内されたよ。
「おおぉぉぉ!ジン殿!お久しぶりで御座います!良くぞ戻られましたな!おや、こちらの可愛らしいお嬢さんはジン殿のご息女で?」
「お、おう、久し振り。この子は俺の娘の鈴華だ。鈴華、挨拶して」
「はい。スズカ・マキシマと申します。よろしくおねがいします」
「これはご丁寧にどうも。私はロベルトと申しまして、商業組合南支部長を務めております。して、ジン殿、本日はどの様な御用件で?ただ挨拶に参った訳では無いのでしょう?」
「まぁ、挨拶だけでも良かったんだけど、ちょっと聞きたい事とか、頼みたい事も有ってさ」
先ず聞いたのはこの戦争に対しての商業組合の対応だ。確か本部がロードルデルフ王国の筈だし、食料や鉄鋼関係で協力要請されていると思うけど如何言う対応なのかと。次に属国化された周辺国の情勢も聞いた。
商業組合としてはあくまでも中立を貫く姿勢だそうだ。尤も大陸全土がロードルデルフ王国の支配下に収まった場合はどうなるか解らないそうだが。
周辺国の方は王族を人質に取って内政官を送り込んでやりたい放題らしい。兵士を含めた補給物資を現地調達と言うか、ほぼ略奪状態だそうで、至る所で食糧不足になっているらしい。短期間であちこち攻め込むにはそれが一番早いのは解るが、後の事考えてねぇなこりゃ。
「何分国外から物と情報が殆ど入らなくなっておりましてですね・・・その・・・申し訳ありませんがこれ以上の事は・・・・・」
因みにこの世界は海路、造船技術は殆ど進んでいない。大型船が通れる位の深さの所は魔物がうようよしていて、沈められてしまうと港町で聞いた。某海賊漫画の世界かよ。
「まぁ、それは仕方ないだろ。それで頼みたい事なんだけど、うちの両隣って空いてるよな?」
「ええ、空いておりますが、お借りにでもなるので?」
「まだ決まった訳じゃないだけど、このままこの街に住めるようになるなら買おうかなって」
「お。お買い上げ頂けるのですか?!そうして頂けると大変有難いのですが・・・・・」
「ああ、だから敷地の広い方を取っといて欲しいんだ。決まり次第建て替えて貰うから、大工とか職人の手配も頼むよ。戦時で鍛冶屋以外は何処の業界も低迷してんだろ?金に糸目は付けねぇから大人数で一気に仕上げて貰いたいんだ」
「おおぉぉぉ・・・それは助かります!確かに街から出て行く者がおるせいで景気が低迷しておりましたのでな。職人達も喜ぶでしょう」
「そのためには先ず受け入れて貰わないといけないんだけどな・・・・・その辺は教皇聖下次第だけど。あ、そうそう、税金払っとかないと」
支部長に会員証を渡すと支部長は裏面を見て首を傾げた。
「・・・・・はて?何でしょうかこれは。所持金額が読めないのですが・・・故障でしょうか?」
「いやいや、行く先々で言われんだけど、金額が多過ぎて表示出来なくなってるだけだから。確か百兆メル超えた辺りから変な記号だらけになったんだよなぁ」
「ブハッ!!・・・ひゃ、百兆?!そ、そんな額、国家予算でも聞いた事ありませんぞ?!あ・・・いや、失礼しました。よくよく考えてみれば、こちらに来て直ぐに二十億稼いだのですから、五年も経てばそれ位は稼いでもおかしくありませんな・・・ハハ・・・ハハハハハ・・・・・」
額から流れる汗を拭きながら乾いた笑い声を上げる支部長に手続きをして貰い家に帰った。
「鈴華、聖都は如何だった?大きな街は初めてだから驚いたろ」
「はい!すごくきれいで大きなまちでおどろきました!バートさんはすごくやさしそうなすてきなおじさまで、アルバートさんはおもしろい人でした!」
うん、まぁ面白い人だよなあの人は。
「ははは・・・気に入ったみたいで良かったよ。ベルは・・・随分やられたみたいだけど・・・大丈夫か?」
何かベルの顔が丸くなってんだけど、どんだけ転がされたんだよ。
「あのクソドラゴン・・・ちょっと位手加減してくれてもいいじゃない・・・イツッ・・・・・」
「いや、十分手加減してるだろ。顔が腫れた程度ですんでるんだし。俺なんか最初に有った時ブレス撃たれて死ぬ所だったし」
「「「「「えっ!!」」」」」
「あれ?言って無かったっけ?なんてーの、死に直面して新たな力に目覚めた的な?その後一晩中殴り合ってから飯食って仲良くなったんだよ」
「あんた、あんなのと殴り合って良く平気だったわね・・・信じらんないわ・・・・・」
夕食を食べながら昔話に花を咲かせていると玄関が開いて誰かが・・・って言うかハルがやって来た。
「おう、如何した?態々来なくても明日は宮殿に行くつもりだけど・・・悪い知らせか?」
「いや、そうでは無い。一応お前の予定を聞きに来たのだが・・・その必要もなかったか。明日の朝食後辺りに迎えに来るので準備・・・も特に必要無いか。何時もの格好がお前の正装だしな」
「ああ、この上着は真羅流継承者としての正装だからな。つーか、随分疲れた顔してるけど大丈夫か?何なら飯食って行けよ」
「有難いお誘いだが遠慮しておく。そこの顔を腫らした奴の相手をするのも面倒だしな。では、失礼する」
「おい、ハル・・・有難うな」
「フッ・・・気にするな」
悪い知らせでは無く、明日迎えに来ると言った。間違いなくハルが俺のために無理をしたのだろうと、帰ろうとするハルの背中に感謝の言葉を送った。って言うか、今こいつ自分家みたいに入って来やがったよな。この五年間どんだけ入り浸ってたんだよ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




