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久し振りに大人数での雑談を楽しんだ後、ライエルと夕食作りのために調理場へ。なんかもうプロの調理人と言うか、ちょっと教えただけなのに醤油と味噌を使い熟してる気がする。
「ほんと凄ぇな。俺が教える事なんて無いんじゃないか?」
「え・・・・・あのさ・・・怖かったんだ・・・皆を、店を守らなくちゃ、カルヴァドス様が居なくなったら如何なるのかって。本当に不安でさ・・・だから毎日必死で色々な事を試してさ。気が付いたら腕が上がってて、色んな人に認められて・・・でも・・・今、ジン兄さんに褒められたのが一番嬉しいよ」
「そうか・・・良くやった!お前は俺の自慢の弟だ!お前の事を孤児だ何だと馬鹿にする奴が居たら俺がぶちのめしてやる!!」
ライエルの頭をガシガシと乱暴に撫でながら褒めた。
「ちょ、あ、危ないって、ジン兄さん!はは・・・ははははは・・・・・」
笑いながら包丁を握るライエルの目には涙が溢れていた。
「あ~待ち遠し~・・・早く来ないかお味噌汁~・・・あ、仁!それは生姜焼きだな!おかずはそれか!?」
「何だその変な歌は・・・これはカルヴァドスの分だが、俺達の分も生姜焼きだぞ」
「おお・・・こうなると米が無いのが本当に悔やまれる・・・・・あ・・・仁、麦を炊くってのは如何だろう?」
「ああ、その手もあったか。まあ食感とか味は違うがちょっと見だけでも有かもな。明日の朝食にやってみるよ」
晶との会話を終えて皿に乗った山盛りのトロールの生姜焼きを持って裏庭へ行くと、カルヴァドスの頭の上で寝ている鈴華が居た。なんか一昔前に流行ったタレ何とかみたいになってんだけど。
「子守させちまったみたいですまんな。ほれ、ご要望の生姜焼きだ。既に俺が作るより旨いけど、まだまだ改良の余地が有るとも言ってたから楽しみにしとけ」
「クックックッ・・・益々持ってここを離れられなくなるな。ワハハハハ!」
「ほれ、鈴華起きろ!晩飯だぞ!」
「ん~・・・・・あ、とうさま、おはようです」
寝ぼけ眼の鈴華をカルヴァドスの頭の上から抱き下ろしてリビングへと向かった。
夕食を食べ始めた時、家の扉が開いてヒースとニックが駆け込んできた。
「ほ、本当だ・・・ジン兄さんが帰って来てる・・・・・」
「ジン兄さん!お、俺・・・俺さ・・・もう、二度会えないかもって思ってた・・・よがった!よがっだあああぁぁぁぁ・・・・・!!」
「おいおい、必ず帰るって言ったじゃねぇか。俺がそんな詰まらねぇ嘘つく筈ねぇだろ。それに、嫁さん放って来たらダメじゃねぇか」
泣きじゃくる二人の頭を撫でて鈴華とベルを紹介し、五年振りに兄弟全員が揃った夕食を摂った。出会ったばかりの頃、ミゲル達に絡まれた時の懐かしい話で盛り上がった。
「それじゃ明日も早いし俺達は帰るね。午前中にジン兄さんが訪ねて来るってバートさんに伝えとくよ」
「おう、宜しく頼むな。じゃ、おやすみ」
「「おやすみ」」
ヒースとニックを門の所まで見送る。こいつらも所帯を持ってすっかり一人前になったなと、嬉しくも寂しい気持ちで門を閉めて家に入った。
久し振りの自分の部屋で親子三人川の字になって眠りに就く。マリーと二人で旅をして鈴華が生まれ三人になった。ベルと出会って四人になって一年ちょっと楽しくも慌ただしい旅を続けて漸く帰って来れた。この五年を振り返りつつ今日と言う幸せを噛みしめて眠りについた。
* * *
「何度言ったら解るのですか。今ここで選択を誤ればこの国は滅亡するのですよ!彼に許しを請い助力を願う、これ以外に生き残る術は有りません!
「ですから、それが間違っていると申しておるのですよ、聖下。そもそも、あ奴がマリーベルを誘拐しなければこのような事態に陥らなかった筈。彼を捕え、マリーベルを擁してオクタヴィス領を取り戻す。そこに何の問題が有ると言うのです」
「左様、全てはあ奴が元凶。奴には罪を償って貰わなければ、レスター殿も浮かばれませぬ」
教皇が招集した会議はジン達が眠りに就いた後も続いていた。リヒテル・オクタヴィスに追従した者達が保身のために全てはジンがマリーベルを連れ去った事が原因と言う姿勢を崩さなかったためだ。そして、自分達は罰金を払う事で罪を償ったと。
「解りました。これ以上の議論は無駄でしかありませんね・・・残念です。近衛隊!この者達を捕縛しなさい!!」
「「「「「なっ!!」」」」」
「せ、聖下、流石にそれは横暴かと思われますが・・・・・」
「何ですか、あなたも囚われたいと言うのですか?この者達はこの国を滅ぼそうとしているのですよ!それが何故解らないのです!!」
その場に居た全ての貴族達だけでなく命令された近衛達でさえもがおろおろと狼狽え出した時、これまで教皇の背後に控えていたラインハルトが動いた。
「聖下、当主会議と言う事でここまで控えておりましたが、これ以上はこの国の分裂にも繋がりかねません。国防を担う騎士団長としての発言をお許し下さい」
「ふぅ・・・少々頭に血が上っていたようですね・・・・・良いでしょう、あなたの、騎士団長としての見解を聞かせて貰えますか」
「では、先ずはこちらを御読み下さい」
ラインハルトならばジンに不利になるような事を言う筈は無いと言う思惑も有って発言の許可を出した教皇に、ラインハルトは本のような物を二冊テーブルの上に出した。
「これは、本・・・ですか?表紙に何も書かれてませんが・・・・・・・・・・なっ!こ、これを何処で手に入れたのです!まさか・・・このような事が・・・・・」
「それは・・・レスター殿に託されたオクタヴィス家の歴史・・・いえ、この国が犯してきた罪の記録の原本とその写しになります。ジンが帰って来た時に役に立つだろうと、その時が来たならば使うようにと渡されました。今がその時かと」
淡々と語るラインハルトの言葉が聞こえていないかのように読み続ける教皇の額から汗が流れ落ちた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




