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「ちょっとカルヴァドスに土産を渡して来るから先に食べててくれ」
「とうさま!わたしもカルヴァドスさまとお話ししたい!」
「ははは・・・鈴華はご飯食べ終わってからな。ライエルのご飯は俺のよりずっと美味しいぞ~」
「ほんとに?!ライエルさますごい!」
「いや~ほんとにそうだと良いけど。はい、どうぞ」
食べ始めた皆の笑顔に頬を緩ませて裏庭へと向かった。律儀にも五年間ここに居てくれた事のお礼をしないとな。
「来たか。土産話、聞かせてくれるのであろうな」
「ああ、その前に。ここを護ってくれてありがとな」
「気にするな。我はここに居ただけで何もしてはおらんよ。寧ろ旨い飯を作ってくれたライエルには感謝しておる位だ」
「それでもさ。喩え出て行くにしたってお前を止める事の出来る奴はいないだろうし、何時でも出て行けただろ?」
「クックックッ・・・そうでもないぞ。それ程までにライエルの飯は美味かったのでな」
「まぁ、そう言う事にしとくよ。それで土産なんだが、マリーの出産で暫く厄介になってた村の近くの山でちょっと変わったトロール見つけたんで狩って来たぞ。お前トロール好きだったろ」
山の奥に肌の青いトロールが居たんで乱獲して来たんだよね。
「おお!!それは中々気の利いた土産だな!この辺りにはトロールを狩れる者が居ないようで、とんと食べておらんのだ。で、勿論調理はしてあるのだろうな?」
「当たり前だろ。カツも有るけど、新しい調味料を手に入れたんで幾つか試しに作って来たから気に入ったのが有ったら言えよ、ライエルにも教えとくから」
バッグから料理を出してカルヴァドスの前に置くと、次から次へと平らげて行った。
「どれもこれも捨て難いと言うか、どれも気に入ったので全てライエルに教えておいてくれ」
「残りのトロールの肉もライエルに渡しとくよ。それでだ、その山にな、ドラゴン・・・お前と同じ存在が居たんだけど・・・如何する?会いに行ってみるか?そいつは山を下りる気は無いって言ってたから、お前から行くしかないんだけど」
カルヴァドスとは違って青白いドラゴンが居たんだよね。そいつは好奇心が無いって言うか、すごく冷めた感じの奴で同族にも興味が無いって言ってたんだよね。
「ふむ・・・・・会って見たい気もするが・・・我もここを離れたくないのでな、暫くは止めておこう」
「何だ、お前なら『ちょっと行ってくる』とか言って会いに行くと思ったんだけどな」
「出かけている間の飯は如何するのだ!ライエルを連れては行けんだろうが!」
「飯基準かよ!!ま、好きにしたらいいさ」
顔を見合わせ笑い合い。夕食は生姜焼きにしてくれと言われてリビングへ戻った。
「かあさま、ライエルさまはおりょうり上手ですねぇ。あたし、こんなおいしいお菓子はじめて食べました!」
「そうねぇ、私もあの人から教わったけど、ここまで美味しく出来ないわ。やっぱり本職の人は凄いわね」
「いやぁ、毎日必死になってただけですよ」
食後のお茶をしながら歓談している皆を見て、上手くやっていけそうだと胸を撫で下ろした。雑談に混ざり昼食を摂りながら他のメンツが如何しているのかも聞いた。
ニックがケビンさんの娘のミリアちゃんと、ヒースが宿屋の娘のノーラちゃんと結婚してこの家を出たと。
ミゲル達は相変わらず南のクランゼル領を行ったり来たりしていて、魚貝類はバート商会の看板商品になっているのだそうだ。今では売店の売り上げを超えてエデン商会の稼ぎ頭なのだとか。
「そうか、あいつらにも礼を言わなきゃな。冷凍馬車の具合はどうだ?故障とかしてないか?」
「それは大丈夫。アルバートさんが時々改良も兼ねて点検してるから。なんか冷却効率の上がる比率を見つけたとか魔力消費を抑えられる組み合わせとか?技術的な事は良く解らないけど、結構改良されてるみたい」
「なんかちょっと聞いただけでも凄そうな人ね。あたしも早いとこあのボンボンを倒して紹介して貰わないとだわ」
「俺も挨拶と礼序にバイクの整備を頼みに行かないとな。ベアリングにガタが来始めてんだよなぁ」
突貫で作ったにしては良く持った方だと思う。アルバートさん所の職人はこの世界で一、二を争う腕なんだろうな。
「そういや、表に置きっぱなしだったな。裏に回さないと」
「いいよ、そのままで。って言うか、使わない時は店の横に置いて欲しいんだよね。世界で一つ、しかもジン兄さんにしか使えない物なんでしょ?良い客引きになると思うんだよね。アルバート商会の宣伝にもなるし」
何かライエルがすっかり商人の考え方になってて笑えた。
「じゃぁ明日はバートさんとか南地区で世話になった人達に挨拶に行って、その後は西地区。帰りに商業組合にでも顔を出すかな。組合長は相変わらずか?」
「相変わらず・・・でも無いかな。以前のがめつい所が少なくなったって言うか、商人としては普通になった的な?新人に厳しくしつつ育ててるって感じかな。それで利用者も増えてるみたいだよ」
あのおっさんも俺が居なくなって実入りが減った事で意識改革が出来たのかもしれない。そう言や、一月以上取引内容の開示をしてなかったし丁度良いかな。
「ごちそうさまでした。ライエルさま、とってもおいしかったです!」
「お粗末様。喜んで貰えて良かったよ」
「とうさま、カルヴァドスさまのところに行ってもいいですか?」
「ん?ああ、構わないぞ」
「わ~い!いってきま~す!」
「なんて言うか、物怖じしない子よね・・・・・」
裏口に駆けて行く鈴華の背中を見ながらミリーが呟いた。
「まぁ、もっと小さい頃から俺が魔物退治する所見てるし、話を聞いてからずっと会いたいって言ってたしな」
「子供らしいと言えば子供らしいのかな。時々カルヴァドス様に会いに来る子とか居るし」
「あれは怖いもの見たさって言うか、度胸試しじゃない?あの子のとは全然違うわよ」
ミリーとライエルの会話を聞きつつも、この平穏な日常を手に入れるために、この国の市民権を手に入れるための方策を練る俺だった。結局は貴族連中と教皇次第なんだよなぁ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




