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「それじゃ、兵士の方はしっかり通達しといてくれよ、余計な犠牲は出したくないし。それと町の方は如何なってる?宿屋が空いてたら泊まりたいんだけど」
「うむ、任せてくれ。あ~残念だが町の方には避難命令が出ている。残っている者もいるが、宿屋はやっておらんだろう」
「ベル残念だったな、もう一晩我慢してくれ」
「ま、しょうがないわね」
席を立って椅子を仕舞って外へ出た。町の手前でテントでも張ろうと移動を開始。ガルバデスの命令で早馬が俺達の横を抜けて行った。テントは一番デカい奴にするかな。
「ジン、その男は何者だ?お前が連れていると言う事は、何かしら理由があるのだろう?」
「ん?ああ、ベルの事は詳しくは話せないけど、魔道具職人見習いだ。アルバートさんに紹介しようと思って連れて来たんだ」
「ちょっと、人の事詮索しないで頂戴。あたしは疚しい事なんて何も無いわよ」
「ああ、すまない。戦時中なのでな、職業柄気になってしまったのだ。まぁ他意は無いので気にしないでくれ」
「あっそ。って言うか、あんた何時まで付いてくるつもりよ。あんたが居たら寛げないじゃない」
「おい、ベル。そう邪険にする事も無いだろ。こいつなら俺達に危害を加えるとか無いから、心配すんな」
「ジンはあたしが貴族嫌いなの知ってるでしょ?幾らあんたの友人だからって、あたしにとっては他の貴族と変わらないんだから」
こいつの身の上を考慮すれば解らないでもないけど、そこまで嫌わんでもと思うんだよね。まぁ、俺に如何にか出来る訳じゃないし、自分の中で折り合い付けて行くしかないんだよな。
「ふむ・・・そなたの主張は解った。だが、もう少し柔軟な発想を持った方が良いな。確かに私は貴族だが、身分で人を差別したり虐げるような真似はした事は無い」
「ふん、どうだか。あんたがそう思ってるだけなんじゃないの?実際上から目線の話し方だし」
あれ?なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。お互い睨み合ってるし。
「・・・見た目と違って器は小さく視野も狭いのだな。それに、貴様に口調の事で人に如何こう言う資格は無いと思うが?」
「言ってくれるじゃない・・・・・かっこつけて先陣切って飛び出しといてやられそうになってた癖に」
あ、これあかん奴や。二人を戦わせるつもりだったけど、ガチでやらせるつもりは無かったんだよね・・・・・なんかエスカレートしてきたし、無理っぽいなこれ。
立ち止まって睨み合う二人と、おろおろとしだしてハル達と俺を交互に見るハルに付いて来た騎士達。俺は止めねぇぞ。まぁ、流石にやり過ぎるなら止めるけど。
「・・・お前達は下がっていろ。私はこの頭の中まで筋肉で出来た男を教育してやらねばならんのでな」
「ハン!あんたみたいな優男に出来る訳ないでしょ!その人を見下した喋り方が二度と出来ないようにしてやるわ!」
ハルが外した武具を持って騎士達が下がると、ベルが腰を落としたレスリングスタイルで構えた。対するハルは・・・ん?左半身の自然体って、滝沢流か?
「おい、ベル!ちょっと待て!ハル、滝沢流だろそれ、アキラに習ったのか?」
「フッ・・・習ってなどおらん。アキラとの稽古で嫌と言う程転がされたのでな・・・自然と身に付いたのだ」
マジか。こいつホントに才能だけは有るんだよな。つーか、ドヤ顔で転がされたとか自慢すんなよ。
「ジン、何だか知らないけど止めないで頂戴」
「まぁ、このままじゃお互い収まりがつかないだろうから良いけど、やり過ぎるなら止めるからな」
ニヤリと笑い、身体を揺すってフェイントを掛けながらジリジリと間合いを詰めるベルと脱力した状態で迎え撃つ姿勢のハル。
「ベルさまがんばって~!」
緊迫した空気をぶった切って鈴華の声援が飛ぶと同時にベルが飛び込んだ。胴タックルだ。ハルがどの程度滝沢流が使えるのか知らないけど、返せるのか?
飛び込んで来たベルに合わせてハルの膝が跳ね上がる。ベルは膝を受け止めそのまま脇に挟んだ。が、ハルの肘がベルの背中に突き刺さった。
「グッ!・・・クックックッ・・・つぅ~かまぁえた~・・・おらあああああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・とおぉべやあああぁぁぁぁ・・・・・!!」
「うおおおぉぉぉおおおぉぉぉぉ・・・・・!!」
ベルはハルの肘を耐えて掴んだ膝を離さなかった。そして、そのままもう片方の足を掴むと自分を中心に回り始めた。ジャイアントスイングだ。身体強化を掛けたベルが回転速度を上げて行き、その手からハルが放たれ水平に飛んで行った。
「「「「「団長おおおぉぉぉぉ!!」」」」」
ハルは受け身も取らずにゴロゴロと地面を転がった後動かなくなった。が、ベルも目を回して倒れて動け無くなった。痛み分け・・・か?
意外にも先に立ち上がったのはハルだったが相当効いているのか、ふらふらと足取りが覚束ない。ダメージはハルの方が上だから、先にベルが起きると思ったんだけどな。あ、ベルも起き上がった。けど、こっちも真っ直ぐ歩けて無い。回り過ぎたな。実は投げたんじゃなくて目を回して手を離しただけなんじゃね?
お互い相手を視認するとふらふらと近づいて行き殴り合いが始まった。けど、足に来ているのかどっちも手打ちで腰が入ってない。これなら止める必要も無いかと暫く眺めていたら、同時に放った拳がお互いの顔面に突き刺さって二人共仰向けに倒れて終了となった。
「お~ラインハルトさまもすごいね~。あたしベルさまと同じくらいつよい人はじめて見た!」
「俺も驚いたよ。この五年間相当鍛えたんだろうな。凄い成長振りだよ」
ハルの成長振りに驚きつつも、どんだけ晶に転がされたんだよこいつと、呆れる俺だった。さて、テントでも張って晩飯の用意でもするかね。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




