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カルヴァドスが齎した『ジン・マキシマの帰還』の報はその場に居た客達によって聖都中に瞬く間に広まった。そして、クランゼル家からの報告により、ガルバデスからの早馬よりも早く教皇が知る事となった。
「そうですか・・・この知らせは良い知らせなのか悪い知らせなのか・・・・・貴方は如何思います?アンジェリカ」
「それは父上の選択によって大きく変わってきますので何とも・・・・・」
「そうですか・・・貴方は如何です?ロベルト」
「私も姉上の言う通りだと思います」
「良いですか、事と次第によっては貴方が後を継ぐのですから良く考えておくのですよ・・・おそらく私は退位する事になるでしょうから・・・・・」
五年前のあの日、恐怖に駆られた貴族達を纏める事も出来ず暴走させてしまった事。政務に深く関わる者達を処断出来ずに罰金で済ませてしまった事に、アーヴァインは心を痛めていた。ジンに許しを請い助力を願う。そしてこの国を救って貰えるならば、自らの命を差し出す覚悟も出来ていた。
「主よ・・・如何か我を正しき道へとお導き下さい・・・・・」
* * *
「おうおう、こいつは大した歓迎っぷりだな」
聖皇国軍の陣地へと近づいて行くと、次から次へと兵士達が出て来るのが見えた。まぁ、場合によっては敵になるって宣言した訳だし、当然か。
人垣の中央が割れ、ハルとガルバデスが歩いて来るのが見えてバイクを止めた。ハンドルの上に両肘を付き、身を乗り出すように構えて二人の出方を待つ。戦う事になるなら少し戻って平原にでも向かうかな。
「お久しぶりです、ジン殿。先程は我等の窮地を救って頂き有難う御座います。このような場所では何ですので、宜しければあちらでお話をと思っているのですが、如何でしょうか?」
「ああ、そいつは構わねぇぜ。但し、向かって来る奴は一人残らず潰すけどな」
「その心配はご無用です。全員下がって交代で休息を取れ!!彼らに手を出す事は決して許さん!!では、こちらへ」
バイクに乗ったままガルバデスとハルの後に続いた。兵士達は一部を除いて幕舎へと入って行く。俺達を遠巻きに見ている兵士達の中に怪訝な顔をした者が多いのは、俺がマリーを連れ去ったせいで国が窮地に陥ったと思っているからだろう。
バイクを降りて荷車の扉を開き、鈴華を抱き上げて幕舎へと入った。勿論マリーとベルも一緒だ。
「む、椅子が足らんか・・・今お茶と共に用意させよう」
「ああ、必要ない。家財道具の殆どは鞄に入れてるんでね。ほれ鈴華、挨拶しな」
「はい、とうさま。はじめまして、スズカ・マキシマともうします」
「おお、ジン殿のお子か。まだ幼いと言うのに良く出来た子だ」
「えへへ・・・ありがとうございます」
「うむ・・・それと後ろの御仁。そう警戒せんでも不意打ちなどせんでな」
「ベルフォードよ。気軽にベルって呼んで頂戴・・・そう言われても敵地のど真ん中に居るようなもんじゃない。今もこそこそ聞き耳立ててる奴もいるみたいだし落ち着かないわよ。ああ、この喋り方は癖みたいなもんだから気にしないで」
「おめぇはデカい図体の割に神経質だからな。まぁ座って話をしようぜ」
ベルの「敵地のど真ん中」発言に苦虫を噛み潰したような顔をしたガルバデスを無視して、椅子を出して腰掛けた。鈴華はマリーの膝の上だ。
「さてと、俺からの要求は言わなくても解ってるだろうけど一応言っておく。『俺達の行動を阻害しない』事だ。勿論犯罪行為は該当しないから心配すんな。尤も、俺を止められる奴が居るとは思えないから、その辺は信用して貰うしかないけどな」
「それは・・・私の一存では何とも・・・・・」
「だろうな。それが解った上で言ってる。だから部下の手綱はしっかり握っとけ。俺達に敵対行動を取った奴は容赦無く潰す。あんたら貴族と違って連座とかは基本しないから、そこだけは安心しとけ」
「とても安心出来る状況ではありませんが、私の手の届く範囲でなら・・・とお答えしておきます。それで王国軍の方は如何なりましたか?」
「きっちり警告して撤退させた。が、国王に判断を仰ぐと言ってたし、それでも侵攻は止めないだろうとも言ってたから、近い内にまた来るだろうな」
「そ、そうですか・・・・・オクタヴィス領は如何なります?取り返す事は可能でしょうか?」
「さっきも言ったが、お前達は負けたんだ。オクタヴィス領はロードルデルフのもんだ。王国軍にこれ以上の侵攻は許さないと言った以上、聖皇国軍の侵攻も許さない。つーか、お前等じゃ取り返せないだろ?俺から手を出す気は無いが、侵攻すると言うのなら王国軍だろうと聖皇国軍であろうと俺が潰す」
「・・・・・あ、あの地は・・・我が国の物ではありませんか・・・・・」
「違うな。今はロードルデルフ軍が勝ち取った物だ。そもそも、お前達は大きな勘違いをしている。如何言う経緯が有ったかは知らないが、大元を辿ればマリーの先祖が護ってきた土地だから所有権はマリーが持つべきだ。何の罪も無いマリーの先祖の自由を奪って奴隷のように使って来たんだろ?返して欲しければ建国以来の罪を償ってからにしろ。それが筋ってもんだ、違うか?」
建国から千五百年とか教皇が言ってたし、賠償金とか払えたもんじゃないだろうな。解ってて言ってんだけど。ガルバデスは血の気の引いた顔をして俯いてるし。
「ま、勝てない戦なんて人的資源の無駄でしかないから止めとけ。お前等は見張りだけして、奴等が動いたら俺に知らせりゃ良いんだよ」
「しかし・・・一人で抑えられる数とは到底思えませんが・・・・・」
「何言ってんだ、実際に抑えたじゃねぇか。あれだけ解り易く‶力〟を示して尚襲って来るなら、そいつはよっぽどの馬鹿か‶力〟の持ち主だけだろ。ま、武術と魔術、どっちも俺に勝てる奴なんて、あちこち回って来たけど見た事も聞いた事も無いけどな」
「それは・・・確かに。それで、やはり聖都に行かれるので?」
「そりゃ勿論だ。ここまで来てあいつらの顔見ないとか有り得ないだろ。それに、教皇とも話しをしないとだし、明日の早朝には向かうよ」
「解りました。では、知らせを出しておきます」
取り敢えず軍の方は抑えてくれるみたいだし一安心だな。
「父上、明日は私も同行しようと思いますが、宜しいでしょうか?」
「む・・・どうせ言っても聞かんのだろう?好きにすると良い」
「有難う御座います。では、五名程連れて行って参ります」
そんな訳で明日はハルを含めた六名の騎士を護衛に連れて聖都へと、エデン商会の皆の下へ帰る事になった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




