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マリー達の下へ戻ると何やら騒がしい。如何やらベルが魔物相手に戦っているみたいだ。
「どっせえええぇぇぇい!!舐めんじゃないわよ!!おらあ!!」
「キャー!ベルさまがんばって~!」
なんかベルがホワイトネックベアをバックドロップで投げた後にストンピングかましてた。こいつでかいからプロレス技が映えると思って仕込んだんだけど、予想以上に似合っててさ、ベル自身も気に入っちゃって、元々使ってた剣も最近じゃ余程の事が無い限り使わなくなったんだよね・・・・・後でハルとやらせてみるか・・・面白そうだし。
「ただいま~。ベル、ご苦労さん」
「あら、早かったじゃない。てっきりお友達とのんびりお話ししてから帰って来ると思ってわ」
「そいつは移動先でだな。おそらく聖都の手前の町に居るだろうし、ハル以外にもガルバデスとも話がしたいしな」
「それじゃ今夜は宿屋でゆっくり出来るのかしら?あたし、いい加減荷車で寝るのきつくって」
「どうだろ?住人は避難してるかもだし、期待しない方が良いんじゃねぇの?」
「とうさま、せいとにはまだ行かないの?あたしカルヴァドスさまに早くお会いしたい!」
「もうちょっと我慢してな。きっちり話を通しとかないと、聖都に入る事も出来ないだろうからさ」
「はぁ~い」
鈴華の頭を撫でてからバイクに跨り、ベルが荷車に乗ったのを確認してから聖都の手前の町へと向かった。因みにこの荷車は箱馬車を改造した特注品で、御者台は無い。サスは付いているがベアリングを再現出来る鍛冶師には会えなかった。そして、内部の天井付近がロフトのように仕切って有り、ベルはそこで寝ているのだ。こいつでかいから全員並んで寝らんねぇんだよ。尤もロフトもそんなに広くないから、しょっちゅうぶつかってるけど。
* * *
私が部隊を率いて町の手前の陣地に着き、父上の居る幕舎へと入った時、父上は項垂れて独り言を言っていた。
「一体ジン殿は何を考えておられるのか・・・・・このままでは我が国はロードルデルフ王国に飲み込まれてしまうと言うのに・・・・・」
「父上、彼は只家族と共に平穏に暮らしたい、それだけを願っています。五年前のあの件で誰一人怪我を負う事すら無かったのは彼が争いを好まないからです。本来ならあの日、この国は無くなっていても不思議ではありません」
「・・・・・戻ったか、ラインハルト。部隊の損耗は如何だ?」
「幸い死者並びに重傷者はおりませんでした。一番酷い者でも三日から五日も有れば問題なく動けるようになるかと。しかし、この先我らの出番が有るとは思えませんが?」
「何を言っている、オクタヴィス領を奪還せねばならぬであろう?」
「それは不可能かと。ジンの性格からして、どちらの軍も侵攻する事は許さないと思います」
「なっ!ほ、本当に何を考えておるのだ・・・全く理解が出来ん・・・・・」
父上は両肘をテーブルに付き、頭を抱えて項垂れてしまった。
「父上、ジンは何処の国にも属していないのです。戦場となった平原は彼が制した以上、最早我が国の領土と思わない方が良いです。少なくとも私は彼と事を構える気は有りません。喩えそれが聖下の命でもです。我々は彼に負い目が有ります。聖下を含めた全ての貴族が頭を下げてでも助力を乞うべきではありませんか?」
「そのような真似が出来る物か!!貴様騎士の本分を忘れたか!!聖下に頭を下げさせるだと?!馬鹿な事を言うな!!」
「父上こそ五年前のあの日をお忘れですか?彼が何故国を追われる事となったのか。ジンが一体何をしたと言うのです?私にとって彼は恩人であり友人で、この国に多大な功績を残した英雄です。父上は彼が罪人だとでも仰るおつもりですか?」
「そ、それは・・・・・」
「彼と過ごした日々は短かったけれど・・・・・本当に・・・本当に他愛のない会話の中で心から幸せそうに笑うのですよ・・・彼が望んでいるのはそう言った有り触れた日常だけなのです。それさえも望んではいけないと言うのですか?!お答え下さい!父上!!」
今こそ恩を返す時だと、喩え国を敵に回す事になったとしても退く訳にはいかなかった。父上も、聖下も説得して見せる。邪魔する貴族連中が居るのなら全て切り捨てる覚悟と気迫で父上の目を真っ直ぐに見つめて詰め寄った。今の自分が在るのはジンのお陰なのだから。
* * *
「有難う御座いました。次の方どうぞ」
聖都のエデン商会では特に変わりなく営業を行っていた。勿論ロードルデルフ王国軍が攻めて来た事は聖都の全ての人が知っており、店を閉めたり聖都を出た者も少なく無いがここだけは別世界のようだった。それも全員がカルヴァドスなら必ず守ってくれると信用しての事だ。
「二人とも、そろそろお昼だから切りの良い所で交代で食べちゃって」
「「はぁ~い」」
そろそろ昼に差し掛かろうと言う時、屋敷で子供の世話をしていた晶が慌てて表に出て来て声を上げた。
「おい、みんな!朗報だ!!ジンが近くに来てるってカルヴァドス様が知らせてくれたぞ!!」
「「「えっ!!」」」
「アキラ様、その話は本当なので?」
驚きの声を上げるライエル達。そして東屋に居たクランゼル家のオリビアが晶に確認しに近付いて来た。
「ああ、本当だとも!直ぐには無理かもしれないが、近い内に必ず帰って来る事になるぞ!!クックックックックッ・・・ライエル!何時でもお祝い出来るように準備は頼んだぞ!!」
「ぁっ・・・・・う、うん・・・解ったよ・・・・・今の俺に出来る最高の料理を用意しないと・・・・・」
「もう・・・何泣いてるのよライエルったら・・・・・」
「そう言うお前達だっで・・・ないでるじゃねぇがああぁぁぁ・・・・・」
「・・・・・私、父上と母上にご報告して参りますね・・・お爺様とお婆様にもご連絡差し上げねばなりませんし。ヨーハン、帰りますよ」
「はい、お嬢様。皆様、後日私からもお祝いの品を持ってご挨拶に伺わせて頂きます。では、失礼します」
目尻に涙を浮かべてオリビアとヨーハンが帰って行く。この日は最早営業所では無く、早々に閉店となったのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




