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ジンとマリーベルがメルクリウス聖皇国を出てから二年後。突如ロードルデルフ王国が挙兵し、周辺国へと侵攻を開始した。
大陸一の強国と言う事と百三十年に渡り平和で有った事。そしてどの国も国内整備を進め、国を豊かにすると言う風潮からくる兵士の弱体化が災いし、次々と敗れ属国化して行った。
そして更に三年後。ロードルデルフ王国よりメルクリウス聖皇国に密書が届いた。その内容は『聖地を明け渡せ』と言う一方的な無条件降伏に等しい内容だった。
これに対し教皇アーヴァイン・ハラルドルは密書を破り捨て、ガルバデス率いる騎士団と聖都の守備隊、合わせて三千五百名をオクタヴィス領に派遣し防衛に当たらせた。
聖都南地区エデン商会。
「それでは如何有っても力を貸して頂けないと?」
教皇アーヴァインはカルヴァドスに助力を求めに来たが、望む答えは返って来なかった。
「当たり前であろう?我とそなたの約定は『聖都を自由に見て回れる代わりに街の住人を護る』事の筈。何故我が人の争いに加勢せねばならんのだ。そもそもジンとの約定が無ければこの街の住人ですら・・・いや、この家の住人以外護る義理など無い」
「ですが、この街だけが残っても国としては成り立ちません。いずれはロードルデルフ王国に飲み込まれてしまいます」
「だから何だと言うのだ?国が変わったとて民は残る。そなたら皇族貴族が入れ替わるだけであろうが。そもそもジンを追い出して我の楽しみを奪った後、そなたらは我に何かしたか?食事の世話はライエルが、食費はエデン商会が出しておる。そなたらが僅かでも食費を出すなりしておれば考えんでも無かったがな」
人とドラゴンでは価値観が違う事を身を持って知る事となった。
「フン・・・いっその事、ジンを追い出した貴族連中にでも戦わせるのだな。あ奴が居ればまた違った結果になっていたであろうが」
この一月後、オクタヴィス領の領都がロードルデルフ王国軍の圧倒的物量により陥落。聖皇国軍は撤退戦を強いられ、殿を務めたレスター辺境伯は行方不明となった。
ロードルデルフ王国軍はオクタヴィス領を拠点に兵と物資を集め更に進軍。対する聖皇国軍は聖都から半日程の町とオクタヴィス領の境に陣を引き迎え撃つ構えを見せる。
「良いか!ここを抜かれれば聖都は包囲され完全に孤立する事となる!!国を、民を護るは我等が使命!!この戦いは神から賜りし試練!!神をも恐れぬ不逞の輩に神罰を与えるのだ!!正義は我等に有り!!」
「「「「「主よ我らに御加護を与え賜え!!」」」」」
各領地から集まった兵を合わせて聖皇国軍は総勢八千。対する王国軍は二万に届こうかと言う総数だった。防衛とは言っても砦が有る訳でもない平地戦においてこの差は絶望的だったが、兵士達の士気は高かった。
そして太陽の上り切った頃、太鼓の音と共に王国軍が侵攻を始めた。
「来たか・・・・・ラインハルトよ・・・そなたの力を存分に振るうがよい!!」
「ハッ!・・・行くぞ!!第一隊は我に続け!!狙うは敵将唯一人!!中央突破だ!これ以上あ奴らに好き勝手させるな!!突撃いいいぃぃぃ!!」
「「「「「うおおおぉぉぉぉ!!」」」」」
* * *
戦場となった平原の切れ間の林の近くに俺達はいた。
「お~始まったな。おうおう、ハルの奴無茶しやがって。しょうがねぇなぁ」
「わ~・・・すご~い。とうさまぁ、あのいちばんまえのの人がお友だちのラインハルトさま?」
この子は俺とマリーの娘の鈴華、三歳だ。
「そうそう、守護騎士なんて呼ばれて良い気になってた面白い奴なんだよ。あれから少しは成長したみたいだけど、そろそろ行ってやるかな。ベル、マリーと鈴華の事頼むぜ」
「解ってるわよ。その代わり報酬は何時もの奴よ」
こいつは旅の途中で知り合ったベルって言って、元貴族の嫡男で魔道具職人見習いだ。因みに本名はベルフォード・ラングレイ。家を継ぐより魔道具職人になりたいが為に、ゲイの振りをしていてお姉口調が染みついてしまった変わり者だが、武術の腕前はそこそこだから俺が離れる事になっても問題は無い。190cmの長身で筋肉の塊と言ったガチムチ系の見た目で、俺も色々仕込み甲斐が有ったよ。
「ははは・・・それじゃ行ってくるよ」
報酬って言っても金じゃない。単にカロリーバーをねだってるだけだ。俺のバイクに興味を持ってしつこくつき纏って来たから、アルバートさんの所で雇って貰えないかと思って連れて来たんだ。
「いってらっしゃい、あなた」「とうさま、がんばって~」
「おう!」
マリーと鈴華の頬にキスをして荷車から降りた。人数が増えたからバイクで荷車を牽引してるって訳。
魔力の炎を纏い宙に浮いて前へと進む。速度を上げ、弓や魔法の届かない高さまで高度をとってから、戦場の中央に居るハルの下へと向かった。
* * *
無謀な事だと解っていた。だが総数で負けている以上、敵将を討つ以外に我等が勝つ事など出来ないだろう事は明白だ。だから父上に進言してこの役を買って出た。今この国で私以外にこの状況を打破出来る者など居ないのだから。
「進めええぇぇぇ!!雑魚共には目もくれるな!!」
敵が多過ぎる。体力を温存するために馬に乗って来たが限界が近い。私達を囲もうとしてきた兵は後方からの支援で何とか防いでいるが時間の問題だろう。ここは私が活路を開かねば。
向かって来る歩兵共を切り捨てて行くが、処理出来る限界を超えて馬が傷を負い速度が落ちてしまった。最早これまでかと、自ら馬を下りて可能な限り敵を減らしつつ前に進んだ。
鎧で槍の穂先を弾いた。いや、交わす事が出来ない程の人数で攻められているだけだ。致命傷だけは避けてはいるが時間の問題だろう。せめて一人でも多くの敵を減らさなければ・・・・・聖下・・・父上・・・申し訳ありません・・・・・
「主よ!どうか!どうか我等に‶力〟を与え賜え!!」
天を仰ぎ声を上げた。このような理不尽な運命が試練と言うのか・・・・・主よ!答えてくれ!!
「おらああぁぁ!!退きやがれえええぇぇぇ!!」
「は?」
心身共に限界がきて膝を付きそうになったその時、頭上から聞いた事の有る懐かしい声が聞こえて来た。
理不尽な運命を吹き飛ばす、理不尽な存在が炎を纏って戦場へと降り立った。
「よう、久し振りだなぁハル。ちっとはやるようになったじゃねぇか」
「・・・・・馬鹿者・・・来るならもっと早く来い・・・・・すまんが後は任せた。私は休ませて貰うぞ・・・もう限界だ」
「おう、任せとけ。まぁ、速攻で終わらすから休んでる暇なんてねぇけどな。ははははは・・・・・」
相変わらずふざけた奴だ。だが、これで全てが終わる。主よ・・・彼を使わして下さった事に感謝致します・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。




