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 聖都を出て三日後。俺達はオクタヴィス領の領都の南門の前に居た。ここに来るまで野営はしていない。金は有り余る程有るし、マリーが慣れない移動で疲れを残して体調を崩すのを避けたかったからだ。


「それにしても本当に早いですね。行きは聖都まで八日も掛かったのに・・・・・」


「これでも速度は控えめにしたんだけどなぁ。思った以上の出来って言うか、じゃじゃ馬振りで魔力操作の良い訓練になったよ」


 ピーキーって言うんだっけ?ある程度の速度を超えると一気にドカンと来てサスが暴れたりして最初は慌てたけど、時速で言うと60km/h位かな?その辺を維持してやれば素直になるって気が付いたんだ。尤も故障されても困るから、それ以上は出さないようにしてたけど。


 マリーと手を繋いで街へと入る。俺は何時もの服装だけど、マリーはメイド服じゃなく普通の服だ。写真の無いこの世界で俺達の顔を知る者なんて領主関係者位だろう。門でも街中でも俺達を止める者はいなかった。


 街の中心付近で普通に宿を取ってその日は就寝。領主の所には明日お邪魔するつもりだ。


 で、翌日。朝食を取ってからいざ出陣。堂々と大通りの真ん中を通って街の西側に有る領主館へと向かう。流石に館が近づいて来るとマリーの事を知ってる衛兵が居て、慌てて領主館へ知らせに行くのが見えた。


 領主館が近付いて来る。衛兵がわらわらと出て来るのが見えた。俺はマリーを少し下げて魔力の炎を纏った。


「そこまでだ!二人共大人しく投降せよ!」


 一際豪華な鎧を着た衛兵が・・・って、あいつバカ息子の護衛してた奴じゃん。って事は、帰って来てんだな。聖都で貴族達を焚き付けたのはこいつらじゃないのか?


「おいおい、随分な歓迎っぷりじゃねぇか。俺は言っておいた筈だぜ、オクタヴィスの領主に会いに来るってな」


「フッ・・・今の領主はリヒテル様だ。貴様には抹殺命令が、マリーベルには捕縛命令が出ている。周囲は既に包囲した。あのドラゴンを連れて来なかった事を後悔するんだな」


 護衛の男はそう言うと俺達に向かって首輪を二つ投げて来た。マリーが付けられていた自由意志を奪う奴だ。


「あ?てめぇ・・・何のつもりだ?」


「リヒテル様からの慈悲だ。自らの手で嵌めれば命だけは助けてやる。尤も貴様は『命だけ』しか保証はせんがな。そしてマリーベル、貴様は我々領主軍の専属娼婦としてオクタヴィス家を裏切った罪を償って貰う!勿論その子孫にも未来永劫な!!ハハハハハ!!」


 奴の笑い声に頭の血が下がり冷静に・・・いや、怒りを通り越して感情が消え失せた。


「・・・・・マリー・・・目を閉じていてくれ・・・これから起こる事を見せたくない・・・・・」


 俺は魔力の炎を消し、背負っていたバッグを下ろしてファスナーを開けた。


「いいえ・・・私の為に貴方がしてくれる事ですから・・・私は・・・私は何が有っても目を背けません」


「そうか・・・有難うマリー・・・愛してるよ。何が有ってもお前を離さないし、必ず守るよ。喩え世界を敵に回す事になってもだ」


「何をしている!早く首輪を付けんか!!」


 護衛の男が怒鳴り声を上げた。俺は朧状態になり、ゆらりと立ち上がるとバッグから出した物を構えた。


「・・・・・最初はな・・・仮にも戦士だと思って戦ってやるつもりだった。せめて戦いの中で死なせてやろう・・・ってな」


 俺はそう言って腰だめに構えた銃の引き金を引いた。


 ダララララと言う音と共に銃口から弾丸が放たれ、護衛の男の両膝を吹き飛ばした。


「ぎぃやあああぁぁぁああぁぁぁ・・・・・・!!」


 地面に崩れ落ちた男が喚き声をあげた。


 一歩、また一歩と、前に進む。周囲を囲んでいた兵士達は得体のしれない攻撃に恐慌状態に陥り、腰を抜かして蹲ったり、這い蹲って逃げようとしていたり、慌てて逃げようとして将棋倒しになったりして勝手に自滅したりしていたが如何でも良かった。


 俺はサブマシンガンのマガジンを変え、倒れている男の両腕を吹き飛ばした。飛ばした腕と足に更に弾丸を打ち込んで粉微塵にしてから体を蹴り飛ばして仰向けにして、またマガジンを変えた。


「おめぇみたいなクズを生かしとく理由なんて何一つねぇし、人として墓に入る事すら許さねぇから」


 何の感情も映さない冷めた瞳で男を見下ろし引き金を引いた。男は既に虫の息だったが、弾が無くなる度にマガジンを変え、人であった痕跡すら残らなくなるまで撃ち続けた。望んで、自らの意思で初めて人を殺したが何の感情も沸いてこなかった。


「・・・・・ジン・・・もう、その辺で・・・・・」


「・・・ああ、そうだな・・・まだやる事も有るしな」


 朧状態を解除してマリーに向けて左手を伸ばした。マリーが何の躊躇も無く俺の手を取ってくれたのがとても嬉しかった。


 マリーの手をしっかりと握って領主館へ向かう。俺達の前に立ちはだかる者はいない。兵士達は逃げたし住民達も俺が起こした惨劇に怯えて家に引き籠った。


 領主館の前に居た門番や衛士達も交戦意思は無く、閂のかかった門を閂事蹴り壊して中に入ったが咎める者すらいなかった。


 屋敷に入ると俺達に話し掛けてきた者が居た。初老の白髪交じりの執事だ。


「ジン様ですね?ようこそオクタヴィス家へ。私は執事頭を任されておりますハインツと申します。どうぞこちらへ、領主様がお待ちです」


「あんたは逃げなくて良いのか?つーか、俺が怖くないのか?」


 罠の可能性も考えたが、喩えそうだとしても引っかかりゃしない。取り敢えず案内してくれるようなので付いて行く事にした。


 階段を上がり長い廊下を歩いて行く。執事は何も話さなかったが、突き当りを曲がると二十人程の衛士が待ち構えていた。


「ハインツ!貴様何を考えている!!リヒテル様を裏切るつもりか!!」


「いい加減目を覚ましなさい!!欲に目が眩んで実の親と妹を監禁するような者が領主に相応しいと言うのですか!!御館様が何故跡継ぎに婿を取るとお決めになったのか良く考えて見なさい!!教皇聖下の許可も無く領主を継げる事など無いと何故解らないのですか!!ジン様・・・私は如何なっても構いません。どうか御館様をお助け下さい」


「ああ、なるほど。そう言う事か・・・取り敢えずこいつらには眠って貰うとするか」


 身体強化を全力で掛けて一瞬で衛士達の間合いに入ると次々と殴り倒して気絶させた。そして執事の案内で一番奥の部屋まで進んだ。


「旦那様、お客様をお連れしました」


 執事が扉を叩き、室内へと声を掛けると「お通ししなさい」と返事が有り、執事は扉を開けて俺達に中へ入るように促した。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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