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先ずは街中の衛士達を引き付ける。アルバートさん達が移動し易いようにしないとな。俺が姿を見せる事で馬車を止められ、中を調べられないようにしないと。
「暫く姿を晒して歩く事になるけど、心配いらないから」
「はい。信じていますから、ジンの好きなようにして下さい」
マリーには‶力〟を使わないように言ってある。俺一人で十分と言うのも有るが、俺程手加減が出来ないから、街に被害が出るのを防ぐためだ。
マリーを抱えて塀を飛び越え表通りへと降り立つ。当然衛士達が見張っていた訳で、突然現れた俺達を見た衛士の一人が笛を鳴らすと通りの先から衛士達が集まってくるのが見えた。
「よう、朝早くからご苦労なこったな。たった二人にどんだけ人員割いてんだよ。馬鹿な貴族共に踊らされやがって!てめぇらの主は教皇聖下じゃねぇのか!!伝令を出せ!俺達に危害を加える奴は容赦しねぇ!!死にたい奴から掛かって来いってなあ!!」
全身から魔力を放出し身体を覆うと、衛士達が武器を構えたまま後退した。魔力の炎を纏った俺は背後に付いたマリーと共に悠々と歩き始めた。
「ジンよ、我もそなたが街を出るまで付き合おう」
俺が動き始めた事を察知したカルヴァドスが俺達の背後に降り立った。聖都中を走り回って大立ち回りするつもりだったけど手間が省けたな。
「おお、そりゃぁ良いな。一緒に朝の散歩と洒落込もうぜ」
東から北、西、南と、更に東地区を回って北門へと向かう。
「しかし情けないのう。これだけ居って誰一人として挑んで来んとは」
「そう言うなよ。誰だって死にたくは無いし、俺達に暴れられたら街にも被害が出るだろ。それに活かして利用したいってのも有るんだろうしな」
おそらく首謀者はオクタヴィスのバカ息子なんだろう。人海戦術で何とかなるとか思ってんだろうけど、甘過ぎるんだよ。
「お前のお陰で楽できたよ。帰って来たら旨い飯食わせてやるからそれまで頼むな」
「クックックッ・・・そなたのお陰で眠るだけの退屈な時を過ごさずに済んだのだ、お互い様と言う奴だ。そなたが帰るまであの小僧達の事は任せよ。土産話、期待しておるぞ・・・ハハハハハ!」
話してみれば気の良い奴で、見た目で損してただけなんだよな。思えば出会った人達の殆どは良い人ばかりで、こっちに来て本当に良かった。
「さて、こっからは全力で逃げさせて貰うかね。じゃ、またなカルヴァドス」
「うむ、二人とも壮健でな」
「はい。カルヴァドス様も」
マリーを背負って北へ向かって走り出す。周囲を囲む衛士の壁が割れて道が出来た。一部の者が追って来たが、身体強化した俺に追いつける訳が無い。こう言う時って首謀者とか出てきて喚き散らしたりするのがテンプレなんじゃねぇの?
聖都が遠ざかって行く。一度振り返るとカルヴァドスが門の所でこちらを見ていた。そこまで見送らんでも良いのにと笑みが零れると共に目尻に涙が滲んだ。皆・・・元気でな。
雑木林に入り東へ向かう。出会った魔物は威圧して倒さずにそのまま北東に向かう街道へ出て南の雑木林に。周囲に人の気配は無い。完全に撒いたのでマリーを下ろして遺跡へと向かった。マリーの足でも時間には十分間に合うだろう。
「ジン君!マリーベルさん!ご無事で良かった!」
遺跡に着くと小型の幌馬車が止まっていて、その傍にアルバートさんと他に二人の商会員が俺達を待ってた。
「お待たせして済みません、アルバートさん」
「いえいえ、ジン君が衛士を引き付けていてくれたお陰でこちらが早く着いてしまっただけですから。おい、例の物を準備を。引き渡しの前に幾つか説明を。長距離を乗る事前提の耐久性重視で作ってますが、二輪と言う事も有って四輪の馬車程は持たないかもしれません。その代わり整備し易いように部品点数を増やしているので、それなりに腕の有る鍛冶師か魔道具職人なら修理出来ると思います。こちらは魔力石合金の配合割合になりますので修理が必要な時は使って下さい。そしてこれが一番重要なのですが・・・何処まで魔力を流せるのか解っていません・・・・・限界を超えれば如何なるのか検討すら付きませんから無理だけはしないで下さい」
「解りました。本当に何から何まで済みません。でも良いんですか?合金の配合割合を秘密にしなくて」
「ははは・・・構いませんよ、既に冷凍冷蔵庫で世に出してしまってますからね。近い内に模倣品も出るでしょう。ですが、うち以上の物が作れるなんて有り得ませんし、これからもうちは進歩し続けますからね!では、お引き渡しをしますので会員証を」
会員証を出して支払いを済ませ幌馬車から降ろしたバイクを見る。俺がその場で書いた適当な絵を形にしてくれた。ハンドルが横に長いヨーロピアンクラッシックスタイルだ。エンジンとタンクは無いがトップブリッジから真っ直ぐに伸びたフレームがそのままシートレールになっている。シートは厚めで弾力が有り、長距離の移動にも耐えられるだろう。ブレーキは前後ともホイールを挟み込む自転車のような構造になっておりパッドの交換位なら俺でも出来そうだ。
取り敢えず一人で跨り動かしてみる事に。握ったハンドルから少しずつ魔力を流すと、車体後部、シート斜め下に取り付けられた二つの魔導ジェットエンジンからキーンと言う甲高い音と共に炎が噴き出し、徐々に前へと進んで行った。
遺跡の周りを少し走った感じでは旋回性に問題は有るが移動手段としては申し分なさそうだった。
「如何です?急いで作ったとは思えない出来でしょう?私は何時か馬のいらない馬車・・・魔導車を完成させ、物流に革命を起こすのが目標なんですよ」
「そいつは良いですね。色々な物の値段が下がって生活が豊かになる」
まぁ軍事利用されるのは目に見えてるけど、それも時の流れって奴だ。
「それじゃアルバートさん、無理言って済みませんでした。帰って来たらまた何か頼むと思いますけど、その時は宜しくお願いします」
「私達の為に本当に有難う御座いました」
「ははは・・・何言ってるんですか、ジン君のお陰で商会も大きくなったし目標も出来た。礼を言うのはこちらの方ですよ。有難うジン君。帰って来る時を首を長くして待ってますから」
「それじゃ、行ってきます!」
マリーを後ろに乗せて走り出し、振り返らずに左手を上げて左右に振った。何時、どんなタイミングで帰って来れるかは解らない。今は只前に進むだけで良い。先ずはこの国でやり残した事を片付けないとな。
「・・・・・ジン・・・何処に行くのですか?」
「ん?ああ、先ずは北東、オクタヴィス家に落とし前付けて貰わねぇとな。最低でもリヒテルとか言うバカ息子だけはぶん殴らねぇと気が済まねぇ」
遺跡を囲む雑木林を北へと進み、街道へ出た所で速度を上げる。俺にしがみ付くマリーの温もりが伝わって来て、へらへらとにやけつつ北東へと向かった。タンデム最高!!
ここまで読んで頂き有難う御座います。




