↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/134

62

 夕食後の話し合いは予想以上に荒れた。原因はおそらく俺がこの街、いや、この国を出て行く事になるだろうと言ったからだ。教皇が如何判断するか解らないが、国防の要だったマリーの引き渡しを要求してくるだろう。だが、俺はそんな物に従う気は無い。国を守るのは貴族達と兵士と言う職業に自ら就いた者のする事だ。望んでもいない人殺しを強制するなんて間違っている。だから俺はマリーを連れて逃げる事を選んだ。


「何でだよ・・・この家も、商会もジン兄さんの物じゃないか!ジン兄さんが出て行ったら俺達は如何したら・・・・・」


「ライエル、これからはお前がここを守って行くんだ。実はな・・・この家はエデン商会の物になってる。それに今の代表はお前だ」


「え・・・お、俺が代表?・・・・・・そ、そんなの無理だよ!頼むよジン兄さん!行かないでくれよ!俺、ジン兄さんが居るから頑張れたんだよ・・・・・」


「おいおい、俺に噛みついて来た気概は如何した?バートさんから仕事を貰って来た時『今まで俺が皆を守って来たんだ!俺にやらせてくれよ!』って言ってたじゃねぇか。思い出すんだ、あの頃の気持ちを。物理的に守るのはカルヴァドスが居るし、困った事が有ったら商業組合の支部長とかバートさんに相談しろ。使える者は何でも使って守るんだ。俺が・・・俺達が何時でも帰って来れるようにな」


 まだそうなると決まった訳じゃない。ハルの帰りと教皇の出す答えを待とうと言う事で落ち着いた。晶も残ってくれると言ってくれたし、ミゲル達の帰りは・・・間に合わないだろうけど、残ってくれると信じてる。


 で、就寝となった訳だが・・・お互いその手の知識はあったが、初めて同士だったので中々上手くいかず、なんとも締まらない初体験となった。




 夢を見た。


 運命に引き裂かれた恋人同士が再び出会う、ありふれた物語だった。


 男は再び会うために幾千もの時を超えて星界を渡り歩き、運命を変えるための答えを探し続け、諦める事無く抗い続けた。


 女は再び会える事を信じ、必ず迎えに来てくれると世代を超えて待ち続ける、そんな物語だ。


 主よ、そなたと言う存在に出会えた事で私の願いは成就した。ここから先、私が運命を左右するような力を行使する事はない。そなたの信じる道を行け。さすれば必ずやそなたの望む物が手に入るであろう―――


 目を覚ますと目の前に居るマリーの目が開いた。


「・・・・・夢を・・・夢を見ました・・・・・とても・・・とても幸せな・・・・・時を超えて出会った私達が、子をなして只暮らして行くそんな夢でした」


「おはよう、マリー。俺も見たよ、多分正夢だ」


 神の如き存在のお墨付きだ、俺が俺らしく行動すれば必ず叶うだろう。


「皆、大丈夫だ。必ず帰ると約束するよ」


 塞ぎ込んだ表情の皆に声を掛け、マリーと買い物に出かけた。先ずは調味料を中心とした食料。後は快適に野営が出来るように調理器具や食器に石鹸等の消耗品も大量に買い込んだ。


 夕食後は久し振りにカロリーバーとスポーツドリンクを出して歓談を楽しんだ。初めて宿屋で話した時の事を思い出して俺も少し泣いてしまった。この日もハルは帰って来なかった。話が纏まらないのだろう。


 翌日、翌々日も何事も無く過ぎて、こっちから宮殿へと出向こうかと思っていたら夕方近くにハルが帰って来た。と言うか、家に駆け込んできた。


「ジン!直ぐに出る支度を!!最悪の事態だ!一刻の猶予も無い!!」


「交渉すら無しかよ・・・ハル、中途半端になっちまったが訓練は続けろよ。それと聞いておく事が有る。教皇は敵か?」


「いや、聖下と父上は対話を望んだが他の者達が強硬策に出たのだ。そんな事より早く逃げるんだ!!父上では止められぬ規模になっている!!」


 まさか教皇と指揮官の反対を押し切って攻めて来るとか最早謀反だろ。どんだけ嫌われてんだよ俺。いや、違うな、俺達の‶力〟を恐れてるんだ。


 マリーと二人でフードを被って壁を越えて隣の家に入った。元ハルの住んでいた家だが今は空き家になっている。暫くして喧騒が聞こえ、更にカルヴァドスの声が響いた。


「ジンならば既に出て行きおったわ!この家の者に傷一つでも付けて見よ、教皇との約定は破棄されたと見做して宮殿を破壊し、今後百年間はこの地の統治は許さん!!教皇に伝えよ!我の楽しみを奪った件、如何落とし前を付けるのかとな!!グハハハハハ!!」


 おいおい、この気配だとカルヴァドスの奴、元のサイズに戻ってねぇか?庭を荒らしてなきゃ良いけど。しかし、餌付けしておいて良かったぜ。ライエルが頑張れば今後も守って貰えるだろう。


 取り敢えず、暫くはここに隠れて居よう。俺一人ならまだしも、マリーは普通の人と身体能力は変わらないし、バイクが無けりゃ国外を旅するのは厳しいしな。


 屋敷の中を散策し、窓の無い倉庫に身を隠した。魔導ランプを灯しコンロで簡単な食事を作って食べた。食後には冷凍冷蔵庫に入れておいたスポーツドリンクを飲みながら他愛ない話をして布団を敷いて就寝した。


 翌日も大人しく隠れて居たが、夜になって塀を超えて来る気配を感じた。ハルだ。誰にも言って無かったのに良く解ったな。


「まさかこんな近くに隠れて居るとは夢にも思わなかったぞ」


「ん?じゃぁ如何して気が付いたんだ?もしかして当てずっぽうか?いや、それにしては真っ直ぐ倉庫まで来たよな」


「カルヴァドスに聞いたのだ。貴様が今何処に居るか解るかとな。それでだ、明日の昼頃に東の遺跡まで来て欲しいとアルバート商会から手紙が来た。例の物が仕上がったそうだ」


「おおっ!予定よりも早いじゃん!アルバートさん達頑張ってくれたんだな。ほんと、感謝しかねぇよ」


「代金は六千五百万メルだそうだが払えるのか?何を作らせたのかも気にはなるが・・・・・」


「代金の方は問題ないな。獲物を売れるだけ売った分でかなりお釣りが来るとだけ言っておこう。作って貰ったのは車輪二つで走る乗り物だけど、見せるのは帰って来てからになるから楽しみにしとけ」


「皆にもそう言ったそうだが、本当に可能なのか?元部下達に聞いた話では、皇家と父上は宮殿に軟禁状態らしく貴様を捕えるまでは解放されないらしいし、手配を取り消すとなるとそれなりの理由もいるが・・・・・」


「心配すんなって、俺が俺らしく行動すれば必ず帰って来れる。なんたって神様のお墨付きだしな」


「・・・・・フッ・・・なるほど。その神が偽物でない事を祈っておこう」


 ハルと笑い合い「またな」と言って別れて仮眠を取ってから。聖都を脱出するための行動を起こした。さて、一丁派手にやるとしますか!

ここまで読んで頂き有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。