61
マリーベルを店の皆に紹介した。んだけど・・・ミリーとエレナの冷たい視線が俺に刺さって心が痛い。そりゃぁ二人の気持ちを解った上で「結婚する気はない」と明言していた訳だし、一目惚れしたからなんて言われて納得出来る訳が無いよな。勿論彼女達を蔑ろにする気なんて無いが、上手くやっていけないようなら出て行く事も考えよう。もう俺の家でも商会でも無いしな。
「じゃ、じゃぁ家の中を案内するから、積もる話は夕食の時にでもって事で」
ライエルは呆れ顔だし、晶は「ジンに先を越されるなんて・・・・・」と落ち込んでるし、妙な空気に耐えきれずにマリーベルの手を引いて家に入った。
「あの・・・私は歓迎されていないのでは・・・・・」
「いや、悪いのは俺で、マリーじゃないから。場合によってはここを出る事になるけど、その時は付いて来てくれるか?」
「ジンさ・・・ジンの傍に居られるなら私は何処でも構いません・・・・・でも・・・私の為に家族と離れ離れになるのは・・・・・」
「俺としても弟妹達と離れたくないよ。それでも何方かを取らなければならないなら、俺は・・・マリーを取ると思う。まぁ聖都から離れる気は無いから心配すんなって」
屋内の案内をした後、ハルにも紹介しないとと裏庭に行くとマリーベルを見たハルの顔色が変わって行く。
「・・・・・ジン・・・その娘はオクタヴィス家の者だろう。首輪は如何した?あれを外す事は許されておらん筈だが?」
「ん?マリーの事知ってるなら話が早いな。あの首輪なら俺が壊したぞ。あれのせいでマリーの自由が奪われてたからな。マリーが犯罪を犯したってのなら解るけど、そうでないなら自由を奪って奴隷のように使う権利なんて無いだろ」
「ハァ・・・・・事はそう単純では無いのだ・・・が、何も知らない貴様に言っても仕方ないか。すまんが、出掛けて来る。おそらく今日は帰ってこれないだろうから、夕食はは作らなくて良いぞ。今代の名はマリーベルだったな。そなたの一族の事をジンに説明しておけ」
ハルは眉間に皺を寄せ、何やらぶつぶつと独り言を言いながら出掛けてしまった。何だ?何を説明しとけってんだよ。何だか良く解らないが、話をするために屋内へと戻り、リビングでお茶を飲みながらマリーから説明を受けた。
「簡潔に言うと、全ては私の持つ‶力〟に有ります・・・・・ジン様もお持ちのようですが・・・私の一族は子供は一人と決められ、その子が成人すると‶力〟が発現します。そしてその強大な‶力〟が暴走しないように、そして悪用されないように、オクタヴィス家の者によって管理されてきました。私達はこの‶力〟を国のために使う事を義務付けられ、普段は使用人としてオクタヴィス家に仕えてきたのです」
「・・・・・ああ・・・もう良い・・・・・全て解ったよ。俺が・・・俺がその下らねぇ運命を変えてやる。だから・・・だからもう泣くな。マリー・・・俺は全てを捨ててでもお前を守る。もう、何も心配しなくて良い」
俺と同じように国に目を付けられ、俺と違って逃げきれなかったんだ。何代にも渡って自由を奪われて、やりたくも無い‶仕事〟をさせられて・・・・・俺も師匠に合わなければ、野垂れ死んでいたか、彼女達のように死ぬまで殺す事を強要されていたんだろう。
「マリー、買い物に行こう。服とか必要だしな」
「えっ?・・・あ、でも・・・・・」
今はそれ所じゃない、とか言いたいんだろうけど、色々買い揃えておかないとな。何時でもここを離れられるように―――
マリーの手を引き、ライエル達に買い物に行ってくると言って先ずは服屋へ、次に雑貨屋だ。防具屋に残りのトロールとオーガを可能な限り買い取って貰いバート商会へ。
「バートさん・・・最初に言いましたけど、聖都を離れる時が来そうです。挨拶する余裕が無いかもしれないので今の内に・・・・・その・・・貴方のお陰で俺は救われました。本当に有難う御座いました!!大して恩を返せずに離れる事になるのは心苦しいですが・・・帰って来る事が出来たなら・・・また貴方の下で働かせて下さい!!」
「まったく仕方のない人ですねえ・・・あの時言ったじゃないですか・・・うちの事なんて気にしなくて良いんですよ。その娘の事・・・守りたいんでしょう?だったら猶更私の事なんて気にしないで全力で守ってあげなさい。さて、それじゃ残りのリザードマン全て買い取りましょうか。他にも有れば倉庫に入るだけ買い取りますからね」
冷蔵倉庫にリザードマンと猪や熊を出して行き、ドラインさんにもお世話になりましたと頭を下げた。俺達を見送ってくれたバートさん達にもう一度頭を下げて商業組合へと向かい、マリーの登録をした・・・マリーベル・マキシマと。
そしてライアンさんにも挨拶をした後、アルバート商会へ向かい、早急にサスペンションとベアリングを使った小型の箱馬車を作れないか聞いてみた。
「作れなくも無いですが、小型だと飼葉や水が殆ど積めませんが、良いのですか?」
「あ、しまった・・・マリー、お前は馬車の操作出来るか?」
「いえ・・・すみません・・・・・」
「参ったな・・・・・歩きじゃちょっとなぁ・・・・・ん?ああっ!車!いや、車じゃ時間が掛かるな、バイク作って貰おう!!」
「「はっ?」」
アルバートさんにバイクの説明をしてみたが、エンジンの内部構造が俺も良く解らなかった。箱馬車で寝泊まりするつもりだったけど、操作出来ないんじゃしょうがない。寝泊りは場所に合わせてテントを数種類買っておくことにしよう。
「これは中々面白い発想だ。金属で出来た馬・・・ですか・・・・・」
「ああ~・・・エンジンの代わり・・・エンジン・・・エンジン・・・・・そうだ!ジェットエンジン!!風と火の魔法でいけるかもしれない!!」
で、複合魔法による推進装置の説明をしてみた。
「ふむ、それなら問題無くいけそうですが・・・魔力石合金の回復量を遥かに上回りますよ。そうですね・・・ざっと見積もっても、一時間走るのに2m四方近くになりますから、とてもじゃないが実用には・・・・・」
「いやいや、魔力の事なら心配いらないんですよ。俺の魔力量はこの間挨拶に連れて来たカルヴァドス以上ですから。それと、この持ち手の部分から俺が魔力を流す量を変えれば速度の調節も出来ます!」
「む・・・・・ドラゴン以上の魔力ですか・・・それなら行けるか・・・・・車輪はトロールの皮が有るし・・・車体も軽く出来る・・・・・クックックッ・・・・・五日・・・五日下さい!全ての職人の手を止めてでも完成させて見せましょう!!」
「え、いや、そこまでしなくても・・・・・」
「何言ってるんですか!今まで貴方から受けた恩を今返さずに何時返すと言うんです!!結婚祝いも兼ねているんですから我が商会が全力でやらせて貰いますよ!!あ、それと、これは私からのお祝いですから受け取って下さい」
「これって・・・・・有難う御座います!一生大切にしますから!!」
アルバート商会を出て、マリーと手を繋いで家へと向かう。この街で出会った人達との出来事を思い返しながら。
夕日に染まる街並みに二つの影が伸びていく。俺達の手には赤い石の嵌った指輪が嵌められていた。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。




