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夕食のシーフードパスタに舌鼓を打ち、食後のお茶を楽しんでからハルに話しがあると言って自室に入った。俺に万が一の事が有った時にこの国の上層部と繋がりの有るハルに兄弟達を任せるのが妥当だろうと。
「と、まぁそう言う訳で、また暫く離れる事になりそうなんだよ。一応話を聞いてからにはなるけど、多分受ける事になると思う」
「私は構わんのだが・・・それで良いのか?面倒事を進んで引き受けるなんて貴様らしくないではないか。一体何が有った?」
ハルの問いに俺は肩を竦めて答えた。
「儘ならねぇよなぁ・・・・・山を下りて世間を知ってからずっと家族が欲しかった・・・普通に起きて、普通に食事をして他愛無い話をして、何事も無く一日を終える。そんな生活を夢見てたんだ・・・・・叶わないと知りつつもな。でも、こっちに来て漸く手に入れたんだ。だから守りたい。俺の家族に危機が迫るのなら全力で排除する。俺はこの‶力〟を自分のため、家族のために使いたいんだ。だから・・・お前の力を貸して欲しい。俺に万が一の事が有った時は俺の代わりに皆を守ってくれないか?」
「貴様の代わりなんぞ務まる筈が無かろう。だが私に出来る事であれば力になる事は約束する。それと、皆が心配ならば無事に帰って来い」
「そう・・・だな・・・お前にも教えなきゃいけない事もまだまだあるしな・・・・・有難う、ハル」
翌日、朝食後に冒険者組合に向かった。カウンターに居た職員に組合長からの手紙を見せて取次ぎを頼むと応接室に通された。
「良く来てくれた。早速で悪いが要件に入らせて貰う」
組合長はテーブルの上に大まかな魔物の生息域が記された簡素な地図を開いて話し始めた。俺がクランゼル領に行っている間に、山の南側の草原に熊が大量発生して初級冒険者が犠牲になったり、更に北西側の湖付近で大蛇が目撃されたりと、魔物の分布が全体的に南下して来ていると言う。
「タイラントボア数匹なら上級冒険者を募れば駆除も可能だが、それ以上・・・オーガやトロールとなると話は別だ。騎士団への要請も検討はしているが聖都の護りも有る以上、長期間大人数を割く訳にはいかないんだ」
「まぁ、話は分かった。で、期間と報酬は?」
「期間は一月で、一千万メル。事態の鎮静化が確認されれば成功報酬として更に一千万だ」
「ハッ!話にならねぇな。ドラゴンスレイヤーってのはたった二千万で買える名前なのかよ?まさか倒した獲物を売ればその分金になるからとか言うんじゃねぇだろうな?倒した獲物は俺の物だ、違うか?それとも俺が冒険者登録してないからとか言うんじゃねぇだろうな」
「い、いや、それは・・・・・」
別に金が欲しい訳じゃないが安売りする気も無い。そんな事をすればこの先何度も呼び出されるに決まってる。それに期間も短過ぎだろ、舐めてんのか?
「いっその事、その二千万で集められるだけ冒険者を集めてあんたが指揮取って行って来たらどうよ。何人犠牲になるか解りゃしねぇけどな」
「クッ!・・・解った・・・この話は無かった事にする。その代わりミゲル達は返して貰う」
「はぁ?何言ってんだ、お前は。資格剥奪したのは組合の方だろうが。ミゲル達が冒険者に戻りたいって言うならまだしも、あんたに強制出来る訳ないだろうが。ミゲル達が欲しけりゃうちの商会以上の条件で雇うんだな」
ミゲル達が今の安定した生活(月三十万メルに装備品支給と風呂付の住居)を捨てる訳が無い。もし、これ以上の条件で雇うなんて真似をすれば他の冒険者達が黙って無いだろう。
「まぁ、魔物の方は聖都に被害が出ない程度に間引いておくから心配いらねぇよ。その代わり弱い冒険者から死ぬか生活出来なくなって聖都から出て行くだろうし、組合に入る金も減るけどな。ああ・・・もしかしたら他所から強い冒険者が集まってくるかもしれないから、そいつにでも期待するんだな」
席を立った俺を悔しげに睨む組合長。報酬無しで間引いてやるって言ってんのに睨むとか訳解らん。逆恨みすんじゃねぇよ。今日中にやる事やって、直ぐにでも取り掛かろう。俺は組合長を無視して商業組合に向かった。
「こんちわ~。色々手続きしたいから組合長に取り次いで貰えるかな?」
「はい!応接室に御案内致しますので、少々お待ち下さい」
応接室で待つ事五分。揉み手で現れた組合長を座らせて要件を言った。
「俺達の住んでる土地家屋の名義を俺からエデン商会名義にして欲しいのと、商会の代表を俺からライエルに変えて、俺をエデン商会の会員から抜いて欲しいんだけど頼めるか?勿論ライエルが気が付くまで内密にだ」
「なっ!そ、それは可能ですが・・・本当に宜しいので?」
「ああ、今のライエルになら任せられるし、商会員も増えたし軌道にも乗った。俺の力が無くてももう問題ねぇしな・・・・・」
「そうですか・・・何か思う所が有るのですな?これから何をなさるのかは解りませんし、お聞きしません。ですが、何一つ不安の無い様取り図らせて頂きます」
「宜しく頼むよ。別に贔屓してくれなんて言わない。ただ、ライエルはまだ若いからな、見守ってやってくれると有り難い」
「ふむ・・・では、何処ぞの商人に騙されないよう、それと無く見守らせて頂くと言う事で」
まぁ、こいつを信用している訳じゃないけど、ライエルと言うか、エデン商会が今の売り上げを維持していければこいつが裏切るような事は無いと思ってる。
これで思い残す事は無い。なんて、そんな訳が無い。死ぬ気なんて更々無いが、これで化けて出るような事は無いだろう。後やっておく事は~・・・あ、調味料多めに出しておくかな。
組合を出て道具屋で大き目の袋を買って帰る。庭の東屋でお茶会をしていた貴族令嬢達に挨拶をして、皆の仕事振りを暫く眺めて裏庭に回ってハルに報告し、暫く訓練を眺めた後に昼食。ハル以外は何も知らないし、知らせるつもりも無い。薄情だと言われるかもしれないが、止められれば決心が鈍ってしまうからハルにも口止めした。
その後は自室で買って来た袋に調味料を詰めてから夕食の仕込み。仕事を終えた皆を労い夕食を摂り他愛のない話をし、皆が寝静まった深夜に家を抜けだして聖都を後にした。ライエル宛に「後は頼む」とだけ書置きを残して。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




