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 出来上がった馬車の受け取りの前に馬を買いに行かなくてはと、ミゲルの案内で牧場へ。


 西門を出て、更に西へと向かって行くと柵に囲まれた牧場が見えてきた。結構広いし、馬だけじゃなく羊もかなりの数を飼ってるようだ。


 柵沿いに進み、門を開けて中に入る。近くに有った建物の前に居た男性にミゲルが声を掛けた。


「おやっさ~ん!」


「おお!ミゲルじゃねぇか!なんだ、お前も遂に馬車持ちか?出世したじゃねぇか」


「あ~、俺はもう冒険者じゃねぇんだ。今は『エデン商会』ってとこの会員でな。そこで馬車を買ったから馬が必要になったって訳だ」


「へぇ・・・お前が商会員ねぇ。で、そちらさんがお客って事で良いのかい?」


「はい。初めましてエデン商会の代表をやらせて貰ってるジンって言います。今回四頭立ての馬車を買ったので、六頭程の購入を検討していますので、宜しくお願いします」


「ほう・・・行き成り四頭立てとはね。随分儲かってらっしゃるようだ。まぁ、心配いらねぇよ。ミゲルの紹介だ、扱い易い奴を選んでやるからよ」


「あ、引くのは箱馬車で、長距離を走っても大丈夫な持久力が有って、ミゲルが扱えそうな奴をお願いします。


「なんだ、ミゲルが扱うなら大抵の奴は大丈夫だが・・・その条件だと結構な値段するぜ?」


「その辺はご心配なく。可能な限り最良の物をお願いします」


 と言う訳で、馬主さんとミゲルが話し合って六頭購入した。因みに一頭当たり金貨七枚で、合計四億二千万メルとエデン商会の資産の半分近く掛かったよ。

 引き渡しの方は、明日の昼にアルバート商会でと言う事で取引成立。宜しくお願いしますと、頭を下げてミゲルと帰った。


 家に入る前にお向かいのクランゼルさんちの門番に「頼みたい事が有るのでご主人か奥さまの都合の良い日が有ればお願いします」言付けを頼んだ。


 ら、その日の夜に一家総出でやってきた。まるで狙ったかのように夕食時にだ。ヨーハンさんまで付いて来てるし。いや、仕事なんだろうけど、先触れ無しとか貴族としてどうよ。


 流石に食堂に使っているダイニングに有るテーブルじゃ座り切れないので、クランゼル家と俺とハルはリビングで食べる事にした。


 まぁ、例によって食べるのに夢中で話所じゃなかったので、食べ終わってからになった訳だが。


「いやぁ、大変素晴らしい料理でした。うちのエリックの料理も悪くないが、ジン殿には敵いませんなぁ」


「あ、最近俺は作って無いんですよ。今日の夕食もライエルって店を任せてる奴が作った物です」


「なんと!あの少年が作ったとは・・・・・ジン殿がお教えになったとは言え戴した物ですな」


 実際ライエルの頑張りは凄い。それなりの才能も有るのだろうけど、昼夜問わずの努力によるものだ。教えた事や思い付いた事が有れば直ぐにメモを取るし、家中で誰よりも早く起き遅く寝る。俺に対する恩返しの意味も有るんだろうけど中々出来る事じゃない。


「ライエルには褒めて頂いた事をお伝えしておきますよ。それでですね、お願いしたい事が有るのは聞いていると思いますが、近い内にご本家の有るクランゼル領へ行く事になるので紹介状を書いて貰えないかと思いまして」


「ほう、実家の領地とは光栄ですな。今は兄が領地を継いでいますが、父と母もジン殿に興味が有ると手紙に書いて有りましたし問題無いでしょう。明日中には用意して届けさせましょう」


 二つ返事で了承されたけど、興味が有るって俺じゃなくて料理だろ?まぁ、お世話になるんだし料理作る位良いけど。


 で、翌日には馬、馬車、紹介状が揃ったので、更に翌日に旅支度ををした。食料品を大目に買い、ミゲル達は持っていたがテント等も新しく買った。


「それじゃ行ってくるけど、火の元には十分注意するんだぞ。あと、晶とハルは護衛の方を頼む。まぁ、うちに手を出そうなんて奴はいないと思うけど」


 クランゼル領には七日前後で着くらしいので、往復二十日位の予定だ。


 通常の馬車より一回り大きな新型馬車が走り出す。御者台にはミゲルとブロウにベルガー。荷台の上にも座れるようになっていて、そこにはクリフトとフィリップ。バーツとジェイルは馬に乗って前を行く。俺?俺は歩きに決まってるじゃん。その気になれば馬車より早いしな。


「しかしこいつはすげぇな。殆ど揺れねぇし、音も静かだ」


「ほんと良い馬車だよなぁ。でも、良いのか?ジンさんの馬車なんだから乗れば良いのに」


「俺はいいよ。それよりも全員が馬も馬車も扱えるようにしとけよ。敵わない敵と遭遇した時は直ぐに逃げられるようにしておかないとな」


「確かにジンさんの言う通りだな。馬は直ぐ乗れるようになるもんじゃないが、馬車なら馬程じゃねぇから全員扱えるようにすんぞ。つってもベルガー達だけだけどな。わはははは・・・・・」


 途中の町や村には最低限だけ寄って走り続ける事五日でにクランゼル領に入った。そこから更に南へ向かい、翌日には領都に入った。門番に領主館は街の東側だと聞き、南北に延びるメインの通りを進み、中央広場を東へ向かった。


「でっけぇ屋敷だなぁおい。うちの三倍位有るんじゃねぇの?」


 クランゼル本家の領主館は兎に角でかいと言うか広かった。庭の中央には噴水まであるし、その周りを馬車で回って玄関まで行けるようになってるし。塩と砂糖の生産で相当儲かってんだろうな。


 屋敷の門番に紹介状とクランゼルさんの両親に宛てた手紙を渡し、取次ぎを頼む。暫くして戻ってきた門番に先代様がお会いになると言われ中へと通された。


 中庭を進み屋敷が近づいて来る。同時に四人は通れる扉の前に居た執事に案内されて屋敷の中を進む。本当に広いな。エントランスに百人近く入れそうだ。調度品も宮殿よりも多いし、掃除も行き渡ってる。つーか引っ切り無しに使用人が歩き回ってんだけど、何人雇ってんだよ。


 案内された応接室で先代夫妻と有った。椅子に座りこちらに優しそうな温和な笑みを浮かべている。


「初めまして、エデン商会の代表をしているジンとお申します。急な来訪に応じて頂き有難う御座います」


「そう固くなるでない。わしらは引退した身じゃ。何より聖下と息子からそなたの話は聞いておるでな。この国の、聖下方の御命をお救い下さった英雄を無碍に扱う訳にはいかんよ」


 座るように言われたが立ったまま挨拶をしたが、気にせず座るように言われ。案内してくれた執事にお土産のクッキーを渡して椅子に腰かけた。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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