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「見ろ!ついにやったぞ!!」
全身に葉の付いた木の枝を付けたハルが兎をぶら下げてドヤ顔で言った。最早貴族の面影は無い。何処の原住民族だよって感じだ。
「おう、最終日にして漸くか。取り敢えずそいつは持って帰ってから食うとしようぜ。お前が捕った初めての獲物だし、ちゃんと調理して食べた方が良いだろ」
「む・・・そうか・・・そう言われると感慨深い物が有るな・・・・・・ジン、貴様のお陰だ、ありがとう」
「礼なんていらねぇし、まだ早えぇだろ。せめて猪位は素手で捕れるようになって貰わにゃな」
「ブラウンボアか・・・・・いや、目標は高く持たなくてはいかん。先ずは晶を超える!そして、その次は父上だ!!」
「そんじゃ帰るぞ~。いい加減ライエル達も心配だしな」
そして翌日。帰る途中で三十人程の武装した集団に出くわした。何事かと話を聞いてみると新種の人型生物が~って、俺達の事だったよ。失礼だなとは思ったが、即席のギリースーツで走り回ってたら間違えられても仕方ないか。
「いや~すまんすまん。それは俺達だから戻って良いぞ」
「そう言われて、はいそうですかと引き下がる訳にはいかねぇんだよ!紛らわしい事しやがって!準備やら何やらで金も掛かってるし、賞金も出る事になってたんだぞ!」
何か知らんが勝手に勘違いしたってのに切れられたよ。保存食とかの代金払えとか、賞金分の補填しろとかうるせぇなぁ。
「・・・・・ああ・・・良~く解った。要するにお前達は討伐すりゃぁ賞金が貰えるんだろ?おい、ハル。こいつら俺達の事討伐に来たって事は、返り討ちにして良いって事だよな?」
「む・・・クックックッ・・・確かにそう言っているな。だが、我々もそう簡単にやられる訳にもいかんし、精一杯抵抗するとしようか。その結果一人残らず命を落としたとしても文句は言えんよなぁ・・・・・・」
ハルが黒い笑みを浮かべながら殺気を放つと、冒険者達の顔から血の気が引いていく。
「い、いや、俺達ヴェルテール様とやり合うつもりなんて無いっすよ!な、なぁ、みんな!」
「お、おお、勿論だとも!」
「ほう・・・と言う事は、そっちの男とやり合うつもりか?こいつはジン・マキシマだ。名前位は聞いた事が有るだろう?」
「「「「「えっ!」」」」」
「おいおい、ばらすなよ。楽しみが減っちまうだろ」
「「「「「も、申し訳ありませんでしたあああぁぁぁぁぁ!!」」」」」
ハルが俺の名前を言ったとたんに冒険者達が一斉に土下座で謝罪した。ま、まぁ、こいつらも生活掛かってんだし、ちょっと位は力を貸してやるかね。
「まぁ、保障については組合と交渉してくれ。何なら俺とハル・・・ラインハルトの名前出して良いからさ。文句あるなら組合長に俺の家まで来いってな」
「ほ、本当っすか?有難う御座います!!」
と言う訳で、ぞろぞろ三十人程の冒険者達と聖都へと帰った。北門では流石に止められたが、冒険者達が出て行ったのは知ってるし、俺もハルも有名人だから特に何か有った訳じゃないが、衛士の一人が宮殿の方へ向かって行くのが見えたからハルの事を報告に行ったんだと思う。
家に帰ってハルと二人で風呂に入り、ハルに俺の着替えを渡した。こいつの服とか日用品も買いに行かなきゃなぁ。ほんと、何も持ってねぇんだよ。
「ジン兄さん、夕食の支度なら俺が・・・・・」
「ああ、これはハルが初めて一人で素手で捕った獲物なんだ。だからこれはハルのために俺が調理してやろうと思ってさ。お前は他のを頼むよ」
腹の中にたっぷりの野菜と香草を詰め込んだ兎をオーブンでじっくりと焼き上げた。
食卓に並んだ兎の丸焼きを見たハルは少し目を潤ませながら深呼吸をし、調理場へと取り皿を取りに行くと自らの手で全員に取り分けた。
「・・・私が初めて自分の力だけで捕った獲物だ。皆には迷惑も心配も掛けてすまなかった。この程度で許されるとは思っていないが、良かったら食べてくれ」
ハルが、あのプライドの塊だったハルが平民の孤児達に頭を下げて謝罪をした。本当に生まれ変わって別人になったかのようだった。
「それで、そいつも家に住むのか?」
「ああ、俺の内弟子みたいな感じになるかな。当分は基礎体力作りになるけど。ハル、明日は買い物に行くから訓練は無しだ」
晶の問いに答えた。何だこいつ?ニヤニヤしやがって。
「すまない・・・・・皆にも迷惑を掛ける事になると思うが宜しく頼む」
そんな訳で、翌日に買い物とハルの身分証の相談に組合長の所に行った。組合長には一時的にうちで鍛えるために騎士団を抜けたと説明して、口外しないように念を押した。
買い物の途中でバート商会にも寄った。一月近くも家を空けていたし、必要な獲物が有ればと思ってだ。
バートさんとドラインさんに挨拶をして。リザードマン二十五匹とブラウンボア十匹を売って、買い物を終えて家へと帰った。
翌日からハルの訓練開始。午前中は街の外周を砂袋の入ったバッグを背負って只管走らせる。午後からは素手でミゲル達との模擬戦だ。ミゲル達の連携もかなり様になってきてるな。
「ハル!足を止めるな!囲まれたら終わりだぞ!常に全体を見て動き回るんだ!ミゲルの出す支持を逆手にとれ!一撃離脱を心掛けろ!」
流石に武器を持って連携してくる複数相手に勝つには体力が足りないか。特に槍が相手だと早々近寄れない。
そして、その日の夕方。一人の男が吉報を持ってやってきた。豪い興奮したアルバートさんだけどな。
「やりましたよジン君!遂にお待ちかねの冷蔵馬車が完成しました!!魔力石の合金の車体のお陰で従来の箱馬車よりも車重が軽く、サスペンションとベアリングにより走行性も上がり、車輪も弾力性と耐久性の高い物が出来ました!更にこの魔力石の合金ですが、魔力回復力が従来の二割程高い事も解りました。これにより不可能とされていた長期間の冷凍保存も可能となってますよ!」
「おお・・・って事は中に入れときゃ冷凍出来るって事ですか?」
「ええ。これを家庭用の冷蔵庫に組み込めば・・・ククク・・・冷蔵冷凍庫の出来上がりと言う訳です。早速開発に取り掛かってますが、流石に高額になるので一般普及はまだ先になりそうですが、確実に貴族の方々はこぞって買いに来るでしょうね!いやぁ、笑いが止まりませんなぁ・・・ハハハハハ!」
なんか豪い物が出来上がってた。「冷蔵冷凍庫が出来たら家と店用にもお願いします。馬車は二、三日中に取りに行きます」と言うとアルバートさんは「本当に良い物が出来たから楽しみにしてて下さい」と言って帰って行った。
これで海産物が食えるし出汁も取れる。料理の幅が増えるのが楽しみだと、まだ見ぬ異世界海産物に思いをはせ、年甲斐も無くワクワクして中々寝付けなかった事は内緒だ。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




