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ハルの捜索を開始してから三日目の事。北地区の冒険者組合でハルを見た者が居た。正直、絡まれたり面倒な事になりそうだから冒険者組合には来たくなかったんだが、街の中と外を行ったり来たりしている彼らなら、有名人のハルを見かければ覚えているだろうと思ったのだ。
「街に帰ってくる途中で北の川沿いの草原で見ました。守護騎士様があんな所に一人で何してるんだろうって思ったんですけど、あそこは初心者が行く所だから危険な魔物が居ないか散策してるのかなって・・・そ、それでですね・・・あ、握手して貰えませんか!?ドラゴンスレイヤーのジンさんと握手したら強くなれそうな気がするんですよ!」
「あ、ああ、握手位構わないけど、強くなるには努力が必要だからな?まぁ、情報提供ありがとな」
絡まれたりはしなかったが、その場に居た二十人程の男女と握手をした上に組合長が出てきてしつこく勧誘された。これも絡まれたって言うのかな?
「それじゃ悪いけど後は頼むぞライエル。見つからなくても一月以内には帰るからさ」
一旦家に帰り、皆に暫く留守にする事を告げて北西の山へと向かった。
で、川沿いに進む事二日。あっさりハルは見つかった。つーか、河原沿いの木に寄り掛かって寝てやがった。
「おい、夏に入ったからって、こんな所で寝てたら風邪ひくぞ」
声を掛けたが返事が無い。息はしているから死んでは無いんだが、数日間碌に食べてないんだろう。俺はバッグからスポーツドリンクを出してハルの口の中にペットボトルを無理やり突っ込んだ。
「・・・ゴホッ!ガハッ!なにを・・・・・貴様か・・・ゴホッ!余計な真似を・・・・・」
「おう、生きてたか。どうよ、数日で随分参ってるみたいだけど、自分の力の低さが身に染みたんじゃねぇか?」
「・・・・・父上の言った通りだった・・・家から・・・街から出れば真面に食事・・・いや、雨露すら凌げない・・・・・私は・・・私はそこらの新人冒険者以下の男だった・・・・・」
ハルの頬を涙が伝う。プライドとか色々圧し折れてんだろうな。それで何もする気になれなくて寝てたと。
「まぁ・・・確かにそうだな。でもな、ただ知らなかっただけだろ。俺が生きて行くための術を教えてやる。先ずはそいつを飲め。それで落ち着いたら飯にしようぜ」
ハルがスポーツドリンクを飲んでいる間に食事の用意をし、温まったスープを二人で何も言わずに食べ始めた。
「・・・すまん・・・・・」
暫くしてスープを飲みながらハルが謝罪の言葉を溢した。
「良いって。それでだ、さっきも言ったけど、お前にやる気があるなら色々教えてやるけど如何する?このままのたれ死ぬ気は無いんだろ?」
「・・・・・そう・・・だな・・・死にたくはない・・・・・だが、私に出来るのだろうか」
「出来るか出来ないじゃなくて、やるか死ぬかだ。死にたくないならやれ」
「わ、解った・・・・・」
「言ったな・・・今更撤回するとか許さねぇから。真面な食事は暫くお預けだから、良く味わっとけよ。俺もマジックバッグを封印して付き合ってやる」
そんな訳でサバイバル生活が始まった。装備はハルの持っていた護身用の短剣一つだ。
「先ずは拠点の設営からだ。注意点は水辺から少し離れた所に作る事。川は増水する事もあるし、何より獣が水を飲みに来る。常に襲われる事を前提に行動するんだ」
木の枝や大き目の木の葉を手分けして集めた。枝を組み、葉を乗せて簡易的な寝床を作った。
「よし、あとはこいつを煙で燻せば虫に刺されなくなる。ああ、火を焚くのは日中だけにしろよ、夜間は目立つからな。獣が火を怖がるってのは間違いだ」
「そ、そうなのか・・・それで食料は如何するのだ?」
「そんなもんその辺に幾らでも有るだろ」
そう言って雑木林に入って行き、食べられる野草を探した。今は夏に入ったばかりで時期が良いから探せば幾らでも有る筈だ。
「ほれ、こいつをよく覚えとけ、あとこれもだ。ハーブ類は大抵何処にでも生えてるからな。それと~・・・あった。蔓の下には芋が生えてる事がある。こんな風に種芋が付いてるのが目印だ。良し、今日の所はこんなもんで良いだろ」
数種類の野草と芋を取って拠点に帰った。
「芋は毒が有る事が多いから、水にさらして毒抜きをするんだ。あと、芽も毒だから取るように」
「魚や獣は捕らんのか?」
「お前、そのナイフだけで狩れるのか?俺は素手でも狩れるけど出来ないならやめとけ、怪我するだけだからな」
「そ、そう言うものなのか?」
「お前、回復系の魔法使えるのかよ?薬だってないんだぞ、怪我して逃げる事すら出来なくなったら死ぬしかないって覚えとけ。それと、向こう見てみろ、周囲の警戒怠るなって言ったろ」
俺が刺した方向にハルが目を向ける。その先には猪が居た。
「あと少し近づいたらこっちに気が付くだろうな。で、如何する?お前やってみるか?」
「い、いや、やめておこう。こう言う場合は如何するのだ?」
「倒せないなら見つからないように逃げるしかねぇだろ。魔物は獣と違って退かないしな。まぁ、襲って来たら俺が倒すけど、俺が倒した獲物は食わないからな。食いたきゃ自分の力だけで捕って来い」
俺が居る事で甘えが出ないように釘を刺しておかないとな。限界近くまで追い詰められた事で素直に言う事を聞いてる今の内に教え込まないと。
「そうだな・・・・・自分の力で成さねば意味が無い・・・か・・・・・」
「そうそう。俺は教えるだけで、モノに出来るかどうかはお前次第だ。神経を研ぎ澄ませ。周囲に漂う空気の臭いと動きに意識を向けろ。耳を傾け自分以外の発する全ての音を拾え。外敵の発見が早くなればなる程生き残る確率が上がる」
地力は有るんだし、兎位なら素手でも捕れるだろうけど、それは黙っとこう。今必要なのは過信や慢心に油断ではなく、慎重さと自分自身の見極めだからな。
その他にも生水は極力飲まずに水分は植物から取るようにとか、火を焚く時は地面を掘り下げて見えにくくしてとか、逃げる時は風下に回り込んでとか、本当に基本的な事から教えて日暮れと共に就寝となった。
余程疲れていたのだろう、ハルは寝床に入ると直ぐに寝てしまった。警戒心が足りねぇけど、俺みたいに寝てても周囲の変化に気が付けるようになるのはまだまだ先だしなと、横になり目を瞑った。
翌日から二十日間程基礎体力作りの訓練も並行して開始した。雑木林の中を走り回ったり、食料調達序に木に登ったりもした。
そして、それを見た冒険者達の間で初心者の狩場に新種の人型生物が確認されたと、討伐隊が組まれる騒ぎになるのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




