40
衛士に呼ばれて門の所に行ってみれば薄汚れた晶が半泣きで立っていたので家に連れて入った。
「あいつらが知り合いだと言っても信じてくれなくて・・・・・」
「ああ・・・この辺は貴族の家が多いからなぁ・・・ほれ、そこの東屋に居るのも貴族のお嬢様だし・・・まぁ、見た目って大事だよな・・・・・」
「・・・・・なぁ・・・ここって本当にお前の家なのか?街中で聞いたんだが、ジン・マキシマの住んでいる所と聞いたら、庭にお店のある豪邸だから行けば直ぐ解ると言われたぞ。日本に居た時とは違った意味で有名なんだな」
「まぁ、その辺は後で話すから、取り敢えず風呂に入ってこい。着替えは有るのか?無いなら俺ので良かったら貸すぞ」
「ふ、風呂が有るのか!あ、着替え・・・すまないが貸して貰えるか、有るには有るんだけど、まともに洗えて無くて・・・・・」
「解かった解った。洗濯機も有るから使って良いぞ。どうせ飯もロクに食って無いんだろ?簡単なもん用意してやるから風呂に入ってこい」
「す、すまん・・・・・」
晶に着替えを貸して風呂と洗濯機の使い方を教えて調理場へ向かい、焼きそばと焼売に野菜スープを用意してやった。あいつも日本の味が恋しいだろう。醤油と味噌が無いのが悔やまれるなぁ。
風呂から出てきた晶を裏庭に連れて行って洗濯物を干し、ダイニングで食事を取らせた。
「・・・・・欠食児童か、お前は。誰も取らねぇから落ち着いて食えよ・・・・・」
「ぐっ!こちらに来て一年近くになるが、如何にも味に馴染めなくてだな・・・いや、すまん・・・・・」
俺の指摘に息を詰まらせる晶。しかし、俺よりも随分前に来てたんだな。にしても、どの辺・・・いや、別の国から来たのか?この国は然程広く無いし、他の連中と合流してから来たとすれば全員別の国からとか有り得るな。
満足顔で食後のお茶を飲む晶に、先ずは軽く話を振ってみた。
「・・・晶、爺さんは元気か?結構な歳だったし、お前の事を除けば良い人だったからな、お前と別れてからも気にはしてたんだよ」
晶は二つ歳上で俺と似たような境遇だ。幼い頃に両親が死去し、山の中で爺さんと二人で住んでいて、武術を習っていた・・・・・のだが、爺さんに男として育てられていたために、自分の事を本当に男だと思っていた・・・と言うか、大人になったら身体が男になると思っていたのだ。実際俺も男だと思っていたが、俺が風呂に入っている所に晶が入ってきて女だと発覚。爺さんと喧嘩して、俺が山を下りる時に晶が付いてきて、暫く一緒に旅をしていたんだが、晶が街に慣れない上に仕事が出来なかったために山に帰ったのだ。こいつ、武術はそこそこなんだが、他はからっきしなんだよなぁ。
「爺さんなら元気だと思うぞ。つーか、殺しても死なないだろ、ある意味化け物だし。まぁ、もう九十近いし、私も心配はしてるけど」
ポテチを摘まみながら口では心配していると言っているが、とてもそうは見えなかった。恨むとまではいかないが、騙されていたんだし思う所が有るんだろうな。
「まぁ、こっちに来ちまったら如何する事も出来ないしなぁ・・・それで、お前はどんな感じでこっちに来たんだ?俺は何の説明も無しに飛ばされたから好き勝手にやってんだけど」
「私は光の神に呼ばれたんだ。この国で毎年行われている『邪神復活の儀式を止めろ』と言われてな。お前は邪神に呼ばれたのでは無いのか?」
こりゃまたテンプレな展開だな。って事は、他の連中は別の神にでも呼ばれたのかな?
「そもそも邪神なんて聞いた事が無いぞ。闇の神の間違いじゃないのか?他の連中は如何なんだ?」
晶が自称光の神から聞いた話だと、創造神なんて神は居なくて、邪神が顕現するために人を騙して儀式をさせているのだとか。で、地、水、火、風の神が呼んだ他の連中と力を合わせて邪心復活を阻止して欲しいと言う事らしい。因みにジェイは風の神に呼ばれたんだとか。
「ふぅ~ん・・・まぁ、儀式を止めるのは成功したんだし良いんじゃないか?尤も、儀式を止めるだけなら他に遣り様が有ったと思うけどな。無関係の人まで犠牲が出てんだぜ、そこんとこ如何よ?」
「あれはジェイの奴の独断だ。この街に着いたのが儀式の前日で時間が無くて他に良い方法が思いつかなかったのも有るが私は反対したんだ・・・・・」
犠牲者にはすまなかったと思っていると口籠る晶。それにしてもここに来るまで時間が掛かり過ぎだろ。交通機関が発達していないせいも有るんだろうけど、方向音痴かよと突っ込みそうになった。
晶は俺が闇の神、邪神に呼ばれたんだと言うが、それも腑に落ちない。儀式にしたって長年繰り返されていたんだし、そんなに何年も繰り返さなければならない儀式とか不完全過ぎて成功するとは思えない。何よりアンジェリカへの神託も含めて俺に指示が一切ないのがおかしいと思う。
「そ、それはだな・・・神託で上手い事誘導している・・・とか?」
自分で言ってて無理があるなと言う微妙な表情をした晶に冷たい視線を送った。
「それで、一応成功はしたんだし、これからどうすんだ?お前。後他の連中もか」
「いや、まだ終わっていない。阻止出来れば元の世界に帰れる事になっているからな」
「ん~・・・お前、帰りたいのか?俺は帰りたくないんだけど」
「はぁ?!何言ってんだ!こんな不便な世界に居たいとか・・・・・いや、こんな豪邸に住んで居る位だし、案外こっちの方が暮らし易い・・・のか?」
「おう。街で俺の事聞いて来たんだろ?ここの土地家屋は俺個人の物だし、国の上層部に俺の事は知られているけど、利用する気は無いみたいだし、‶力〟の事を知った上で受け入れてくれた人もいるよ。知り合いも増えたし、何より家族が出来たんだ。だから帰りたくは無いね」
笑顔で答える俺に晶はちょっと寂しげな顔をした。
「そうか、正直羨ましいよ。私にとって家族は爺さんだけだけど・・・あれはちょっとなぁ・・・・・」
後継者が欲しかったからって男として育てる事はないだろ。なんか一昔前の漫画に出てくるキャラみたいだし。いや、他は普通に気の良い爺さんなんだよホント。
「何ならお前もここに住まないか?部屋なら余ってるし、兄妹も出来るぞ。庭にある店で働いてるのが三人に外で働いてるのが二人で合計五人。全員孤児で血の繋がりは無いけど仲良くやってるんだぜ」
「そ、それは・・・その・・・わ、私と・・・け、結婚したいと言う事か?!」
「何でそうなる!?もじもじすんな、気持ち悪い。そう言う事は女らしさを身に着けてから言え!つーか、なに?お前男女交際とか結婚したいとか考えてたの?」
「わ、悪いか?!お前と別れてからも時々街に出かけたりしてだな、そう言う事の知識も有るんだ!そ、それに・・・爺さんにも跡取りが~とか言われた事だって有るんだぞ!・・・・・知り合いの女性を紹介されそうになったけど・・・・・」
女紹介してどうすんだよ。跡取り出来ないだろと突っ込みを入れ、話が脱線したなと今後如何するかについて話を戻すのだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




