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アルバート商会から職人が送られてきて、売店に合うサイズの業務用のコンロとオーブンに冷蔵庫を頼み、序に家の方の調理器具も新型に替えて貰う事にして数日が経った或る日の事。
「お茶会の招待状ね・・・うちに遊びに来たいってんなら解るけど、何でクランゼルさん家のお茶会なのかが解んねぇんだけど?」
クランゼル家でやるお茶会の招待状を持ってヨーハンさんがやって来た。
「それはですね、奥様がお礼を、と言うのも有るのですが・・・私からお願いが御座いまして・・・・・その・・・少々言い難いのですが・・・エリックがジン様にお教え頂いたお菓子を改良した物を完成させましてですね、奥様とお嬢様に誉められた事も有って天狗になっておりまして・・・その・・・・・申し訳有りませんが、ジン様にお灸を据えて頂けないかと」
「あ~成る程。当日に俺があいつに真似の出来ないお菓子でも差し入れして、鼻っぱしらを折ってやりゃ良いんだな?」
「は、はい!可能でしょうか?可能であるならば、お願いしたいのです。エリックには、まだまだ上が有ると言う事を知って貰い、精進し続けて貰いたいのです」
「今うちの庭に作ってる売店で売る予定の物が幾つか有るけど、その中でも再現が難しい物にするか」
「そ、その様な物が有るので?」
「ああ、余り大量に作れないから、限定商品にしようと思っているのが幾つか有るよ。ちょいと値が張るから買えるのは高位の貴族だけになるかもなぁ」
「お・・・おぉ・・・・・よ、宜しくお願いします!私に出来る事なら何でも致しますので、是非お願いします!」
と言う訳でクランゼル家のお茶会に行く事になった。まぁ別にヨーハンさんに何かして貰うつもりは無いが、クランゼル家とは仲良くしておきたいんだよね。冷蔵馬車が出来たら魚捕りに行きたいし。
そんで、お茶会当日。奥様のメイベル様(三十前半位)とお嬢さんのオリビアちゃん(十歳位かな?)と挨拶をして席に着き、出されたお茶を飲んで少し話をした。
奥様からお礼を言われ、身体が弱く、殆んど屋敷から出た事が無いオリビアちゃんにはドラゴン討伐の時の事を聞かれたので普通に答えたんだけど、まぁ武器や魔法を使わないから地味だよね・・・何かごめん。
で、エリックさんが自信作を持ってきて、ドヤ顔で出されたんだけど・・・・・
「へぇ・・・バタークリームサンドか。旨いけど、クッキーは俺が教えたままより砂糖を減らすかドライフルーツは入れない方が良いと思うぞ。バタークリームだと甘さがくどくなるからさ。ヨーハンさん、俺の持ってきた奴出してくれる?」
「畏まりました。奥様、お嬢様、こちらは『水饅頭』と言うお菓子だそうです。ジン様の出されるお店での限定商品となる物を今回特別に御用意して頂きました」
ヨーハンさんがテーブルの上に置いたお皿の上には、半球状の半透明の物の中に緑色の塊の見える涼しげなお菓子が乗っていた。ゼラチンの作り方は知らなかったけど、片栗粉なら知ってたんだよね。ジャガイモの澱粉だって。因みに餡は以前枝豆で作った鶯餡だ。
「わ~・・・綺麗ねぇ、お母様。食べてしまうのが勿体無いわ」
「本当に・・・まるで宝石を閉じ込めたかのよう・・・・・」
「いやぁ気に入って頂けて嬉しいですよ。でもお菓子なんで、味の方が大事ですから食べて下さい。エリックさんも遠慮しないでどうぞ」
エリックさんは目を見開き、顎が外れんばかりに口を開けたまま固まっていた。
「・・・・・な・・・なんじゃそりゃあああぁぁぁ!!」
暫くして叫びだしたエリックさんは奥様とヨーハンさんに怒られたのだった。
「後二十日位で営業出来ると思いますので、良かったら来て下さい。他にも真似の出来ないお菓子を用意してますので」
ヨーハンさんの依頼を果たし、お菓子の方も高評価を頂いて家に帰った。エリックさんは、この日から人が変わったかのように毎日新しい料理を模索し始めた。正直自力でバタークリームを開発した時点で日本での知識が有る俺よりも才能は有ると思うから、慢心せずに努力を続ければ大成すると思う。まぁ、俺と言うか、地球の知識には勝てないだろうけど。
そして、庭の整備と売店の建築が進む中、俺はライエル達の教育をしつつ、材料の配達を頼んだり、お持ち帰り様の紙の箱なんかを頼んだり、商品の作り溜めなんかをしているうちに開店初日を迎えた。
その日の朝は珍しく霧が立ち込めていて、ヒースとニックを門を開ける序に見送ってから店に入り開店準備を三人と始めた。
「開店初日からこれじゃお客さんも余り来ないかもな」
なんて話をしていたら、門の方からザッザッザッっと複数人の足音が聞こえ、霧の中から大勢の執事やメイドが現れた。え、何これ?
「こちらがジン様の商店で間違いないでしょうか?門の所に居た衛士殿に聞いてきたのですが、霧が深くて外に出てしまったのではないかと思いましたよ。ははははは」
「え・・・ええ、間違いないですけど・・・・・」
「おお!間違いで無くて良かった。では・・・開店おめでとう御座います。私は・・・・・」
何か知らんが来る客来る客全員が、何処何処の家の執事頭だの何だのと挨拶してからショウケースに並んだ見本を見て、これは如何言う物なのかとか色々聞いて来るもんだから中々客が捌けない。
そして、体感で二時間程経っただろうか。霧が徐々に晴れてきて、その行列が姿を現して驚いた。門の外まで続いていて最後尾が見えなかったのだ。
「おいおい、マジかよ!ちょっと見てくるから、ここを頼む!」
ミリーとエレナに接客を任せて門へと向かって駆け出した。門の所で列の整理をしてくれている衛士に「すまん、助かる」と声を掛けて外に出て唖然とした。
「・・・・・やべぇ・・・中央広場まで続いてるかもしれねぇ・・・・・」
最後尾の見えない行列には、お使いで来た執事やメイドだけでなく、商人っぽい人や如何見ても冒険者とか一般人も並んでいる。もしかしたら訳も解らずに並んでいる人も居るかもしれないって位人が並んでいた。って言うか、実際後ろの方に並んでいた人達の殆んどは何も知らずに並んでいて、うちの近くまで来て衛士に聞いて帰って行った人が結構居た。後、商品の値段見て何も買わずに帰った人も居たよ。
取り合えず店に戻り、俺だけ外で買い終わった人から挨拶を受ける事で客を捌いて行く事にしたのだが、買い終わった客の列が俺の前に出来ると言う事態になり、身動きが取れなくなるのだった。これ、何時終るんだよ・・・マジで勘弁してくれ・・・・・つーか、こんなに一度に来られても名前や爵位なんて覚えらんねぇよ!
ここまで読んで頂き有難う御座います。




