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温まったスープをよそい、手渡しながら話をした。
「ほれ、良かったら食ってくれ。それで、そいつの怪我の方はどうなんだ?」
「ああ、先ずは礼を言わせてくれ。ありがとう、助かったよ。それに飯もな。怪我の方は止血剤を塗ったから今夜は様子見だ。大して深い傷じゃなかったから問題無いとは思うがな」
「そっか、そいつは良かったな。あ~、そう言や自己紹介がまだだったか。俺はジンってんだ、宜しくな」
「ははは・・・そう言や、確かに。俺はミゲル、こいつはバーツで、そっちのがブロウ、怪我したのがジェイルだ。ジンさんね・・・ん?・・・ジン?・・・おい、最近どっかで聞かなかったか?」
「ん?そう言や、何処かで聞いたような・・・・・」
「・・・ジン・・・ジン~・・・・・ああっ!も、もしかして、あんたジン・マキシマかぁ?!だったらその強さも納得出来るぞ!」
「んあ?何だ?何で俺のフルネーム知ってんだ?」
「おいおい、マジかよ!こりゃまた豪い有名人じゃねぇか!助けて貰った上に、飯奢って貰ったなんて自慢出来るぜ!」
「ゆ、有名人?何で俺が有名人なんだよ?!特に何かした覚えなん・・・て・・・・・あ・・・あれか・・・ウォータードラゴンのオークション・・・・・」
聖下の来訪とかですっかり忘れてたわ。討伐者の名前が公開されてるんだった・・・どんだけ広まってんだよ・・・勘弁してくれ・・・・・
「・・・ハァ・・・お前等、俺の事は他言無用だ。街で触れ回ったら如何なるか・・・言わなくても解るよなぁ・・・・・」
「あ・・・お、おう。解った!解ったから凄まないでくれ!俺達だって助けて貰って、恩を仇で返すような真似はしねぇよ」
「あ、ああ、勿論だとも。こんな旨いもんまで御馳走になったのに、そんな真似しねぇって!」
脅すのはこれ位で良いか。こいつ等そんなに悪い奴でも無さそうだしな。
「取り敢えずは信じてやるよ。それでお前等、身分証無しでやっていけてんのか?もし獲物を買い叩かれそうなら南地区に有るバート商会に行って俺の名前を出せ。バートさんなら悪いようにはしないだろ。俺も初めて会った時から良くして貰ってるからな」
バートさんも仕入れの面が弱いって言ってたし、こんな奴等でも居ないよりは助かるだろ。
「ほ、本当か?!実は仲間も抜けて狩の幅が減って困ってたんだ。この上買い叩かれたらやって行けそうに無くってよ。あんたの顔に泥を塗るような真似はしないと誓う!本当に助かった!」
「俺からもバートさんには話を通しとくから真面目に働けよ」
深々と頭を下げる男達。ふと、横を見ると狼達がぞろぞろと俺に近寄って来た。
「お前等も災難だったな。俺ももう直ぐ出るから、お前等ももう帰ると良い」
「アオオオォォォン!!」
シルバーウルフを先頭に、狼達が暗くなった森の中を掛けて行く。二十頭位居るけど、あの数でも勝てない程強いのか、あの蛇。
食べ終えた器を川で軽く洗って、テーブルや鍋と共にバッグに仕舞った。
「さて、それじゃ俺は行くけど、お前等、無茶すんなよ」
「ああ、って、こんな遅くなってから移動すんのかよ?!・・・ま、まぁ、あんたなら大丈夫か・・・本当に助かったよ、心から礼を言う。ありがとう」
それじゃと言って軽く手を振り駆け出した。思いがけず長めの休憩になったが問題無い。その分ちょっと飛ばせば良いだけだと、月明かりに照らされた川沿いを聖都に向かって走り続けた。
予定通りに聖都に着き、バート商会へ。解体用の倉庫に入ると、バートさんとドラインさんが俺を見て表情を曇らせた。
「頼まれていた獲物持って来たんですけど・・・何か有りましたか?」
「ええ・・・少々困った事になりまして・・・・・」
何でもウォータードラゴンのオークションが終わった翌日から、俺の自宅に貴族の使いが押し寄せたのだそうだ。それだけなら良いのだが、ヒースとニックが仕事の為に家を出て顔を覚えられてしまった上に、バート商会との関係もばれてしまい、二日前には配達中に使いの者に足止めを喰らう等、街中で騒ぎを起こしたのだそうだ。
「その時は衛士が収めてくれたので特に何も無かったのですが、万が一の事を考えて二人にはお休みして貰っているんですよ。私がオークションを薦めたばかりにこんな事になってしまってすみません」
「何言ってるんですか!バートさんは何も悪くないじゃないですか!悪いのはその貴族連中と、押さえ切れてない教皇でしょう?!俺が話し付けて来ますからバートさんは気に病まないで下さい」
「ですが・・・・・」
「取り合えず、今回頼まれた獲物・・・猪五匹と、こっちは迷惑を掛けたお詫びで置いて行きます。それと、ミゲルって元冒険者が来ると思いますんで、獲物を買い取ってやって下さい。それじゃ!」
倉庫に猪と大蛇を置いて自宅へと走った。背後でバートさんが俺に待ちなさいと言っていたが、事態の収拾が着くまで合わせる顔なんて無い。
家の門の前でハルと衛士以外の男が見えた。あいつか?何だか揉めてるみたいだし。
「何度言ったら解る!ジンが帰り次第返事を出させると言っているだろう!」
「貴方では話になりませんな。私はこの家の者から明確な返答を頂けるまで帰る訳には行かないのですよ。私の邪魔をする権利は貴方には無い筈です!この件はヴェルテール卿に正式に抗議させて頂きますぞ!」
「・・・・・おい、ハル・・・こいつがヒースとニックに手ぇ出したって事で良いんだな?」
ハルと話していた男の首を後ろから右手で掴んで持ち上げ、ハルに話し掛けた。俺から漏れた殺気に中てられて、ハルと衛士の顔色が見る間に青褪めていく。
「ぁ・・・ぅあ・・・・・ああ・・・そ、そうだが・・・・・」
「・・・・・そうか・・・ハル・・・悪いんだが、俺の居ない間に来た奴が置いて行った手紙とか有るなら持って来てくれるか・・・・・」
「お、落ち着け!今持って来るから早まるなよ!」
ハルが屋敷に向かって走って行く。落ち着けだって?俺は冷静だ。少なくとも今この場でこいつを如何こうする気は無い。
「グッ・・・カハッ!・・・・・は・・・離せ・・・・・私を誰だと・・・・・」
「てめぇが何者か何て如何でも良いんだよ・・・誰の使いかさえ解りゃ、死んでたって構わねぇんだ・・・もう暫くは生かしておいてやるから有り難く思うんだな・・・・・」
「ヒィッ!」
「ジ、ジン殿・・・どうか落ち着いて下さい・・・早まった真似だけはしないよう願います・・・・・」
「殺しゃしねぇって言ってんだろ。おい、お前も雇い主からの手紙持ってんだろ、だせや」
捕らえた男から奪うように受け取った手紙を確認した。招待状ねぇ・・・とても御招きする相手に取る態度じゃなかったと思うが、そんな事は如何でも良い。ハルが持ってきた手紙の束と一緒に上着のポケットに無造作に突っ込んで、掴んだ男を引き摺りながら聖都の中心に有る巨大な建造物、宮殿へと歩を進めた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




