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「ハル、お前達は来るな。立場上、命令されて俺に敵対する事になれば、唯じゃすまねぇ。お前等、俺が留守の間、子供達の面倒見てくれたんだろ?出来ればお前達とは戦いたくねぇんだよ」
「だ、だが・・・・・」
「命と国を捨てる覚悟が無いなら着いて来るな。戻って子供達の傍にいてやってくれ、頼む」
「・・・・・解った。だが、早まった真似だけはするなよ」
「可能な限り穏便にするつもりだが・・・相手次第だな。こいつとレイモンドとか言う奴には、きっちり落とし前付けさせてやる。今、温い対応をしたら、付け上がってまた同じ様な事が起こるからな」
ハルが家に戻って行く。掴んでいた男は煩いので、軽く首を絞めて気絶させた。男の襟首を掴んで引き摺る俺を見た周囲の人達が騒ぎ始めたが、気にも留めずに宮殿へと向かった。
南神殿と東神殿の間に有る門へと近付いて行くと、衛士達が騒ぎ始め門の前に立ちはだかった。
「待て!ここから先は一般人の立ち入りは禁止だ!」
「・・・教皇とレイモンド伯爵とやらにジン・マキシマが来たと伝えろ。俺の弟分に手ぇ出した落とし前付けさせてやるってな!顔は知らなくても名前位聞いてんだろ?そこを開けて案内しろ、出来ないってんなら門をぶっ壊して押し通る!」
「ジ、ジン・マキシマ殿でしたか・・・お名前は聞いておりますが・・・その、少々お待ち頂けますか?只今聖下に知らせてまいりますので・・・・・いえ!す、直ぐにお開けします!おい、誰か聖下とレイモンド伯に知らせて来い!急げ!門を開けろ!」
俺の放った殺気に命の危険を感じたのか、あっさり門を開け中に通された。周囲を衛士に囲まれて門を潜り先に進み、門と宮殿の中間で足を止めた。
「ジ、ジン殿・・・如何されました?何か気に触った事でも・・・・・」
「ここで良い・・・ここまで連れて来い。話し合いで方が付かなきゃ戦う事になるからな。宮殿・・・壊されたくねぇだろ?」
「ぁ・・・は、はいぃっ!その様に伝えてきますので、もう暫くお待ちを!」
俺を先導していた衛士が宮殿へと走って行く。教皇達が来るまで暇だなデモンストレーションでもしとくか?
「おい!ガルバデスは居ねぇのか?!」
「団長はお帰りになられました!御用がお有りでしたら誰か向かわせますが!」
「何だよ居ねぇのかよ。じゃぁ誰でも良いから腕に自信の有る奴!暇潰しに俺と手合わせでもしようぜ!何人でも良いぞ!何なら全員同時でも構わねぇから掛かって来い!」
何か静まり返って誰も動かねぇんだけど。こんなんで国を護れんのか?
「あ、あの・・・団長を一方的に追い込んだ話は皆聞いてますし、ウォータードラゴンを単独で、しかも無傷で倒せる方に向かって行く者が居るとは思えませんが・・・・・」
「わ、私はオークションを見に行きました!討伐されたウォータードラゴンの状態を見る限り、私達が束になっても敵うとは思えません!」
「俺さ、この間団長に聞いちまったんだよ・・・ドラゴン倒したジンって人と対戦してみて如何でしたかって・・・そうしたら団長がビクッとして『あ、ああ、強かったぞ』って青褪めた顔してさ・・・あんな団長初めて見たよ・・・二十人同時に笑いながら相手する人なのに・・・・・」
何か色々話が回ってて、衛士達の間ではアンタッチャブル的な存在になってるらしい。場合によっては敵になる筈なのに何か心配になってきたぞ。大丈夫か?この国。
「ふむ・・・と言う事はだ、俺が暴れたらお前等逃げんのか?国を守護するのがお前等の役目じゃねぇのかよ・・・・・よし!今から俺が殺気を放つから、お前等全員で向かって来い!俺の殺気に耐えられれば他の奴なんてゴミだゴミ。お前等にとっても良い経験になるし、俺も暇つぶしに為るから一石二鳥だろ」
「え・・・いや、勘弁して下さい。冗談抜きで死にたくないんで」
「俺達団長所かラインハルト様ですら相手に出来ないのに無理ですって」
「どいつもこいつも根性ねぇなぁ。今は平和かもしれないけど何時何が起こるか解らねぇんだから、経験しとくに越した事はねぇんだぞ。俺の居た所にこんな言葉が有る。『平和とは次の戦争への準備期間である』ってな。戦争だけじゃないぞ、魔物の群れとか襲ってくるかもしれねぇじゃねぇか。お前等その時が来たら戦えんのか?」
「いや、無理ですって。聖下にも団長にも、ジン様とは戦うなって言われてますから」
「だから訓練の一環だよ訓練。俺からは手を出さないから心配すんなって。それじゃ、もう面倒だから始めるぞ~・・・ハアアアァァッ!!」
「ギャアアアァァァ!!」「ヒイイイィィィ!!」「ァッ・・・ぅぁ・・・・・」
あれ?ミゲル達はちょっと悲鳴上げただけだったから平気だと思ったんだけど・・・大半が気を失ったり腰を抜かしたりして、豪い事になってしまった・・・・・ま、まぁ、この惨状を見たら教皇とレイモンドと言う奴も素直に詫びを入れるだろ。結果オーライって奴だな。
数年後、メルクリウス聖皇国の衛士達は相手が何者であろうと退く事の無い最強の兵士として周辺諸国から恐れられるように為るのだが、それは別の話だ。『あれに比べれば普通の兵士なんて何て事は無い』とか言われるんだけど、〝あれ〟はねぇだろ。
取り合えず、衛士達が使い物にならなくなったので、ハルから受け取った手紙に目を通して時間を潰す事にした。まぁ、どれもこれも似たような内容で、良かったら何時でも遊びに来て下さい的な事が書かれてた。
中でも北東の国境沿いの辺境伯からの手紙は熱烈と言うか率直で、是非我領地に迎えたいとか、行く行くは跡取りとしてとかはっきり書かれてて、ここまで来ると逆に清々しいし、他の貴族よりは好感が持てる。行かねぇけど。
手紙を読み終わる頃に宮殿の入り口が開いて、中からぞろぞろと衛士達が出て来ると、周囲の惨状を見て俺に警戒して剣に手を掛け、後ろに付いて来た教皇と貴族達が驚いて目を見開いて固まった。呼んだのは教皇とレイモンドだけの筈だけど他の奴等は誰だ?
「漸くお出ましだな。俺が何しに来たのかは解ってんだろうな?先ずはこいつを返す。言い訳とか如何でも良いから、俺の弟分に手ぇだした落とし前、如何付けるつもりなのか聞かせてもらおうか。事と次第によっては、今日でこの国は亡くなるから、良く考えて返答するんだな」
足元に転がして置いたレイモンドからの使者の襟首を掴んで、教皇の前に放り投げて転がした。
「・・・ぅ・・・ッぁ・・・・・ご、ご主人様・・・お助け下さい・・・・・」
投げられ転がった衝撃で目を覚ました使者が、這いずりながら主の元へ向かったが、レイモンドと思しき男は使者を一瞥しただけで、苦虫を噛み潰したような表情をして何も言わずにその場に立ち尽くすだけだった。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




