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 翌朝、朝食の準備をして一足先に出かける事にした。


「それじゃ先に行くけど、戸締りと火の元には注意な。それと、衛士が居るからって、夜に門の鍵は開けたままにしない事。何か有ったらハルを頼れよ。あんなんでも一応は偉い騎士みたいだし」


「ジン兄さん、心配し過ぎ・・・・・」


 信用もしているが心配もしている。特に貴族達の中に、俺を囲おうとこいつ等を狙ってくる奴が居ないとは思えないからだ。それも、誘拐等ではなく、恩を売るような形で懐柔してくるだろう。

 後、気になるのがハルとは反対側に住んでいる騎士だ。ここだけは未だに家に来た事が無い。帰ったらハルにどんな奴なのか聞いた方が良いかもしれない。


 人気の無い早朝の街を走って行く。今回はのんびり歩いて行く気は無い。明後日の早朝には現地について狩を始め、可能な限り早く帰るつもりだ。頼まれたのは二、三匹だが、十匹は狩っておきたいと言うのも有るけど。


 川沿いを昼夜問わず走り、最低限の休息で予定通りに山の麓に到着。少し休んでから草原や雑木林を走り回って、次から次へと倒して行く。俺以外にも狩りに来ている奴が居たが避けて回った。

 初日は山の南側から西へ向かい、次の日は東に向かって駆け回る。熊一頭、猪八頭、兎十三匹を倒した時、北側から向かって来る大きな気配を感じた。


 素早く木に身を隠し、気配の主を探る。気配はするが姿が見えない。が、下草が僅かに揺れている。蛇かな?だとしたら俺の居る位置はばれている可能性が高いな。あいつ等は熱を感知するし。

 それにしてもでかいな。体長4、5mは有りそうだ。ボア違いなのは残念だが、序に狩っておくかな。注意するのは毒か?噛み付き以外に吐き出してくるかもしれないし。


 足元に落ちていた石を拾って奴が居るであろう草叢に投げた。確実に当たった筈だが動きが無い。更に一回り大きな石を拾って投げつけるが動かない。


 警戒しながら石を拾って近寄って行った。間合いに入ったら飛び出してくるのか?この世界の獣は体当たり好きだしな。


 十分近付いたが、一向に動きを見せない。進行方向の逆、尻尾の方から回り込んで覗き込んでみた。


「気絶してんのか?それとも死んだ振りか?」


 どちらにしても不用意に近付けないなと、少し離れた所に有った一抱え程の岩を持ち上げ、奴の頭に向かって投げつけた。


「おぉりゃああぁぁ!!・・・良し、これで死んだだろ。しかし、何がしたかったんだ?こいつ」


 岩を退けて頭の潰れた蛇をバッグに仕舞って猪狩りに戻った。一発目の石で警戒して動きを止めて、二発目で気絶したのかね?あそこまで近寄って動かなかった所を見ると、多分そんな所だろう。蛇は足が無いから動きを止めてって、倒し方が出来ないから面倒なんだよ。遠距離攻撃は不本意だけど、まぁ面倒は避けた方が良いしな。


 猪を予定数狩り終える頃には日が傾き始めていたが、気にせず川まで戻って川原を下って行った。このまま行けば往復四日、狩り二日の合計六日で帰れるなと駆け続けた。


 そろそろ休憩して夕食でもと思ったら、前方に複数の生物を感知。食事中に来られても面倒だとそのまま前進すると、ちょっと大きな犬か狼っぽい生物の群れが冒険者らしき数人を囲んでいた。こう言う時って声掛けて助けがいるか聞いた方が良いんだよね?


「お~い!大丈夫か~?!助けがいるなら返事してくれ~!」


「お、おおっ!頼むぜ!助かる!って、あんたは!」


 良くみりゃ一人が腕をやられていて、そいつを守るように三人が囲んでいた。って、あの元誘拐犯の連中じゃねぇか!人数少ないけど。


「ハァ・・・見捨てる訳にもいかねぇしなぁ・・・お前等、防御に徹してろ!俺が追い払ってやるから!」


「おい!シルバーウルフが混ざってんだ!ウィンドエッジに気をつけろ!」


 ウィンドエッジ?魔法使う奴が居るのか。ああ、一匹一回りでかい奴が居るな。ん?・・・よっと。


 一回り大きな奴から何かが飛んできたので、回し蹴りで迎撃した。こんなもん喰らうか。


「何がウィンドエッジだ、大層な名前付けやがって。唯のカマイタチじゃねぇか」


「・・・え?・・・お前・・・今何をした?・・・・・」


「見ての通りの回し蹴りだ。あんなもん、ある程度の速度で蹴りを放ちゃ消せるんだよ。さて、てめぇら・・・覚悟は出来てんだろうなぁ!!」


「「「「ヒッ!」」」」


 大声と共に全開で殺気を放つと、元誘拐犯達が短い悲鳴を上げ、狼達がじりじりと離れて行く。一歩ずつゆっくりと、シルバーウルフへと向かって行くと、奴も俺へと向かってきた。


 お互いが距離を詰めて行き、彼我の距離が3mを切った時、奴はその場に伏せて目を閉じた。よ~し、良い子だ。野犬のように群れを成す獣は頭を押さえりゃ倒す必要は無い。頭が馬鹿なら頭を潰せば良いだけだ。俺はシルバーウルフの頭を撫でてやり声を掛けた。


「お前等なんでこんな人里近くに下りて来たんだ?こいつ等がお前達に何かしたのか?」


「おいおい、冗談じゃねぇよ!俺達ゃ昼過ぎにここに付いたばかりで、この辺で狩してただけだ。そもそも、グレイウルフやシルバーウルフは山の東から北側にしか出ねぇ筈だぞ!」


 ん?・・・山の東から北側って、もしかしてあれか?昼間に倒した大蛇のせいか?俺はバッグから大蛇を取り出して、シルバーウルフの前に置いた。


「お前等こいつに住処を追われたのか?だとしたら俺が敵は取ったから、もう帰っても大丈夫だぞ」


「お、おまっ・・・そ、そいつはタイラントボアじゃねぇか・・・・・ほ、本当にお前が倒したのか?」


「まぁな。こいつは初めて倒したからやれないけど、代わりにこっちをやるから食って良いぞ」


 俺は大蛇を仕舞って、代わりに熊を出して狼達に与えた。


「ちょおおぉぉっ!ホワイトネックベアじゃねぇか!何でくれちまうんだよ!勿体ねぇだろ!幾らになると思ってんだ!お前何考えてんだよ!つーか、それ!マジックバッグじゃねぇか!」


「煩せぇなぁ、俺の勝手だろうが。それより怪我人の手当てが先だろ。ほれ、お前達、そいつを食ったら帰るんだぞ。それから、もう人間を襲うのは止めとけ。人間はお前達より数が多いから、全員やられちまうぞ」


「ワフ!」


「よ~し、良い子だ。。お前等に食わせてやる義理は無いが、これも何かの縁だしな。そんじゃ俺達も飯にするか」


 喧しい元誘拐犯達を放置して、狼達が熊を食べているのを尻目に、バッグからテーブルをだして、その上にコンロと鍋を置いて調理を始めた。と言っても、作り置きの肉団子入り野菜スープを温め直すだけだけど。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 元誘拐犯と狼に大盤振る舞いとは主人公太っ腹です ^_^
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