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 結局全員がスープ餃子のお代わりをした以外は特に何も無く昼食は終った。今は食後のお茶をしている所だ。お茶菓子は最近あまり気味の卵白を使ったメレンゲクッキーだ。


「で、今後の話ってのは何だ?先に言っておくが、俺は宗教や国に係わる気は無いし、料理も一切教えないぞ。あの偉そうな事を言った総料理長に責任持って研究させるんだな」


「それは・・・そうですね、この件で私からお願いする事は出来ません。ですが、ドラゴン討伐の件然り、先程我々に見せた力も含めて、貴方をこのままにしておく訳にもいかないのですよ。貴方にこの国を害する気の有る無しに係わらずです」


 言いたい事は解る。他国以前に国内の貴族達とのパワーバランスが崩れるし、国のトップが制御出来ない〝力〟なんて存在して良い訳が無い。


「で、如何しようってんだ?俺は唯ここで平穏に暮らしたいだけだ。喧嘩を売ろうってんなら買うが、頼みの騎士団長ですらあの様だ、あんた等に如何こう出来るとは思えねぇ。後は人質でも取るか?その時はこの国の皇族並びに貴族の血縁の全てを消させて貰うだけだ」


「勿論、如何にか出来るとは思っていません。なので監視を付けさせて貰います。ラインハルト、貴方にお願いします。会って数日の筈ですが随分仲が宜しいようですし、問題無いでしょう。それとアンジェリカ、貴方は彼の上司として直接その眼でここの様子を伺うように。頼みましたよ」


「「はい、謹んで拝命致します」」


「おい!何勝手に決めてんだ!俺はそんなの認めねぇぞ!」


 こいつ、何考えてやがる?ハルだけならまだしも、皇女を送って来るとか意味が解らねぇ。


「認める認め無いでは有りません。彼等が遊びに来ると言うだけですから。監視と言うのは建前で、友好の証と受け取って下さい。何でしたらアンジェリカを娶って頂いても構いませんよ。勿論お互いの同意有っての事ですが、貴方と誼を結ぶとはそれだけの価値が有ると言う事です」


 マジで何考えてるか解らねぇ。言葉の通りなのか、裏が有るのかも一切読めない温和な笑みで坦々と語りやがって。


「くっ・・・おい!そこでクッキーぱくついてるおっさん達!こいつ、こんな事言ってんぞ!国として良いのか、それで?!」


 まるで他人事だなぁ、おい!お前等、こいつを止めろ!いや、せめて話しに混ざれよ!緊張感無さ過ぎだろ!


「は?良いに決まってるではありませんか。聖下がお決めに為られ、それを本人が承諾した。そこにどの様な問題があると言うのですか?余裕が有れば私も遊びに来たい位ですよ。ははははは・・・・・」


「うむ、全く持ってその通りで。いやぁ~クランゼル殿が羨ましい。我が家とも是非御付き合い願いたいですなぁ。先日お教え頂いたクリームシチューも美味でしたが、先程の料理もこの菓子も旨過ぎて手が止まりませんよ」


「ははははは・・・そこは家の者の見る目が有ったと言う事で。ジン殿、先日は我が家の者が失礼した。大層美味な物を頂いた上に指導までして下さり感謝しております。妻と娘も喜んでおりましてな、これからも御付き合い頂けたらと思っております」


 何かクランゼルさんが混ざってたよ!まぁ、良く考えてみりゃ居ない方がおかしいか。ん?お教え頂いたって事は・・・もしかして他の二人もお向かいさんか?!完全に友好派で固めてきやがったって事かよ・・・あれ?まさか騎士団長生贄にして反対派を排除したのか?俺の力を見せ付けた上での会談となれば反対派は参加する気になれないだろうし・・・マジか?だとしたら完全に掌の上で踊らされてる?!いや、待て、まだ慌てる時間じゃない。だが、断ったとしてもこいつ等が家に来て門の前に居座られたら・・・外聞が悪過ぎるよなぁ・・・しかも子供達から非難されるし・・・・・あ、こりゃ詰んだわ。


「信じて頂けないかと思いますが、本当に・・・本当に他意は無いのです。神によって使わされたであろう貴方が、この国にとって福音となる事を私は望んでいます。国の最高責任者としての体面を保ちつつ、貴方の自由を守る方法は、他に無いと思っておりますのでご容赦下さい・・・異界の料理、大変興味深く美味しゅう御座いました。私達はこれで失礼させて頂きます」


 完全にしてやられた感じだが、ここに住んでる事がハルにばれた時点で如何しようも無かったのだと思う。

 大勢の兵士達が囲む馬車に乗り込んだ聖下達を見送り門を閉めた。やっぱり家に来たのはお向かいさんだったよ。そのまま歩いて帰りやがったし。


「・・・・・ハァ・・・で、お前達は何でここに居る?」


「「聖下の勅命ですから」」


 俺の両隣にハルとアンジェリカが立っていた。ハモんな、うぜぇ。


「・・・・・家の門の外に立ってる奴等は?」


「私の護衛です。帰る時に必要ですから」


「私の部下の中でも、信用の置ける者が交代で付く事になっている。だから心配は要らんぞ」


 誰に対する心配だよ。つーか、心配なんてしてねぇし。しかし、やっぱり筋書き通りって事か、準備が良過ぎるし。


「・・・・・ハァ・・・もういい。ハルは今ん所問題無いが、アンジェリカは家の子供達に身分を振り翳すような真似すんじゃねぇぞ。自分の家で落ち着けない、なんて状況になったら出入り禁止の上に聖下に直接苦情を言いに行くぞ、良いな」


「はい、勿論解っております。私と歳の近い方がいらっしゃると聞いておりますし、仲良く出来ると良いのですが・・・それと、その・・・私もラインハルト様のように愛称で呼んで頂けませんでしょうか?キャーッ!」


 はにかみ頬を染めるアンジェリカは、歳相応の少女のようで可愛らしく・・・なんて微塵も思える状況じゃねぇ。つーか、うぜぇし、ミリーとエレナの方が可愛い。


 しかし、何か異様に疲れたな。夕飯も作り置きの物にしよう。トンカツかハンバーグ辺りで良いか。デザートはプリンが有るし。


「あの・・・ジン様は使用人を雇わないのですか?料理は兎も角、掃除や洗濯等をする者が居れば楽に為りますし、狩りに出かけている間の子供達の世話もして貰えるでしょう?」


「いらないね。生きて行く上で、して良い楽と、してはいけない楽が有る。自分の身の回りの事を自分でやらないと堕落すると言うのが俺の自論だ。子供達にも俺が居ない間は掃除と洗濯は各自でやらせるつもりだよ。料理は・・・まぁ、火事とか食中毒が怖いから外で食べて貰うけどな~」


「・・・・・私達は・・・堕落しているのでしょうか・・・・・」


「さぁねぇ・・・あくまでも俺の自論でしかないし、考え方は人それぞれだから押し付ける気も無い。そもそも俺達とお前達じゃ生まれた時から環境も違うからなぁ」


 リビングでお茶を飲みながら、ソファーでだらだらと話をした。このストレスはハルを弄って晴らすとしようかな。ああ、こいつ扱いてガルバデスを超えさせるのも面白いかな。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり掌で…でしたね 騎士団長たるハルパパさんは政治も出来たって想像してます ハルや彼女の護衛の手際が良すぎますからね 面白いですよ
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