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門を開け放ち全員を庭へと迎え入れた。広い庭だ六十人以上居るが余裕だ。殆んどが兵士だから普通は警戒するんだろうけど、俺にとって雑魚なんて何人居ても居ないのと変わらない。
「久しぶりだな、皇女さん。アンジェリカだったか?隣があんたの父親の教皇さんで良いのか?本当なら家の中に入れてやる所なんだろうけど、今はまだ入れてやれそうに無い。その前にやる事が有るんでな、もうちょっと我慢しててくれ」
「い、いえ、私は・・・・・」
「貴様!平民の分際で無礼であろうが!」
「聖下や殿下に対して何たる不敬!許しがたい暴挙であるぞ!即刻手討ちにせよ!」
後ろに控えていた貴族達が煩い。こいつ等何しに来たんだよ。
「そなた等、ここへ来た目的を忘れるで無い。そなたがジン・マキシマ殿であるな。我はメルクリウス聖皇国の最高責任者、教皇アーヴァイン・ハラルドルと言う。先日は我臣下が失礼をした。本日はその謝罪と今後について話をしに参った」
教皇を名乗る男性は三十代後半か四十代とまだ若い感じがした。十代後半に見えるアンジェリカの父親と言う事からすればおかしくも無いのか。
「謝罪はいらないし、俺はそいつを許す気も無い。別の奴が来たとしても何かを教える気は無いから諦めてくれ。それが気に入らないから敵対するってんなら全力で排除するだけだ。さて・・・待たせたな、あんたの用事を済ませようか」
ガルバデスが前に進み、俺から8m程離れた所で止まると腰の剣を抜いた。
「クックックッ・・・心配するな、殺しはせん。ラインハルトより貴様の戦い方は聞いている。私に通用すると思わん事だ」
何だこいつ。こいつも勘違い野郎か?真面目に手合わせしてやろうかと思ったけど止めだ。如何足掻いても足元にも及ばない事を教えてやろう。
「お前等全員勘違いしてるみたいだから教えてやる。お前等みたいな普通の人間はちょっと他人より強くなると勘違いしちまうんだよ。『俺に敵う者など居ない』なんてな。武の境地、人を超えるって言うのが如何言う事かその目で確かめろ。良いか、今からお前の額を右手の人差し指で弾く。受けても交わしてでも良いから、喰らわなければお前の勝ちだ」
「貴様、なに―――ぐあっ!」
「真羅流秘技『朧』と言う。如何した、騎士団長。お前の力はその程度か?」
先ずは一発。相手の呼吸を読み、間合いを詰めて意識の外に潜り込む。
額を打ち抜かれ、踏鞴を踏んで下がるガルバデスを一歩ずつ、ゆっくりとした一切の無駄を省いた歩法で地を滑る様に真っ直ぐに追い詰めて行く。
横凪に振るわれた剣が一瞬動きを止めた俺の眼前の空を切り、再度前に出た俺の二発目が乾いた音を立てた。ガルバデスからは俺の身体を剣が通り抜けたかのように見えただろう。
「ぬおぉっ!くあっ!」
自身の攻撃は空を切り、受ける事も避ける事も、退く事すら許さない必中の一撃がガルバデスを襲う。
「くっ、がああぁっ!や、やめろ・・・・・」
後ずさるガルバデスを全ての感情を消した何も映さない瞳で更に詰め寄り三発目を放った。
「ぐあぁっ!く、来るな!来るなああぁぁぁ!!」
問答無用で追い込まれ、合計五発のデコピンを喰らって恐慌状態に陥ったガルバデスは俺に背を向け走り去ってしまった。ちょっとやりすぎたかな?まぁ人間なんてこんなもんだ。獣の方が何倍も強くやり難い。
相手が居なくなってしまったので、残った連中、何か青い顔をした教皇さん達に近づくと全員が後ずさった。あ、ちょっと傷付くなこれ。後でミリーとエレナに癒して貰おう。
「あ~何かすまん。ちょっとやり過ぎたみたいだ。で、話がるんだろ?もう直ぐ昼だし飯でも食いながらにしようぜ。但し、入って良いのは六人迄だ。次からはそんな大所帯で来んなよ、何人居たって俺には意味が無いから。それと料理長は帰れ、お前と話す事は何一つ無いから二度と顔を見せんな」
料理長を追い返し、ハルと聖下と殿下、他三名の貴族とダイニングへ移動して適当に席に座らせ、自作のアップルティーを出して砂糖とミルクはお好みでと言ってテーブルに置き、調理場にハルを連れて入った。
「何で私が手伝わねば為らんのだ・・・・・」
「手伝うったって、食器を出す位なんだから良いだろ。今まで食って来た飯代替わりだと思え」
コンロとオーブンに火を入れ、作り置きしたミニ餃子を今朝の残りの野菜スープに放り込んで行く。スライスした玉葱を水に晒している間に各種野菜とベーコンを刻み冷蔵庫へ。
玉葱を水から上げて笊に入れて水を切り、パンを厚めに切ってバターとトマトケチャップを塗って、その上に野菜とベーコン、更に刻んだチーズを乗せてオーブンへ。
深皿にレタスを敷き詰めて作り置きのポテトサラダを乗せ、温まったスープ餃子をよそって、ぶつぶつと文句を言うハルに運ばせた。
良い感じにチーズの溶けたピザトーストを皿に乗せる。コンロとオーブンの火が消えている事を確認して、皆の待つダイニングへ向かった。あんまり待たせるのも悪いし、こんなもんで良いだろ。
「昼は何時も作り置きの簡単な物なんで、すまない。事前に知ってたらもうちょっと手の込んだ物を用意したんだけどな。ま、冷める前に食おうぜ」
「これが簡単な物ですか・・・では、皆頂かせて貰いましょう。食前の祈りを・・・・・」
こう言う所が宗教家の気に入らない所だ。感謝する相手が間違っていると思うのは、やっぱり日本人だからだろうか?某宗教の宣教師が日本に来て逆に洗脳された的な事を聞いた事有るけど、日本人の民族性とか宗教観は最強なのかもしれない。
「それで、今後の話って・・・・・いいや、食べ終わってからで。なんかそれ所じゃ無いみたいだし・・・・・」
何か全員真剣な表情でもくもくと食べてるし、目が爛々と光ってて怖えぇよ。俺の料理を食べた事の有るハルでさえだ。
流石にマナーは良いけど手の動きが早えぇ~。上品な欠食児童とか訳解らん感想しか出てこねぇよ!街の食堂とかで食べた薄味の料理は平民向けだからじゃなくて、食材は高い物を使っているだけで貴族でも同じ味付けなのかもしれないな。
そう考えると納得が行くな。俺は砂糖と塩と胡椒は無限に使えるから足りない物だけ買えば良いけど、こいつ等はそうは行かない。塩と砂糖は国内生産していると聞いたけど、他の香辛料は如何なんだ?もし輸入に頼っているのだとしたら?だとすれば、交通機関の未発達なこの世界では常に品薄で高額でもおかしくないか。
「主よ、この出会いに感謝を・・・・・」
何か食べ終わったアンジェリカが祈りながら涙を流してて、その神聖な姿を見て綺麗だと素直に思った。が、その後物足りなそうに空の器を凝視してたのが全てを台無しにしたがな!あの涙は無くなったのが悲しかったんじゃないのかって疑ったぞ。あ~・・・スープならお代わり有るけど食うか?
ここまで読んで頂き有難う御座います。




