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ハルのツンデレ疑惑から三日。俺は豆を煮ていた。合間にウスターソースっぽい物の改良もしたが、メインはこっちだ。
和食っぽい物を求めて街中の商店を回り、醤油と味噌、もしくはそれに近い物は無いかと探していたのだが、見付からなかった。そして、何故か干物を含めた魚も売って無い。無いとなると食べたくなるのが人の性だが、〝和〟を感じさせる物となると茸で出汁を取る位しか無く、そこで考えたのが餡子と言う訳だが、正直作り方なんて良くは知らない。
そして、小豆は無かったが緑色の豆は売っていたので幾つか買って試し続けているのだ。
最初に試したのはソラマメっぽい奴で、通常は炒めて食べる物らしい。失敗しても青臭い感じになる程度だと思っていたのだが、出来上がったものは何故か酸っぱかった。砂糖を入れたと言うのにだ。
次に試したのは瓢箪のような鞘に入った奴で、これは枝豆のように塩茹でして食べるらしい。一度茹でてから鞘から出して煮始めると、緑だった豆が紫色に変色して悪臭を放った。余りの酷さにコンロから下して直ぐに窓を開け放ち調理場から退避した。
他にも砂糖を入れると歯が立たない程に固まり、鍋ごと捨てる羽目に為ったり、砂糖の後に塩を入れると変色して苦くなったりと、とてもじゃないが餡子以前に食べられるような物ではなかった。謎反応過ぎだろ・・・異世界豆ぱねぇな。
そして、最後の望みとして取っておいた本命の、枝豆のような奴とえんどう豆のような奴を今煮ている所だ。特に枝豆の方は乾燥させた物が大豆として売っていたので期待している。
枝豆の方が柔らかくなって来たので、潰して味を見ながら砂糖を入れて行く。焦げ付かないように只管混ぜ続け、塩を一摘みいれて水気が無くなるまで混ぜ続けた。
枝豆の方は見た目と匂いだけは問題無く完成したのでコンロから下した。しかし、えんどう豆は未だ軟らかくならない。と言うか、全く変化が無い。何なんだこいつは?
ぐらぐらと煮立つ鍋の中をえんどう豆が踊る。水を足す事二回。かれこれ二時間近く煮続けているが如何した物か・・・・・その時、ふと日本の諺が頭に浮かんだ。『青菜に塩』・・・・・試してみるか。ダメなら砂糖で試してみるのも有りかもしれない。
鍋に塩を一摘み入れて様子をみる。暫くすると、全く変化の無かった豆の表面に皺が寄り始めた。おお!試してみるもんだな!
木ベラを持って豆を潰しにかかる。木ベラで端に寄せながら纏めて鍋の淵で押し潰した。
「おわああぁぁぁ!!あつっ!!あっちぃなぁ~・・・何なんだよもう・・・・・」
力を入れた瞬間、爆音と共に弾け飛んだよ。流石の俺でも予想外過ぎて回避出来なかった。鍋は変形するし木ベラは吹き飛んだ。正に豆鉄砲だ・・・笑えね~。
結局、枝豆だけは成功したので、夕食に皆でパンに塗って美味しく頂きました。もう枝豆以外の豆は買わねぇ。
で、その翌日の夕方、仕事帰りのハルがやって来た。
「明日、宮廷料理人がこちらに派遣される事になったので知らせに来た」
「おう、解ったから帰って良いぞ。ご苦労様」
「ジン兄ぃ・・・意地悪しないで入れてあげようよ」
「そうだよ、ご飯位食べさて上げようよ。材料費なら俺とヒースの給金から出すからさ・・・・・」
元貧民の孤児に哀れまれる貴族家の騎士とかどうよ。まぁ、俺も冗談で言ってるだけだけど。
夕食はアスパラガスのベーコン巻きを改良ソースで味付けした物と、オムレツに自作トマトケチャップだ。思った以上にトマトケチャップの出来が良かったので、明日の夕食はピザでも作ろうかと思う。
で、翌日の昼前、宮廷料理人と思しき男が馬車に乗ってやって来たんだけど、門前払いしたら夕方にハルがやって来た。
「貴様!何故総料理長を追い返した!この件が宮廷内で問題になっているんだぞ!」
「あのなぁ、開口一番『遅い!とっととここを開けんか!』なんて、挨拶所か名乗りもしないで怒鳴る奴なんて家に入れる方がおかしいだろ。俺は言った筈だ『教えて貰う奴が頭を下げて頼みに来い』と。あいつが帰ってから何て言ったかは知らねぇが、人に物を教えて貰おうってのに最低限の礼儀を弁えない奴なんて相手にする気はねぇぞ、俺は」
「なあっ!ほ、本当にそんな事を言ったのか・・・あ奴は・・・・・」
「ああ、一字一句間違っちゃいねぇぞ。俺を信じるかあいつを信じるかはお前等に任せる。あの野郎『聖下の勅命だ』とか『逆賊め』とか喚いてたが関係ねぇ・・・俺は敵対するなら相手が誰であろうと容赦はしねぇからな。向かって来る奴は一人残らずぶっ潰してやるから覚悟しとけや」
「・・・・・解った・・・聖下にはその様に伝えて置こう・・・失礼する・・・・・」
「おう。因みにクランゼルさんとも似たような事になったけど、ちゃんと謝罪に来たし、奥様から手紙も貰ったぞ~」
もっとも、エリックさんの時とは状況が違う。今回は事前に伝えて有るし、直ぐに謝罪に来た。聞いていないなんて言い訳は通用しない。職場での地位や他人の権力を笠に着て好き放題やろうとする奴なんて謝っても許さないし、他の誰かが代わりに謝りに来たら絶対に教えてやらん。
ハルは夕食も食べずに頭と腹を押さえてトボトボと帰って行った。ストレス性の頭痛と胃炎か?まぁ、飯所じゃないわな。俺の実力を見誤ってたら国家存亡の危機な訳だし。ハルの分のピザも用意しておいたんだけど、皆で分けるかな。
あれ?今更だけど、ハルは俺担当武官とかなのかね?教皇さんに「お隣さんに帰りに寄って伝えといて」的な感じで軽く言われてたら笑える。と言うか、寧ろ親近感が湧くな。
で、更に二日後。ハルと一緒に五十人位の騎士や貴族と総料理長に皇女さんと長い帽子を被った白いローブのおっさんがやって来た。あれが教皇さんかな?ハルの横にいるガタイの良い騎士のおっさんはハルの上司か?何か大事になってんなぁ。
俺が門へと近づいて行くとガタイの良い騎士のおっさんが前に出た。
「そなたと話がしたい。先ずはここを開けて貰えぬだろうか」
「そいつは構わねぇよ。だが、あんたは話だけじゃすまなそうな雰囲気だけど、そこんとこ如何よ?」
端からやる気満々で、殺気まで放ってやがる。
「ククククク・・・私はメルクリウス聖皇国近衛騎士団団長、ガルバデス・ヴェルテールと申す。そなたとの手合わせを所望する」
良く見りゃ顔立ちがハルとそっくりだ。ハルの父親か?ここん所、料理ばかりだったし、ちょっと遊んでやっても良いかな。ハルよりは強そうだし。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




