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ラインハルトを適当にからかいつつ夕食を終えて、俺とラインハルトは応接室へ。俺は聞かれても構わないが、こいつは機密とかも有るだろうしな。
「なぁ、ハルさんや、主神とやらが何の為に俺をこの世界に召還したと思う?そもそも召還したのがそいつとは限らねぇが」
「その呼び方は止めろ。私に主の御心が推し測れる訳が有るまい。だが、皇女殿下に御神託を下された事から察すれば、この国の為に遣わされたのだと思うのが妥当だろう」
ラインハルトなんて戴そうな長ったらしい名前で呼ぶのは面倒だし、食い物に釣られて来た奴なんてハルで十分だろ。
「俺の一撃で伸された上に、食い意地の張った奴なんてハルで十分だ。その神託って奴も本物か如何か確かめる術も無いし、皇女さんが本当の事を言ってない、もしくは隠してる事が有るかもしれないだろ。そもそも神託って頻繁にあんのか?」
今も食後だってのにクッキー齧ってるしな。トンカツ二枚じゃ足りなかったのか?少しは遠慮しろよ。
「ぐっ・・・もう、良い。だが公的な場では使うなよ。それと、殿下を愚弄するな。殿下がその様な嘘を付く筈が無い。が・・・・・神託を下したのが別の者の可能性は捨て切れんか。確かに神託は授けられる巫女の生涯に一度有るか無いかで、他の者には声も聞こえんから確かめようも無い・・・・・で、貴様こそ如何なんだ?この世界に召還された理由に心当たりは無いのか?」
「ん~・・・無い事も無いが・・・・・ほら、俺って強いじゃん。向こうじゃ、国とか裏社会の奴等とかに利用されそうになって逃げ回ってた位だから、その関係かな?と」
「だとすれば、その力を使ってこの国に平和を齎せと言う事ではないのか?」
「俺にはこの国が平和に見えるが違うのか?実際俺は何も言われずに召還されたし、今後厄災に見舞われるのだとしたら、その事は俺ないし神託で伝えて無いのもおかしいだろ」
「む・・・確かに・・・今は何処の国でも戦争を仕掛けるような真似はしていないと聞く。周辺諸国でも敵は人では無く魔物で、民の為に国内整備を進めているともだ。私の知る限りでは国家間での戦争自体が百年以上起こっていない筈だ」
あれが自然現象である訳が無い以上、何者かの意思が介入している訳で、それが解らない以上対策の取りようが無い。常に後手に回るのは癪だが、事が起こってから対応するしかなさそうだ。あれか?適当な奴を放り込んで、慌ててる所を覗き見してほくそ笑んでるとかか?趣味の悪い神ってのもテンプレだし。
「う~ん・・・まぁ、仕方ないか。皇女さんに報告序に教皇さんにも俺に係わるなって再度念押ししといてくれよ。その方がお互いの利になると思うぞ。出来れば他の貴族連中にも妙な気を起こすなともな」
「あ・・・ああ、上申しておくとしよう。それで、その・・・このクッキーを土産に持って行きたいのだが・・・・・」
「・・・・・なぁ・・・この国ってそんなに財政やばいのか?脱税して至福を肥やしている貴族とかがいるなら、俺がシメて来てやっても良いぞ?」
一瞬、またかよ!とも思ったが、何かここまで来ると泣けてくる。
「いや、違う!違うぞ!!貴様の考えているような事は断じて無い!唯、砂糖に関してはこの国でも生産が始まってから十年程で、安くなって来たとは言え気軽に試せるようには為っていないだけだ!」
「ほんとかぁ~?向かいのクランゼルさんは家に材料持って聞きに来たんだけどなぁ~」
「ク、クランゼル家は南方の海沿いに領地を持つ伯爵家で、塩と砂糖の生産をしているのだ!そこに住んでいるのは領主の三男で領地から送って貰っているのだろう?!でなければ爵位を持たぬ文官がそう気軽に用立てる事が出来るとは思えん!」
なる程ね、下手な上位貴族より金持ってそうだわ。だからこの辺にも住めるって訳か。で、少なくともハルん家よりは金持ちと。こりゃ味方に付けといた方が良さそうだな。
ハルを十分弄ったし情報も聞けたと今夜の所はお開きにして、ハルは大量のクッキーを持って帰って行った。あれ、絶対自分の分も確保してるよな・・・・・食費請求したろか。
―――夢を見た
紅い、視界に映る全てが紅かった
紅に染まる何も無い大地を泣きながら歩く幼児がいる
そんな夢だった―――
「・・・・・う~ん・・・何だかなぁ・・・意味解らん・・・・・」
その日は子供達と一緒に出かけた。子供達は仕事だが、俺は仕立てた服の受け取りと商業組合に現金を引き出しに行こうと思う。俺がここを離れる事になった時、こいつ等が何不自由無い生活を送れる位の金を別にしておいた方が良いと思ったからだ。
それに家に篭りきりってのも良くないしな。散歩がてら街を歩いて食材探しってのも悪くない。
おかみさんに親父さん、バートさんに挨拶をして子供達と別れて服屋に向かう。仕立てて貰った服を受け取った序に、タオルとか布巾になりそうな布も買った。早速仕立てた服に着がえてみたが悪くない。着ていた服をバッグに仕舞って街をうろついた。
東地区の商店街で野菜と果物を中心に食材を買い足して行く。何と無く歩いてたら東地区に来ていただけで意味は無い。明日はウスターソースっぽい物を改良しようと思う。水っぽいと言うか薄いんだよね、あれ。色々足して煮詰めたら使い勝手が良くなると思うんだよなぁ。醤油が作れたら良いんだけど、大豆が原料って事位しか知らないし、発酵食品の製造に手を出すのは危険だからなぁ。
夕食は何にしようかと考えながら南地区の商業組合へと向かう。マジで主婦っぽいな俺。
商業組合で銅貨、銀貨、金貨を各百枚ずつ用意して貰って、序に取引用の魔導具も買う事にした。受け取った硬貨を木箱に詰めてバッグに仕舞って家へ向かう。こいつは俺の部屋の床下にでも隠しておこう。目立つから支部長は太鼓持ちみたいにヘコヘコしないように。つーか、呼んで無いのに態々出てくんな。
家に帰って夕食を作り、子供達を迎え笑顔で夕食を摂る。山を降りて世界を知ってからずっと望んでいた物が手に入った。何時まで続けられるか解らないが可能な限り守って行きたいと思う。そんな平穏で充実した一日だった。
「で、何しに来たんだ?もう夕食は終っちまったからお前の分はねぇぞ」
「べ、別に食事を集りに来た訳ではない!近い内に宮廷料理人に指導して貰えないかと聖下方に頼まれてだな・・・その、貴様の予定を聞きにきただけだ!」
ハルがやって来て、嘘臭いっつーか、微妙にツンデレっぽい事を言われて一日が終った。勿論、教えて欲しけりゃ教えて貰う本人が頭を下げて頼みに来いって言って追い返したけど、来るかな?来るんだろうなぁ・・・面倒臭せぇ~。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




