↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/134

18

 翌日、朝食を作っていたら外から声が聞こえてきたので、窓から外を覗いて見ると、門の所に馬車が止まっていた。何かと思えば牛乳の配達だった。


 牛乳が手に入ったので、今日の朝食は急遽フレンチトーストに決まった。後は野菜スープと細かく切って炒めたベーコンに軽く潰したゆで卵をマヨネーズ(自作)で和えてサラダに乗せてみた。なかなかの高評価で嬉しい。


 朝食後に皆を送り出してから洗濯と掃除をして、挨拶回りに行く。何か主婦っぽいな俺。


 因みに掃除はハタキに箒とモップだが、洗濯は魔導具だ。風魔法で水を回して洗い、脱水は別の魔導具でやる。昔の二層式洗濯機みたいな感じだ。乾燥機や掃除機も火と風の魔法の組み合わせや応用で作れそうな気がする。アルバートさんに話してみようかな。


「おはよう御座います。隣に越してきたジンって言います。うちは子供ばかりでご迷惑をお掛けするかも知れませんが宜しくお願いします」


 まぁ、そんな感じの事を言って、向こう三軒両隣の門番にクッキーの入った箱を渡してきた。門番は怪訝な顔をしていたので捨てられない事を祈ろう。毒殺とか警戒してたのかも知れないな。こう言う所は貴族って大変だよな。


 そして夕食用にクリームシチューを煮込んでいたら、また門の方から声が聞こえてきた。今度は黒いスーツのような服を着た人が立っているのが見える。何処ぞの家の執事だろうか?


「お忙しい所失礼致します。私はクランゼル家で執事頭をしておりますヨーハンと申します。先程は態々御挨拶頂き有難う御座います。実は、頂いた品を奥様とお嬢様が大変気に入られまして、宜しければ購入先をお教え頂けませんでしょうか」


 道を挟んだ真向かいの家はクランゼルさんと言うらしい。


「え・・・あ~・・・すみません、あれは俺が作った物なんで何処にも売ってないんですよ。気に入って頂いて有難う御座いますとお伝え下さい」


「なんと!私も一口頂きましたが、あれ程の物を御作りになられるとは。もしや、何処かの店の菓子職人なのでしょうか?もし、そうでないのなら当家に仕える気は御座いませんか?」


 そんなに驚く事か?何か行き成り勧誘してきたけど、普通は貴族の家なんだから身辺調査とか必要なんじゃないの?まぁ、やる気は無いけど。


「あ、あの、俺は狩人が本業なんですけど、職を変える気も誰かに仕える気も無いんですよ。え~っと、参ったな・・・作り方を教えようにも材料計らないで作ったからなぁ・・・・・」


「は、計らずに?しかも狩人!?・・・・・い、いえ、失礼しました。余程の才能がお有りなのでしょうな・・・宜しければうちの料理長に御教授頂けませんでしょうか?」


「ご、御教授って・・・ええ、まぁ良いですけど、そんな戴したもんじゃありませんよ?」


「おお、有難う御座います!では、直ぐに準備をさせて参りますので、如何か宜しくお願いします!」


 何か返事をする前に走って帰って行ったよ・・・・・暇だから良いんだけど、こっちの都合ぐらい聞けよ。ハァ・・・目の前で作って見せりゃ良いか。


 で、本当に直ぐに料理長が材料持ってやってきたんだけど、素人に教わるのが嫌なのか態度が凄く悪い。ヨーハンさん見習えや。


「クランゼル家料理長のエリックだ。俺も忙しいんでな、早くしてくれ」


 引っ越して来て早々、ご近所さんと揉めるのも面倒だし、とっとと終らせようと調理場に連れて行ったら、


「うん?・・・何だ、この臭いは・・・この鍋か?・・・・・おい!何だこれは?!」


 コンロに掛けてあった夕食用の鍋を覗き込んで俺に問い質してきた。


「え、唯のクリームシチューですけど?何かおかしいですか?」


 俺の答えに眉を顰めたエリックさんは、傍に置いてあったスプーンで鍋から掬って一口飲むと目を見開いて固まった。って、勝手に飲んでんじゃねぇよ!何だこいつ!


「あだだだだ・・・は、離せ!止めろ!貴様誰に何をしているのか解ってるのか!?」


「うるせぇ、解かっとるわ!好き勝手やりやがって、二度と来んなよ!」


 流石に頭にきたので腕を捻り上げて追い返してやったら、昼過ぎにヨーハンさんに連れられて謝罪に来た。何か奥様とお嬢様にもかなり叱られて、叩かれたらしく頬も腫れていて涙目で平謝りしてた。クランゼル家はエリックさん以外は良い人かもしれない。いや、貴族の家の料理長だからって調子に乗ってただけかも。


 で、結局翌日に教える事になって、やって来たエリックさんは別人のように低姿勢だった。お目付け役のヨーハンさんが一緒だからかもしれないけど。


 クランゼル家の奥様からのお礼と謝罪の書かれた手紙をヨーハンさんから受け取った。貴族らしい遠回し過ぎる文章だったので、ヨーハンさんに意訳して貰わなかったら何が書いて有るか解らなかったけどな。まぁあれだ、気に入ってくれたのは嬉しいけど、貴族が平民にお菓子をねだるな。


 エリックさんにクッキーを作る所を見せ、クリームシチューの作り方も教えた。エリックさんは「早速今夜にお出しします」と言ってヨーハンさんと頭を下げて帰っていった。エリックさんだけでなく、ヨーハンさんもメモを取っていたけど、エリックさん信用されてないのかね?昨日の事も有るし、作るの失敗してクビにならなきゃ良いけど・・・・・


 で、昼過ぎに向かいの他の二家、クランゼル家の右隣のダグラス家と左隣のランフォード家のメイドがやって来てだな・・・・・まぁ、何だ・・・この世界じゃ甘味に飢えてんのか?砂糖が高いのは解るけど、菓子位自分家で試しゃ良いだろ。貴族なんだから、それ位の金は有るんじゃないの?

 何かもう面倒なんで、作り方はクライゼル家に教えたからそっちで聞いてくれと言って帰って貰った。平民に教えて貰うより貴族家同士の方が良いだろ。エリックさん、調子に乗ってクビになるなよ。


 夕方になり子供達が帰って来たんだけど、豪い興奮してて何事とかと思ったら、例のお隣の騎士様にクッキーの礼を言いたいと門の所で声を掛けられたので連れて来たのだそうだが、出迎えた玄関でお互いの顔を見た瞬間、ピシッ!と音がしたかのように周囲の空気が固まった。


「ハァ・・・何でお前が隣なんだよ・・・・・」


「それはこちらの台詞だ!私だって隣に越して来たのが貴様だなどと微塵も思って無かったわ!!」


 固まったまま十秒程経ち、再起動して溜息を吐き額に手を当てて項垂れる俺と、すかさず突っ込みを入れる騎士。


 ラインハルト・ヴェルテール。それが転移初日に喧嘩を売って俺に伸された騎士のフルネームだった。マジかよ・・・頭痛てぇ・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。