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 暗くなった商店街を抜けて住宅地に入り、暫く行った所で立ち止まった。バート商会から歩いて約二十分と割かし近くて助かる。


「着いたぞ~。今日からここが俺達の家だ。部屋の数は十分有るから好きな部屋を選ぶと良いぞ」


 門の鍵を開けながら後ろに居る皆に話し掛けたが、返事が無い。


「如何した?聞いてんのか?・・・って、なに間抜け面で固まってんだよお前等・・・・・」


 振り返ると皆が一様に目と口を大きく開いて固まっていた。


「まぁ驚くのも無理は無いけど、正真正銘俺達の家なんだから、気にしないで入れよ」


 庭だけで宿屋と同じ位の敷地だし、気後れするのもしょうがないけど慣れてもらわないとな。


 ビクビクと俺の後について庭を歩く皆に、お化け屋敷じゃねぇぞと笑顔を見せつつ屋敷の鍵を開けて中に入り、入り口にある照明の魔導具を起動した。


「わああぁぁぁ・・・・・凄い・・・夢みたい・・・・・」


「お前等の部屋は二階だ。早いもん勝ちだけど喧嘩はするなよ。ほれ!荷物を持って行って来い!」


 感嘆の息を漏らす皆を横目にバッグから荷物を出して二階へと向かわせた。俺は風呂の用意をしてから調理場に向かい、お茶を用意して隣に有るダイニングへ。お茶菓子にカロリーバーを齧りながらのんびりとしていた。


 二階に有る居室は一番大きな部屋が二十畳位で、他は十畳位だ。一階は調理場、風呂場、トイレ、ダイニング、リビング、応接室、執務室となっている。俺は執務室に住むつもりだ。そこも十畳位有るし、大き過ぎる位だ。


「ジン兄さん、一番デカイ部屋はジン兄さんが使うんだよな?」


「いや、俺は一階の執務室、ホールを挟んだ反対側の一番奥の部屋だ。使いたかったらお前が使って良いぞ」


「えっ・・・・・いや、流石に大き過ぎて気後れするって言うか、如何したら良いか解らないから止めとくよ・・・・・」


「ははは・・・まぁ、好きにしな。それで、俺は暫く狩りに行かないから、欲しい物とか必要な物が有ったら何でも言えよ、買っとくから。それと、この辺は貴族の別宅ばかりだから絡まれたら直ぐに言うんだぞ・・・・・そう言えば、お前等ヴェルテールって騎士知ってるか?東側の隣なんだけど」


「えっ!ヴェルテール様が隣なの?!凄い有名な騎士様だよ!聖都周辺の見回りの指揮も取ってるんだぜ!聖都の守護騎士様って言ったら子供達の憧れだよ!」


「ヴェルテール様がお隣かぁ・・・信じらんないなぁ・・・・・」


「も、もしかしたらお話しする機会あるかも!」


「へぇ~・・・・・それなら引越しの挨拶しといた方が良いかな。お前等、そろそろ風呂入って寝ろ。明日から歩いて通わなきゃならないんだからな」


「「「「「風呂?」」」」」


 そう言や風呂の習慣は高位貴族以外殆んど無かったっけ。全員に風呂の入り方を教えて、女の子達から入浴させて就寝した。


 因みに水は風の魔導具で井戸から汲んでいて、沸かすのは火の魔導具らしい。水魔法を使わないのは、魔力で生み出した物は魔力が切れると消えてしまうからだそうだ。


 翌早朝。日の出と共に起きて朝食を作った。あいつ等料理が出来ると思えないし。俺が狩りに出ている時の為に簡単な物でも教えておくかな。

 ベーコンエッグと野菜スープを作ってパンを出して準備が整った所でぞろぞろと集まり始めた。一番遅かったのはヒースだ。部屋が広くて寝つけなかったらしい。まぁ、直ぐに慣れるだろ。


 朝食を摂ってライエルとニックに門と家の鍵を渡し、皆を送り出して調理場へ。夕食の仕込みと、近所に配る簡単なお菓子でも作るかな。冷蔵庫にオーブンもあるし。

 お菓子なんて作った事ないしオーブンも使った事無いけど、試行錯誤で何とかなるだろ。


 先ずは夕食の準備だ。肉を適当に切って包丁の背で叩いて塩と胡椒を振って冷蔵庫に寝かせる。後はサラダも作って冷蔵庫に入れておき、朝食の残りのスープに具を足して火に掛けておいた。コンロが四つも有るし、大きめの鍋を買い足して作り置きしておくのも良いかな。バッグに仕舞っときゃ良いし。


 次はクッキーを作ってみようと思う。溶かしたバターに砂糖と黄身を混ぜ、小麦粉を篩い・・・は無いから笊で振るって混ぜて練る。時々生地を味見しながら材料を足していき、良さげになった所でドライフルーツを刻んだ物を足して更に練って平らに伸ばして包丁で切る。鉄板に並べて卵白を表面に塗ってオーブンへ。表面の焼き色が狐色になった所で取り出し、荒熱を取ってからいざ試食!


 一回目は中が生焼けでした・・・・・火力が強かったらしい。


 ま、まぁ、味は悪くなかったので火力を落として再挑戦。二回目は上手く出来たので、生地が無くなるまで次々と焼いて行った。


 で、持って行く入れ物がねぇじゃん・・・・・


 気付けば時刻は昼過ぎだった。大量に作り過ぎたせいだろう。取り合えず火元の確認をして、バッグを背負って家を出て道具屋へ。

 送る相手は貴族だし、下手な入れ物に入れて渡す訳にもいかないと、アクセサリーを入れる箱を購入。ちょっと高いが食べ終わった後も使って貰えるだろう。

 序に調理器具も見て回り、鍋やフライパンを買い足し、ボールやら擂鉢なんかも買っていく。あれ?スライサーとか泡だて器が売って無い・・・・・


 と言う訳で、ライアンさんの所へ言って靴のメンテと共にスライサー付き下ろし金と泡だて器にピーラーも頼んでおいた。


「ふ~ん成る程、面白いね。これってうちと連名で商品登録しても良いかい?うちには包丁研ぎを頼みに来る奥様方が結構居るから売れると思うんだよね」


「勿論かまいませんよ。思ってた以上に靴の出来が良くて助かりましたし、何なら連名じゃなくても良い位ですよ」


 十日後にまた来る事を告げて家に帰った。が、既に夕方でこれから挨拶に行くのはちょっと失礼かもと、準備だけして明日にする事にした。


 調理場の片付けが終る頃には全員帰ってきたので夕食に。ステーキとサラダにスープとパンだ。ステーキにはウスターソースっぽい物が売っていたので焼いて残った肉汁と混ぜた物を掛けてみたが結構旨かった。こいつ等ナイフを使った事が無くて悪戦苦闘してたよ。


 食後のお茶請けに作ったクッキーを出してみたが、こちらも好評だったので、また作ってバートさんとかにも配ろうかな。結構楽しかったし、趣味にしてもいいかも。


「ジン兄さんは凄げぇよな。強いだけじゃなくて料理にお菓子まで・・・・・俺も料理作らせて貰えるように頑張ろう」


 俺の場合は日本での知識が有るからなんだけどな。こいつ等は、それこそ零からだから大変だ。教えるのは簡単だけど、先ずは努力する事、試行錯誤が大事だから暫くは見守ってやろう。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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