優しさを
大学の正門
雨が降り頻る中、宏斗は佇んでいた。
「宏斗君?こんなに濡れちゃ風邪ひくよ。」
「…なあリリサ、俺はいつから判断を誤ったんだろうな。俺は、俺のことで誰かを巻き込みたくなかった。だから君をふった。なのに、俺は…俺は…くそっ。」
「私は宏斗君に謝らないといけない。告白したあの日の夜、私は自分を責めた。あなたが本当は嫌だったんじゃないかって。何かが違えば、結果は違ったのかなって。でも、宏斗君が抱えていることは、私が思っている以上に大きいんだなって気づいたんだ。それで、気づいた時には宏斗君は私が知らない所に行っちゃってて、そのことを謝ることができなかった。だから、今謝るべきじゃないけど、ごめんね。」
「そんなこともうどうでもいい。それに、早く気づくべきは自分だったんだ。オルフェのことも、俺の判断が悪いから、気づくのが遅いから…。また失って気づく、やるせないこの想いをどう吐き捨てればいい。」
「そのために私がいるよ。宏斗君は寂しがりなんだから。だから、私に…慰めさせて。」
リリサは後ろから抱きつく。
力はなく優しく包み込むように。
ハルクヴァール魔法大学
「今回の件はパムールが殺害された時と似ているそうだな。」
「ああ。だが前回と違って、ずいぶんと慎重なやり方だったな。」
「グラード、彼女の詳細についてどうなっている?」
「今回殺害されたのは、オルフェ・フォン・ダラス。サーハルドラスディ魔法大学の近くに生家があったのですが、両親も殺害されていました。」
「宏斗が前に遭遇した魔人の可能性がありそうだな。それより、奴らの目的は何なんだ。」
「ハヴァールの目を完全な状態にして奪いたいんだろう。そのために、あいつの精神を攻撃して強制的に覚醒させようとしていると思うが。」
「なんだガエン。珍しく知的な考察をするじゃないか。」
「はあ、学長まで俺をそういう風に見てんのか。」
「問題児だったお前が、今じゃ立派に学長やってるんだから、そうなるのも必然か。」
「そんなこと言ってないで、今は宏斗について考えるべきだ。」
「シューイチ。いたのか。宏斗の様子はどうだった。」
「バエルから聞いたんじゃなかったのか?」
「彼女は今、宏斗につきっきりだ。とても聞ける状態じゃない。」
「まあ、バエル同様宏斗に直接聞ける状況ではない。だが、あの状態は奴らの望み通りだろう。」
「あれ以上精神を侵されては、宏斗の生死にかかわることになるだろうな。」
「だから考える必要がある。」
グラード 本名バぜル・ゼ・グラード。ハルクヴァール魔法大学副学長。




