口づけ
数日後
ルーフェス祭2日目
「向こうとはかなり違うな。」
「ふーん、そうなんだ。どこが違うの?」
「向こうじゃ静かな様相だったからな。逆にこっちはクリスマスみたいだな。」
「まあ、それも兼ねてるからね。次はあっちに行こう。」
和やかな雰囲気でいる2人を、ラスノヴァは遠くから見ている。
そして、リリサも2人の様子を監察していた。
(私の時は、無理に盛り上げすぎちゃったのかな?あの子といるほうが楽しそうだし…。ダメダメ、ちゃんと任務をこなさなきゃ。)
気を取り直して、リリサは2人の監察を続ける。
「これはどうかな?」
「なんだこれ?」
「バルチェっていう水生生物だよ。小さいときは水の中に生息しているんだけど、成長すると陸に上がるんだ。」
「まるで虫だな。」
「変態はしないから。虫とは思わないでいいんじゃないかな。」
「じゃあ蛙か。」
「なんで私がゲテモノ食べさせようとしてるみたいに言うの?!」
「ははっ、悪い。ちょっとからかってみたくて。」
「もう!」
その様子を見ていたリリサは、涙目になる。
(悔しい。なんで…なんで…。)
そう思っている間にも、2人の距離は縮まっていく。
すると、どこからともなく音楽が鳴る。
「何の音楽だ?」
「そろそろ花火が始まるんだよ。」
「花火?それって夏にやるんじゃないのか?」
「こっちでは夏にもやるし、冬にもやるんだよ。」
「ふーん、そうなのか。」
「宏斗君、ついてきて。いい所教えてあげる。」
宏斗はその言葉にリリサを思い出すが、黙ってオルフェについて行った。
リリサも遅れて2人を尾行する。
「ここ、どうかな?」
「ここからなら、よく見えそうだな。」
「そうだね。それに…。」
宏斗は言いづまるオルフェを不思議に思う。
「どうした?」
「ここなら、2人きりだね。」
宏斗の鼓動が早まる。
リリサのことも忘れて、オルフェの高揚した顔に自らも火照っていく。
手が震え、2人の心臓の音が互いに響き渡っているかのような感覚。
オルフェはゆっくりと口を開く。
「あのね、宏斗君。私、今自分がどういう気持ちかわからないんだ。でも…。」
その瞬間、花火の音が響き渡る。
「私は宏斗君が好き。」
赤らんだ顔に、潤んだ瞳。
その様子を見て、宏斗は考える。
(だめだ。決めたんだ、人を好きにならないって。…けど、今の俺は確実に強くなってる実感がある。もし、危険なことが起きても、俺は彼女を守れるはずだ。そんな自信がついてきてる。そう思える。リリサにはああ言ったけど、俺は…俺はっ。)
「ありがとうオルフェ。…けど、少し考えさせてほしい。」
オルフェの目から大きな水滴が滴る。
「…いいよ。でも、これだけは…。」
そう言って、宏斗の頬を優しく包み込むように手を当てる。
そして、やさしく口づけをする。
突然のことに宏斗は体が強張る。
オルフェの唾液が混ざり合うような感覚。
先ほどまで一緒に食べていたものの味が直に伝わる。
音が遅れて聞こえるように感じられるほど、その場の空気はゆったりと流れていた。
数秒経って、離れた唇は互いの唾液が繋がっていた。
オルフェは少し距離を置き、笑いかける。
「今日はありがとう。また、明日ね。」
そう言って、走り去っていった。
深夜、リリサのもとに2日後に宏斗を連れて帰るよう伝令が来る。




