意識
「宏斗君、大丈夫?」
「ああ、先生の魔法が雑でまだ鼻がジンジンするけど。」
「ルルちゃんに教えてもらったんだけど、宏斗君は死ぬことについてどう思う?」
「別に、どうも思わねえな。まあ、どうせ死ぬなら楽しんでから死にたいとは思うけど。」
「違うよ、死ぬってことに恐怖とかないの?」
「ない。」
「私は宏斗君が心配だよ。さっきのことも、あれだけされて何も言い返さないなんて…。」
オルフェの目には涙が浮かんでいる。
その様子を見て、宏斗は母のことを思い出した。
イギを失って、女手一つで宏斗を育てた母は、毎日イギの写真の前で手を合わせ涙していた。
その姿が、今のオルフェと重なって見えた。
「ごめん。俺はこういう人間だから、最終的には自死する必要があると思っていた。だが、母がいつも親父の写真の前で泣いているのを思い出した。こんな俺でも泣いてくれる人間がいるなんて知らなかった。悪かったオルフェ。考えを改めるよ。」
「それならいいんだけど…。」
翌日、校庭
「昨日はいきなり殴って悪かったな。」
「いや、いい勉強になった。」
「こちらとしても、お前の素養が見れた。まあ、端的に言えば、お前には判断能力がないようだ。攻撃の間から、次に来る攻撃の予測ができていない。」
「どうすればそれができるようになるんだ?」
「さあな、俺も感覚でやってる。ただ、経験の数も必要になる。お前は今まで、どんな経験をした。そこで何を得た。」
「大体死にかけたことぐらいしか思い出せないな。死に物狂いで戦ってたし。」
「そこに問題がある。客観的にとらえず、ひたすら応戦しても勝ち目はない。まずは戦局を見極め、それに合わせて対応できるようにならなければならない。」
「俺は雷魔法が使えるんだが、それでもその客観性みたいなのは必要なのか?」
「魔法でどうにかなるわけではない。お前に必要なのは、魔法を使うかの判断ではなく、おのれの肉体でどれだけ耐えられるかを考えることだ。」
「じゃあ、体を鍛えるんじゃだめなのか?」
「そう単純な話じゃないんだ。体を鍛えるよりも、経験を増やし、からだに刻み込むことが先決だ。死にかけた時に、自分は何を考えた。死ぬかもしれない。そんなことばかり考えていたんじゃないのか?」
「教えてくれ。俺はどうしていけばいい。」




