生き死に
校庭
「宏斗といったな。俺は先生と違うんでな、厳しくするぞ。」
「大丈夫だ。何度か経験してる。」
「そうか。なら、本気でも構わないな。」
ロームの目つきが変わる。
「!?」
驚く間もなく、ロームは間合いを詰める。
ロームの手が宏斗の首に届きかける瞬間、宏斗は勢いよくその手をはじく。
しかし、ロームはすぐに回し蹴りで宏斗の体勢を崩す。
「うわっ!」
思わず腰をついたところをかまわず、ロームは宏斗の顔面を殴った。
「ごほっ…うぅ…。」
宏斗の顔は血まみれになり、息も絶え絶えになる。
校舎の2階からその様子を見ていたオルフェは、顔を手で覆う。
「やっぱりね。」
隣に立つルルはわかっていたかのような反応をする。
「ルルちゃんはああいうの見て大丈夫なの?」
「うん。どうせロームが勝つと思ってたし。」
「勝つって、あれは勝負なの?」
「生きるか死ぬかっていうのはいつだって勝負だよ。彼はその判断を怠った。それでお終い。」
「で、でも、これは訓練みたいなものじゃ…。」
「オルフェ、彼がどういう人間か知ってる?」
「どういう人間?…どうって言われても…。」
「じゃあ簡単に言うけど、ハヴァールの血を引くものがもつあの赤い目は、この世に1つしかない。これを聞いて、彼をどう見る?」
「…守らなければいけない存在?」
「そう。だけど、いつも誰かが守っていられるわけじゃない。だから、ああやって生きるために力をつけなければならないの。」
「……。」
「世界的に見れば、私たちの敵は悪魔たち。殺すことに容赦はない。生きるか死ぬかで判断なんかできないの。それをロームは教えてる。」
セーナの回復魔法で宏斗はようやく落ち着いた。
「はあ、はあ、はあ・・・、ここまでするのか。」
「相手がいつも人間だとは限らないぞ。話し合いで解決するなら、悪魔なんて最初から存在していない。」
「どうやら僕が間違っていたみたいだね。戦うべき相手が何かを教えておくべきだったかな。」
「その必要はないですよ先生。敵が何であれ、生死を天秤にかけた時点で負ける。生き抜くためには相手を必ず殺す気でいなければならない。彼にはそれが足りていなかった。いや、考えられるほどの脳がなかったというべきか。」
「それは言いすぎだとは思うけど、確かに宏斗君にはそういうのが足りてないよね。」
「もしかして先生、ここぞとばかりにさっきの仕返ししてます?」
「…いぃやぁ。」




