壁
「もしかして先生、旦那さんのことでばっかり考えてて話聞いてなかったの?」
「そそそ、そんなことはないよ~。」
「「わかりやす。」」
「だってー、年に1回帰ってくるかわからないんだよ。そりゃうれしいに決まってんじゃん。仕事どころじゃないよ。まずまず僕がやりたいって言ってないし…。」
その後もセーナはぶつぶつと文句を垂れた。
「はぁ、先生。そんなこと言ってる暇ないんじゃないの?」
「…わかったよ。それじゃあ、宏斗君には構築魔法の才能がないということで、オルフェちゃん土系の魔法で壁を作ってみて。」
「俺、今ディスられた?」
「作って何になるの?」
「それを宏斗君が殴るの。」
「突発的に思いついたから、あんまり理由つけられないらしい。」
「ちっ、ばれたか。」
「先生そういうところあるからね。とりあえずやってみようか。」
オルフェは2mほどの高さの壁を作る。
「じゃあ、殴ってみて。」
宏斗は魔法を使わず、素手で壁を殴った。
しかし、鈍い音が響き渡る。
「痛って!なんだ?」
「あ、ごめん。間違えて密度高くしちゃった。作り直すよ。」
そう言ってオルフェは壁を作り直した。
「たく、勘弁してくれ。」
宏斗は再び壁を殴る。
今度は貫くことができたが、勢いのままオルフェの顔面に拳が迫った。
オルフェはとっさに避ける。
「危なっ!何してるの宏斗君!?」
「あ、悪い。力を入れすぎた。」
「さっきの仕返しでしょ。」
「わざとじゃないって。」
「先生はどう思う?!」
2人が見ると、セーナは思い悩んだような顔をしていた。
「どうしたの先生?」
「思ってた通りだ。宏斗君は直感的に動いている節がある。」
「?」
「最初に壁を殴ったとき、ただの土だと思って殴ったと思うんだけど、それは感覚的に身についているものでしょ。」
「まあそうですけど。」
「つまり、宏斗君は何も考えずに行動している。」
「またディスられた気がするんだけど。何も考えてないわけじゃないですよ。」
「先生、もしかして話しまとめるの下手なんですか?」
「ま、まだ話の途中でしょうが!」
「ただ、感覚と直感だけで動いているから、力の加減ができていないと。」
「祖、その通り。宏斗君は僕の考えていることがよくわかっているじゃないか。」
「先生はどうやって、こんな長生きしたんだろ。」
「年を重ねても、幼稚なままなの恥ずかしくね。」
「うっ、やめて、心の傷をえぐらないで。」




