邂逅
ピポーフォールの強烈な力に、手も足も出ずにいた宏斗は、攻撃の合間を縫って反撃する。
しかし、その攻撃は全く歯が立たず、彼は追い込まれていく。
そのころ、学長室。
「学長!北のリファール台地に、マスタークラスのモンスターの出現を確認!」
勢いよく学長室の扉を開きながら、大きな声でダガールにそう告げる。
「そうか。」
しかし、帰ってきた言葉に驚いた。
「なぜです、今あそこで生徒たちが飛行魔法の実習をしているんですよ!?」
「あそこにはイギの息子がいる。それだけで十分だろうそれに、私が魔力の揺らぎに気付かぬとでも思ったのか?」
そういわれると、その男はたじろいだ。
「まったく、結界の内側まで入ってくるとは。バスノーチスにもっと分厚い結界を張ってもらうとしよう。」
言いながら、ダガールは男のほうに手を向けた。
『ブライシーズ』
男は一瞬にして凍り付いた。
「お前たちのやり方はいつまでたっても変わらんな。」
凍った男を押し倒すと割れ、先ほどまで人間の形をしていたのが、悪魔に戻った。
防御魔法でも防ぎきれず、宏斗は追い詰められていく。
最後に一矢報いようと、彼は渾身の一撃を放つ。
左手の人差し指に魔力を集中させ、一気に開放する。
『ヴェルフィモーゲン』
高出力の魔法は、無力にも、ピポーフォールのかたい鱗にはじかれてしまった。
そして、お返しと言わんばかりに、さらに高出力の魔法を放ち、宏斗に直撃した。
大木が押し倒されるほどの魔法を受けた彼は、立ち上がれなくなる。
万事休すかと思われたその時、ピポーフォールのを押しつぶすように何かが降ってきた。
そのタイミングで、教師たちが追いつく。
ダガールもその場にいた。
立ち上がる血しぶきと、衝撃によって舞い上がった煙が晴れると、落ちてきたものの正体が分かった。
「お前は…。」
驚くダガールに語り掛けるように、彼は現れた。
「よお、久しぶりだな。」
「クライドエル!」
ピポーフォールの死体から降りてきたクライドエルは、宏斗を見る。
「あれがイギの息子か。随分と華奢だな。」
「なぜ今になって出てきた。」
「そうにらむなよ。別に殺しに来たわけじゃねえよ。」
身構えるダガールに、ひょうひょうと返すクライドエル。
宏斗は、半目でその様子を見ていたが、やがて意識が飛んだ。
副学長の回復魔法のおかげで、意識を取り戻した宏斗は、学長室にいた。
周りを見渡すと、ダガールや副学長2人、リリサもおり、そして、目の前にはクライドエルが座っていた。
「よお、目が覚めたか。」
「あんた、誰だ?」
「開口一番それかよ。俺はクライドエル、月の天人の子だ。」
「てんにん…?」
「どうせ後から教えられるだろ。」
ダガールのほうを見ながら、クライドエルはそう言った。
「お前には、世界のことを知ってもらう必要がある。お前の父親が教えられなかったことを。」
「親父が…!」
宏斗は食い入るように聞く。
「20年前、リベリアンという男が転移魔法を使い、世界を融合させた。お前の父イギ・ハヴァールとお前の母はその結果、お前を生んだ。今回、ピポーフォールがお前の前に現れたのは、お前を瀕死に追い込んだうえで、その目を奪うためだ。」
「俺の目を…、どういうことだ?」
「あ?気づいてねえのか、そんな特徴的な赤い目を持つ人間はハヴァールしかいない。リベリアンは、お前の目を奪うことで、その力を利用しようとしている。赤い目を持つ者の特徴として、時空間魔法がある、奴はそれを欲している。お前にはまだ使えんだろうが、イギはそれを完璧に使いこなしていた。あいつは、俺を殺すことのできる人間3人の1人だった。しかし、あいつはもういない、つまり、お前がとられれば終わりだ。俺もまだ見たことはないが、奴は金色の目を持っている一族の唯一の生き残りだ。青、赤、金の三色の目がそろった時、どうなるかは俺にも見当がつかん。しかし、奴はすでに、青い目を持っている。そこにいる、リリサとかいう女の父親から奪ったものだ。それもこれも、イギの調査にそいつを向かわせたダガール、お前の失態だがな。」
ダガールは、クライドエルを鋭い眼光でにらんだ。
「ふん。てなわけで、お前は人間たちにとって、重要な存在となった。だからこいつがお前の護衛をしたいとよ。」
そういうと、部屋の奥からゆっくりと誰かが歩いてきた。
「シューイチ?!」
ダガールが反応した。
「ダガールさん、久しぶりだな」
「感動の再開は置いておいて、要点だけ説明しろ。」
「俺の名は、御阪・シューイチ・ミオノワール。お前とは、一応血のつながりがある。」
バスノーチス 結界魔法を専門とする、カフストエイダル魔法大学の学長。ハルクヴァール魔法大学を含め、様々な場所に強力な結界魔法を張っている。
御阪・シューイチ・ミオノワール 宗一の長男。刀を使うが、手刀による攻撃も行える。




