恐ろしい娘
セーナは不敵な笑みを浮かべると、ナイフを宏斗の拳に滑らせる。
宏斗はとっさに体を後退させる。
しかし、それよりも早くセーナは宏斗の間合いに入り込む。
宏斗はこぶしをふるう。
セーナはそれを片手で払いのけ、宏斗喉元に一撃を入れる。
「ぐぇ!」
もだえる暇も与えず、セーナは足をかけ宏斗をこかす。
「ぐっ!」
宏斗は受け身も取れず、後頭部を地面に打ち付ける。
「くぅ~。いってー!」
宏斗は後頭部を抑えながら上体を起こす。
「ごめんごめん。さっきのことでむきになちゃって、意地悪しちゃった。」
セーナは笑いながら、手を差し出す。
宏斗はその手をつかみ立ち上がる。
「でも、遅すぎるよ。じゃ、休憩しようか!」
宏斗は寒気が立った。
「どうだ、イギのガキは?」
「僕が思っていたより、ずいぶん成長が早いみたい。僕もすぐに抜かされちゃうかな。」
「お前の旦那がいれば、もっと早くに終わっていたことだがな。」
「彼は忙しいんです。」
「どうだかな、ただの人見知りに見える。」
「ふあぁ~がくちょー。」
大きなあくびをしながらワダルグが来た。
「眠そうにしやがって。なんだ。」
「パムールの死についての報告書が来た。」
ワダルグはガエンに封筒を渡す。
「いまさら、もう半年もたつ頃だぞ。」
「知りませんよ。文句ならダガールさんに言ってくれ。とはいっても、向こうは向こうでバエルがいなくなったから、調査委員の数が足らないらしいが。」
「まあいい。」
ガエンは報告書に目をやる。
「…やはり、魔人か。」
「これでどうにか魔人との対立は避けれたな。」
「だが、パムールの名誉は晴れん。」
「僕たちのほうでどうにかできないかな?」
「監察局の奴らは当てにならんからな。俺たちだけではどうにもなるまい。それこそ、お前の旦那がいればな。」
そこに休憩を終えた宏斗がやってきた。
「あのー、これから何をすれば。」
ガエンたちは外を見る。
すでに日が落ちかけていた。
「セーナ、食堂に案内してやれ。」
「はーい。さ、行こう。」
2人は食堂へ行った。
「学長、どうする。」
「一旦はセーナに任せる。そのあとは学長次第だが、俺はこっちが気になる。」
「どの魔人が殺したか。」
「イギのガキによれば、魔人にしては角が大きかったそうだ。」
「同種食いか。」
「ああ、それも強い悪魔を食ってる。」
「同種食いで短い角を持ってるやつは知ってるな。」
「そいつは推定1万年生きている奴だな。」
「確か名前は…。」
「グレイ。今はおそらく、リベリアンの側近だろう。」




