心揺さぶる
女性経験が浅い宏斗は、リリサにリードされるだけで何もできない自分にもどかしさを抱く。
そんな彼を気にかけながら、何をしようかとリリサも思い悩んでいた。
「ねえ、大丈夫?顔色悪いけど。」
「大丈夫だ。少し考え事をしててな。」
「先にお昼済ませようか。」
「ああ。」
屋台が立ち並ぶ道。
2人はその中を人込みをかき分けながら歩く。
途中、離れかけるもリリサは宏斗の手首をつかむ。
宏斗は思わず振りほどいてしまう。
「わ、悪い。」
「私こそ、いきなりごめんなさい。」
言い知れぬ雰囲気が2人の間に流れた。
「どうこれ?おいしい?」
「ああ、こうゆうのあんまり食べたことなかったが、案外うまいもんだな。」
「ぺスターラの肉は意外と柔らかいからね。レタスで巻いて食べると、脂っこく無くて食べやすいよ。」
2人はちょうどいい屋台で昼食を済ませた。
「ねえ、今日の夜花火があるの知ってる?」
「花火?」
「そう。ルーフェス祭の最後は花火で締めるんだ。」
「花火か。小さいころに母親と見に行ったくらいで、それ以降は見てないな。」
「昨日、誰もいないところを見つけたから、そこで一緒に見ない?」
「…わかった。」
夕食も食べ終わり、リリサの言っていた場所に着いた。
そこは、祭りの会場とは反対の場所だった。
「本当にここから見えるのか?」
「花火は高く打ちあがるからね。こっちからでも十分見えると思うよ。」
星明りがきらめく夜空、一発目の花火が打ちあがる。
「きれいだねー。」
「…ああ。」
「ねえ宏斗君。」
「なんだ?」
「宏斗君は好きな人いるの?」
「なんだよいきなり。…まあ、いるよ。」
「へえー、どんな人?」
「お前はどうなんだよ。」
「さあー、どうでしょう。」
宏斗は、花火の音による振動と自分の心臓の高鳴りの区別がつかなくなっていた。
「あのね宏斗君、私ね…。」
宏斗にはリリサの声が届かないほど、この状況に緊張している。
「ねえ、ねえ、ねえ宏斗君!」
体を揺さぶられて、ようやく我に返る。
「あ、ああ、なんだ?」
「もう、ちゃんと聞いててよね。…だからその、私は、私は…宏斗君のことが好き…なの。」
最後の花火が大きく鳴り響く。
宏斗の胸の高鳴りは最高潮に達す。
宏斗も口を開き、返事を返そうとする。
しかし、そこで宏斗はあることを思い出した。
べスターラ 家畜用モンスター。見た目は牛に酷似しているが、筋肉質で動きが鈍い。一般的な家畜として飼われており、頭数としては2番目に多い。




